インタビュー

KERAが見てきた東京のインディ・アングラ音楽シーンを振り返る

KERAが見てきた東京のインディ・アングラ音楽シーンを振り返る

インタビュー・テキスト
村尾泰郎
撮影:山本華 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

劇作家ケラリーノ・サンドロヴィッチという顔も持つKERA。長らく演劇活動が中心だったが、近年は音楽活動が再び活発になり、ソロに加えて、ケラ&ザ・シンセサイザーズ、鈴木慶一とのユニットNo Lie-Sense、有頂天の再始動など、さまざまなプロジェクトで作品を発表し、ミュージシャンとして新たなピークを迎えている。

そんななか、ソロ名義の新作『まるで世界』は、本人いわく「つくる予定がなかったアルバム」だとか。度重なる緊急事態宣言で演劇や音楽活動が思うようにいかない、そんなドタバタ劇のなかから新作は生み出された。カバーアルバムとなった今作は、『NHKみんなのうた』に起用された子ども向けの歌から、歌謡曲、シティポップ、ロック、ニューウェイブなどさまざまなジャンルの曲が並んでいて、KERAによる「昭和のソングブック」のような趣もある。そこで今回は、収録曲の話を聞きながら、KERAの音楽人生も振り返ってもらった。オリジナル曲と聴き比べれば、KERAが仕掛けた「ネジ」の面白さも楽しめるはず。

KERA(ケラ)<br>ナイロン100℃主宰 / 劇作家 演出家 映画監督 音楽家。学生時代からの愛称KERA(ケラ)の名前で、ニューウェイブバンド「有頂天」を結成。1986年にメジャーレーベルデビュー。またインディーズレーベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDをプロデュースする。1980年代半ばから演劇活動にも進出。劇団「健康」を経て、1993年に「ナイロン100℃」を結成。結成30年近くになる劇団のほぼ全公演の作・演出を担当。1999年、『フローズン・ビーチ』で岸田國士戯曲賞受賞、現在は同賞の選考委員を務める。また、自らが企画・主宰する『KERA・MAP』『ケムリ研究室』などでの演劇活動も人気を集める。
KERA(ケラ)
ナイロン100℃主宰 / 劇作家 演出家 映画監督 音楽家。学生時代からの愛称KERA(ケラ)の名前で、ニューウェイブバンド「有頂天」を結成。1986年にメジャーレーベルデビュー。またインディーズレーベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDをプロデュースする。1980年代半ばから演劇活動にも進出。劇団「健康」を経て、1993年に「ナイロン100℃」を結成。結成30年近くになる劇団のほぼ全公演の作・演出を担当。1999年、『フローズン・ビーチ』で岸田國士戯曲賞受賞、現在は同賞の選考委員を務める。また、自らが企画・主宰する『KERA・MAP』『ケムリ研究室』などでの演劇活動も人気を集める。

「カバーには自負がある」KERA。「昭和の空気を感じさせる」曲の数々をカバーしたわけ

―カバーアルバムは久しぶりですね。今回はいろんなジャンルの曲が並んでいますが、選曲する際に何かテーマやコンセプトはあったのでしょうか。

KERA:前回の(ケラ&ザ・)シンセサイザーズの『隣の女』(2006年)では女性の歌ばかりカバーしてたので、今回もコンセプチュアルにしようと思ったんですよ。『みんなのうた』縛りとか、ニューウェイブ縛りとか、1960~70年代の曲縛りとか。

結局、縛りはつくらず好きな曲を選んだら、ごった煮っぽい選曲になったんです。それでジャケットのデザインを考えていくうちに「ネジで結合」っていうコンセプトを思いつきました。要するに「アレンジのアイデアをどこから持ってくるのか?」っていうことなんですけど。

―アレンジのユニークさがキモだった?

KERA:(鈴木)慶一さんもおっしゃっていましたが、カバーアルバムで重要なのはアレンジですから。有頂天は“心の旅”(チューリップ)のカバー(1986年)で世に出たので、カバーには自負があるんです(笑)。

有頂天“心の旅”を聴く(Apple Musicはこちら

―なるほど(笑)。今回はいろんな「ネジ」が使われていますね。大きなネジで強引に結合したものもあれば、小さなネジでスムースに結合したものもあって、アイデアの多彩さが際立っているところはニューウェイブっぽくもあります。

KERA:前作(『LANDSCAPE』2019年)と、前々作(『Brown, White & Black』2016年)が、フェイクジャズ的な作品だったので、今回は自由な発想でアルバムをつくろうと思ったんです。そうすると、どうしても僕の場合、ニューウェイブっぽくなる。

自分としてはべつに、変なものをつくりたいわけじゃないんですけど、原曲はその曲にふさわしい、練りに練ったアレンジが施されているわけで、それに拮抗するアレンジを新たに考えるとなると、ある程度、飛び道具的なことが必要になってくることも多いんです。カバーするのであれば原曲と違う風景を見せたいですからね。

