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スリランカ仏教の長老に聞く、SNS時代の自己とはなにか?

スリランカ仏教の長老に聞く、SNS時代の自己とはなにか?

『TRANSREALITYSHOW 0.2: FOR THE PLACE FUZZY AND NEW』
インタビュー・テキスト・編集
佐々木鋼平(CINRA.NET編集長)
撮影:玉村敬太

「モノの価値なんて、すべて妄想なんです」

山口:私は、最近「トランスリアリティ」をテーマにアート作品をつくり続けています。日本語でいえば「(現実の)向こう側の現実」、もしくは「この世でもあの世でもない世界」みたいなものかもしれません。

トランスリアリティ零宣言.

山口:デジタルテクノロジーやインターネットの進化によって、AIアシスタントやロボット、VTuberやバーチャルアイドルなど、いわゆるバーチャルな人格と人々が接する時間が増えています。

こういった一見「バーチャル=虚像」とされるものは、本当に実在しないのでしょうか? それら虚像とされるものと接した際に沸き起こる人々の感情はなんなのでしょうか? 実際に恋愛対象としている人もいるわけです。

そうすると、なにかしらの実体にもとづいた価値や認識、存在感というのは、じつはたしかなモノではないのかもしれない。となると、そもそも私たち一人ひとりの存在もたしかなモノだと言い切れるのか?

私にはそういったずっと疑問があり、人々とデジタルデータ、物理空間とインターネット空間が溶け合う世界を肯定的に捉えたテーマとして、「トランスリアリティ」を打ち出すことにしたのです。

山口がキュレーションをしたVRイベント『TRANSREALITYSHOW 2021』
山口がキュレーションをしたVRイベント『TRANSREALITYSHOW 2021』
『TRANSREALITYSHOW 2021』展示風景 テレポ - ダイヤル | telepodial
『TRANSREALITYSHOW 2021』展示風景 テレポ - ダイヤル | telepodial
『TRANSREALITYSHOW 2021』展示風景 岸 裕真 Yuma Kishi
『TRANSREALITYSHOW 2021』展示風景 岸 裕真 Yuma Kishi

スマナサーラ:少し前にニュースで見ましたが、アメリカでデジタルデータだけのアート作品が高額で落札されたという。

山口:そうです。ビープルというアメリカ人アーティストのデジタルアート作品に約75億円の値段がつきました。

ブロックチェーン技術を使って、唯一無二のオリジナルデータであることを証明している作品です。スマナサーラさんは、デジタルデータでつくられた、実在しないアート作品の価値についてどのようにお考えですか?

スマナサーラ:宝石の価値ってなんだと思いますか? たとえば、ダイヤモンドを子どもに渡したらどうなると思います?

山口:価値はわからないですよね。キラキラして綺麗って思うかもしれないけど。

スマナサーラ:赤ちゃんだったら口に入れて大変なことになったり、どこかに捨てちゃったりとかね。となると、宝石の価値っていったい誰が決めているのでしょう?

山口:大勢の人たちが「欲しい」って思うから?

スマナサーラ:そう。だから価値というのは、実態とイコールではない。人々の頭のなかにだけある「妄想」なんです、昔から。アート作品というのも、物質的にはただの絵の具や大理石の固まりだったりするわけでしょう?

山口:そうです。

山口真人

スマナサーラ:それで、同じ妄想を持つ人々が集まったときに「価値」というものが生まれるんですね。でも、その妄想を共有できない人から見れば価値はない。

それは物質であってもデジタルデータであっても同じです。そもそもお釈迦さまは「現象は因縁によって一時的に生じて滅するものである」といって、ものごとには一つも意味も価値もないとおっしゃっていますしね。

山口:なるほど(笑)。

スマナサーラ:誤解してほしくないのは、「価値がない」というのは、ネガティブなことではないんです。

あなたのようなアーティストだって、絵の具でも、彫刻でも、デジタルデータでも、なにかしらを使って作品をつくらないと、自分の表現を他人に伝えることができなくなってしまうでしょう?

その表現をとおして、良い影響を他の人に与えられたらいいわけです。だから「デジタルアートの価値」なんて、そもそも気にすることはないんですよ(笑)。

アルボムッレ・スマナサーラ
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イベント情報

『TRANSREALITYSHOW 0.2: FOR THE PLACE FUZZY AND NEW』

2021年3月26日(金)~3月28日(日)
参加アーティスト:
ヒロ杉山
山口真人
ナカミツキ
岸祐真
テレポ - ダイヤル
本宮曜
料金:無料

プロフィール

山口 真人(やまぐち まさと)

1980年東京都出身、法政大学経済学部卒業後、アート&デザインスタジオIDEASKETCH,INCを設立。主な個展に『"MADE IN TOKYO』(Gallery Onetwentyeight / NYC 2016)、2019『トランスリアリティ序章』(H.P.FRANCE MARUNOUCHI / Tokyo 2019)等、2019年「INDEPENDENT TOKYO」にてグランプリを獲得。2021年より自身がオーガナイズ・キュレーションするイベント『TRANSREALITYSHOW』をスタート。

アルボムッレ・スマナサーラ

スリランカ上座仏教(テーラワーダ仏教)長老。1945年生まれ。13歳で出家となる。1980年に国費留学生として来日。現在は、日本テーラワーダ仏教協会で初期仏教の伝道、ヴィパッサナーの指導などに従事。2020年からはYouTubeを通じた説法や対話にも力を入れている。『ブッダが教える心の仕組み』(誠文堂新光社)、『ブッダに学ぶ ほんとうの禅語』(アルタープレス)、『Freedom from Anger』(英文, WISDOM PUBLICATIONS)など著書多数。

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