インタビュー

君島大空による『袖の汀』全曲解説。歌のあり様の変化を自ら語る

君島大空による『袖の汀』全曲解説。歌のあり様の変化を自ら語る

インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:松永つぐみ 編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)
2021/05/17

「海がモノラルで鳴っているようなイメージがあった」――君島大空は、3rd EP『袖の汀』の全貌についてそう語る。

穏やかなメロディーが波のように揺れる“光暈(halo)”にはじまり、長らく音源化が待たれていた“向こう髪”、2020年に放送された番組『no art, no life』(NHK Eテレ)のテーマ音楽“星の降るひと”、そして、“きさらぎ”“白い花”という新鮮な音楽的表情を見せる新曲を挟み、最後を飾る“銃口”の、沈黙とノイズが、哀しみと明日が、濃密に混ざり合う海へ。漂う詩は海から海へと、はじまりからまた新たなはじまりへと、流れつく。

これまでの作品がそうであったように、君島は本作『袖の汀』においても、1枚の作品を通して流れる物語を描きながら、その瞬間の自分自身の命のかたちを、その命の動きを、音楽として表現してみせる。

前作『縫層』以降の心境の変化と、その象徴たる1曲“光暈(halo)”について語ってもらったインタビューに続き、本稿では君島に『袖の汀』全曲解説をしてもらった(『袖の汀』総論インタビューはこちらより)。各楽曲の音楽的アイデアや詩の世界を掘り進めながら、この2021年という時代に産み落とされた、『袖の汀』という親密で広大な声の深淵に迫る。

君島大空(きみしま おおぞら)<br>1995年生まれ日本の音楽家。ギタリスト。2014年から活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年3月13日、1st EP『午後の反射光』を発表。2019年7月5日、1stシングル『散瞳/花曇』を発表。2019年7月27日『FUJI ROCK FESTIVAL '19 ROOKIE A GO-GO』に合奏形態で出演。11月には合奏形態で初のツアーを敢行。2020年1月、Eテレ NHKドキュメンタリー『no art, no life』の主題曲に起用。同年7月24日、2ndシングル『火傷に雨』を発表。2021年4月21日、3rd EP『袖の汀』を発表。ギタリストとして吉澤嘉代子、高井息吹、鬼束ちひろ、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、楽曲提供など様々な分野で活動中。
君島大空(きみしま おおぞら)
1995年生まれ日本の音楽家。ギタリスト。2014年から活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年3月13日、1st EP『午後の反射光』を発表。2019年7月5日、1stシングル『散瞳/花曇』を発表。2019年7月27日『FUJI ROCK FESTIVAL '19 ROOKIE A GO-GO』に合奏形態で出演。11月には合奏形態で初のツアーを敢行。2020年1月、Eテレ NHKドキュメンタリー『no art, no life』の主題曲に起用。同年7月24日、2ndシングル『火傷に雨』を発表。2021年4月21日、3rd EP『袖の汀』を発表。ギタリストとして吉澤嘉代子、高井息吹、鬼束ちひろ、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、楽曲提供など様々な分野で活動中。

楽曲の細部に宿るいくつもの声、入口と出口を用意した作品構造。諸作に共通する作家性

―これまでインタビューをしてきて思うことなんですけど、君島さんには自分のなかで会話するような感覚が強くあるんじゃないかって。それは作品自体に如実に表れていますよね。特に今作を聴いていると、君島さんのなかにある「声の多さ」を感じます。

君島:実際に曲をつくりながら独り言をずっと言っていますね。しかも最近、それが増えちゃって。「自分」と「もうひとりの自分」だけでもなくて、すごく雑な自分とか、すごく厳しい自分とか……最低でも、3人くらいはいる気がする。

なにかの音源をつくっているときに、意識的にそうしようと思ったことはあったんです。すごく評価が甘い自分と、すごく厳しい自分がいて、そいつらと自分が混ざって話し合って、「ああ、もうちょっと頑張ります……」みたいな会話をしている(笑)。そういうことをずっとやっていますね。

―君島さんの音楽自体、独白のような部分がありつつ、その独白の細部にたくさんの声があり、コミュニケーションがあるような感じがします。

君島:ああ、むしろ自分じゃない自分がつくっているような感じすらします。音楽をつくっているとき、思考や景色が時間軸もバラバラで頭のなかにあるというか。意識の外で起きているけど自分のなかで起きていることでもある……そういうものが自分の音楽としてかたちになっていく感覚があるんですよね。

君島大空

―『午後の反射光』『縫層』、そして今回の『袖の汀』と、EPというフォーマットで作品を発表してきていますが、どの作品にも一貫して入口と出口が設けられているような感覚がありますよね。サイズ感も含めて、このかたちは自分のなかでしっくりきていますか?

君島:そうですね。友達に今回のEPを聴いてもらったときに、「最後に同じ部屋に戻ってきたね」と言ってもらって、本当にそうだなと思いました。

最後の“銃口”で、また1曲目の“光暈(halo)”に戻っていく感じというか。最後に出口をつくる感じ、最後までくるとまた最初に戻っていく感じは、意識的でもあるし、無意識的な部分でもあると思います。

あと、多くの場合、EPっていわゆる作品集、というものが多い印象があるんですけど、ぼくは、このサイズのほうがフルアルバムよりもストーリーをつけやすい気がしていて。聴いた人の体感時間を長くしたいんです。だからこそ、収録時間上の「短さ」があるEPはちょうどいいなと思います。

君島大空『袖の汀』を聴く(Apple Musicはこちら

―特定の音楽を聴いている間、自分のなかだけに流れる時間ってありますよね。君島さんは音楽がもたらす「長さ」を感じさせたいからこそ、実際の収録時間の短いEPを選ぶ。

君島:「いまの曲、じつは短かったんだ」と思えたとき、ぼくはすごく幸せに感じるんですよね。1曲を聴いて「すごく長いものを聴いた」と思ったら、すごく短い曲だったり、逆に「この曲すぐ終わったな」と思ったら、本当は10分くらいある曲だったりすることもある。そういうマジックが起こればいいなと思っていますね。

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リリース情報

君島大空『袖の汀』
君島大空
『袖の汀』(CD)

2021年4月21日(水)発売
価格:2,200円(税込)
APLS2015

1. 光暈(halo)
2. 向こう髪
3. 星の降るひと
4. きさらぎ
5. 白い花
6. 銃口

プロフィール

XXX
君島大空(きみしま おおぞら)

1995年生まれ日本の音楽家。ギタリスト。2014年から活動を始める。同年からSoundCloudに自身で作詞 / 作曲 / 編曲 / 演奏 / 歌唱をし多重録音で制作した音源の公開を始める。2019年3月13日、1st EP『午後の反射光』を発表。2019年7月5日、1stシングル『散瞳/花曇』を発表。2019年7月27日『FUJI ROCK FESTIVAL '19 ROOKIE A GO-GO』に合奏形態で出演。11月には合奏形態で初のツアーを敢行。2020年1月、Eテレ NHKドキュメンタリー『no art, no life』の主題曲に起用。同年7月24日、2ndシングル『火傷に雨』を発表。2021年4月21日、3rd EP『袖の汀』を発表。ギタリストとして吉澤嘉代子、高井息吹、鬼束ちひろ、adieu(上白石萌歌)などのアーティストのライブや録音に参加する一方、楽曲提供など様々な分野で活動中。

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