―「シェイクスピアの古典を、ケラリーノ・サンドロヴィッチがどう演出するか?」みたいな。

KERA:まさにそう。演劇で言うと(カバーは)古典をどういうふうにアダプテーションするかっていう作業に近いですね。

KERA

―「ごった煮的な選曲」という話も出ましたが、KERAさんが選ぶ「昭和のソングブック」みたいな印象も受けました。いろんなジャンルの歌が入っていますが、時代の空気を感じさせる曲が多い気がしたんです。

KERA:自分が音楽家としてデビューしてからは、世間の音楽を客観的に聴けなくなってしまったので、選曲するとおのずと自分がバンドを始める前、昭和の音楽に偏るんですよ。今回のアルバムは(聴く人の)世代によって感じ方が違うかもしれないと思っていて。それも興味深いですね。

『まるで世界』収録曲(オリジナルアーティスト)

1. 誰も知らない(『みんなのうた』歌・楠トシエ)
2. 遠い世界に(五つの赤い風船)
3. 地球を七回半まわれ(『みんなのうた』)
4. クイカイマニマニ(民謡)
5. 中央フリーウェイ(荒井由実)
6. 時間よ止まれ(矢沢永吉)
7. SUPERMARKET LIFE(コンクリーツ)
8. サ・カ・ナ(リザード)
9. まるで世界(『みんなのうた』作詞・別役実 歌・山田康雄)
10. マリリン・モンロー・ノー・リターン(野坂昭如)
11. LAST TANGO IN JUKU(じゃがたら)
12. COPY(プラスチックス)
13. SAD SONG(ルースターズ)
14. 別れの曲(ショパン)
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リリース情報

KERA『まるで世界』
KERA
『まるで世界』(CD)

2021年7月7日発売
価格:3,300円(税込)
CDSOL-1972

収録曲(オリジナルアーティスト)
1. 誰も知らない(みんなのうた 歌・楠トシエ)
2. 遠い世界に(五つの赤い風船)
3. 地球を七回半まわれ(みんなのうた)
4. クイカイマニマニ(民謡)
5. 中央フリーウェイ(荒井由実)
6. 時間よ止まれ(矢沢永吉)
7. SUPERMARKET LIFE(コンクリーツ)
8. サ・カ・ナ(リザード)
9. まるで世界(みんなのうた 作詞・別役実 歌・山田康雄)
10. マリリン・モンロー・ノー・リターン(野坂昭如)
11. LAST TANGO IN JUKU(じゃがたら)
12. COPY(プラスチックス)
13. SAD SONG(ルースターズ)
14. 別れの曲(ショパン)

KERA『まるで世界』カラーヴァイナル重量盤
KERA
『まるで世界』カラーヴァイナル重量盤(2LP)

2021年7月7日発売
価格:6,050円(税込)
TYOLP1035/6
ゲートフォールドジャケット仕様

[SIDE A]
1. 誰も知らない
2. 遠い世界に
3. 地球を七回半まわれ
4. クイカイマニマニ
5. 中央フリーウェイ

[SIDE B]
6. 時間よ止まれ
7. SUPERMARKET LIFE
8. サ・カ・ナ
9. まるで世界

[SIDE C]
10. マリリン・モンロー・ノー・リターン
11. LAST TANGO IN JUKU
12. COPY
13. SAD SONG
14. 別れの曲

[SIDE D]
1. 変なパーマネント-LIVE ver.-(突然段ボール)※
2. マスク-LIVE ver.-(ヒカシュー)※
3. Row Hide-LIVE ver.-(あぶらだこ)※
4. ねじりの法則(セルフカバー)※
5. ALL OF ME(ジャズ・スタンダード)※

※アナログ盤のみ収録曲

プロフィール

KERA
KERA(ケラ)

ナイロン100℃主宰 / 劇作家 演出家 映画監督 音楽家。1963年東京生まれ。横浜放送映画専門学校(現・日本映画学校)を卒業後、学生時代からの愛称KERA(ケラ)の名前で、ニューウェイヴバンド「有頂天」を結成。86年にメジャーレーベルデビュー。インディーズブームの真っ只中で音楽活動を展開。またインディーズレーベル「ナゴムレコード」を立ち上げ、70を超えるレコード・CDをプロデュースする。80年代半ばから演劇活動にも進出。劇団「健康」を経て、93年に「ナイロン100℃」を結成。結成30年近くになる劇団のほぼ全公演の作・演出を担当。99年、『フローズン・ビーチ』で岸田國士戯曲賞受賞、現在は同賞の選考委員を務める。また、自らが企画・主宰する「KERA・MAP」「ケムリ研究室」などでの演劇活動も人気を集める。2018年11月、脚本家・演出家としての功績を認められ紫綬褒章を受章、ほか受賞歴多数。音楽活動では、ソロ活動の他、2014年に再結成されたバンド「有頂天」や、「ケラ&ザ・シンセサイザーズ」でボーカルを務めるほか、鈴木慶一氏とのユニット「No Lie- Sense」などで、ライブ活動や新譜リリースを精力的に続行中。また2013年にはナゴムレコード設立30周年を機に、鈴木氏と共同で新生ナゴムレコードをスタートしている。隔月ペースでロフトプラスワンにて開催している犬山イヌコとのトークライブ「INU-KERA」は12年を超え継続中。

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