インタビュー

松本壮史×三浦直之 「好き」は消えることなく、いつか誰かに届く

松本壮史×三浦直之 「好き」は消えることなく、いつか誰かに届く

インタビュー・テキスト
ヒコ(「青春ゾンビ」)
撮影:小林真梨子 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)

監督を松本壮史、脚本を三浦直之(ロロ)が務める映画『サマーフィルムにのって』が8月6日に公開される。これまでもテレビドラマ『デリバリーお姉さんNEO』『ガールはフレンド』、ショートムービー『それでも告白するみどりちゃん』『デートまで』など多くのコラボレーションを果たしてきた両者による、満を持しての長編映画は、勝新太郎を愛してやまない女子高生が時代劇映画の傑作を撮るまでの苦悩と煌めきを描いた青春ストーリーとなった。

主人公の女子高生、ハダシの時代劇への「偏愛」が周りを巻き込んでいく様は、まるであらゆる愛のかたちを肯定していくようなとばしりに溢れている。あなたが好きなものは、それがどんなに変わっていても、誰になんと言われようとも、「好き」と表明すべきなのだ! とこの映画は訴えている。あなたが世界に放った「好き」という気持ちは、決して消えることなく、いつかどこかの誰かに届く。この映画も、松本壮史と三浦直之のそんな偏愛の歴史がつくり上げたものなのではないか。その秘密を探るべく行われたインタビューの聞き手は、二人の活動を見つめ続け、「好き」の気持ちをインターネット上に紡いできたブログ「青春ゾンビ」のヒコでございます。

※本記事は『サマーフィルムにのって』のネタバレを含む内容となっております。あらかじめご了承下さい。

『君の名は。』や『ウォーターボーイズ』、PUNPEEの楽曲などを参照。20代の最後につくられた青春映画

左から:三浦直之(みうら なおゆき)、松本壮史(まつもと そうし)
左から:三浦直之(みうら なおゆき)、松本壮史(まつもと そうし)

ヒコ:『サマーフィルムにのって』(以下、『サマーフィルム』)、素晴らしかったです。「誰かが誰かを『見つめる』」という行為を通して、恋や未来が形成されていく様が瑞々しく映し撮られていて、まさに映画というメディアで表現されるべき青春劇の傑作だと感じました。

三浦:うれしい、ありがとうございます。

ヒコ:誰かを見つめる「まなざし」というのは、ロロの『いつ高』シリーズにも通じるテーマですよね。『いつ高』シリーズで実践していた10代の会話劇への挑戦が、今作で実を結んでいて、強い作家性を残しながらも、とてもポップな青春映画に仕上がっているように感じました。

松本:観る人の間口を広げたい、っていうのはずっと打ち合わせでも話していました。

ヒコ:参照した作品などはありましたか?

松本:最初は『君の名は。』(新海誠監督 / 2016年)を見て、プロットを分析しました。ああいう王道エンタメを目指そうって。

三浦:あと、映画『ウォーターボーイズ』(矢口史靖監督 / 2001年)や『リンダ リンダ リンダ』(山下敦弘監督 / 2005年)なんかも参考にしています。

松本:意外とああいう感じの青春映画のポジションがいまスッポリ空いている、と思って。

三浦:PUNPEE氏の楽曲からもインスパイアされたよね。

松本:最初の企画会議で、もうエンディングテーマまで話してて(笑)。“Oldies”っていう曲がこの映画のテーマにすごく近くて。「新しいものを全部愛せたらいいけど、そんなに簡単じゃないよね」っていうようなテーマだったりするんで。

PUNPEE『MODERN TIMES』収録曲“Oldies”を聴く(Apple Musicはこちら

三浦:これはもうPUNPEE氏に“タイムマシーンにのって”を歌ってもらうしかなくない!? みたいな話で盛り上がりながら曲を流したら、松本さんが「撮る画が浮かんだ」って言ってた(笑)。

松本:そうそう。PUNPEE氏にも先生役で映画に出てもらって、文化祭のシーンでラップしてもらうみたいな、勝手に夢を広げて話してました。

左から:松本壮史、三浦直之

三浦:物語の大枠は、松本さんとサウナに入って近況を報告し合って、盛り上がった数時間で決まったんだよね。

松本:まずは、恋愛モノではない、熱い青春映画をつくりたいってところから始まりました。企画当時、ぼくらはちょうど30歳になったばかりだったので、そのときにできるベストを出したい、みたいな気持ちがありました。

三浦:これまでも10代をモチーフにする作品が多かったので。だったらここで一度、集大成をつくりたいなと。ひとつの区切りみたいな気持ちがあったと思います。ストレートな青春モノを、という感じで。

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作品情報

『サマーフィルムにのって』
『サマーフィルムにのって』

8月6日(金)より新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開

出演:
伊藤万理華
金子大地
河合優実
祷キララ
小日向星一
池田永吉
篠田諒
甲田まひる
ゆうたろう
篠原悠伸
板橋駿谷
監督:松本壮史
脚本:三浦直之(ロロ)、松本壮史

プロフィール

松本壮史(まつもと そうし)

映像監督。1988年埼玉県出身。2020年長編初監督作『サマーフィルムにのって』が第33回東京国際映画祭 特別招待作品に選出。全国公開は2021年夏。ラップグループEnjoy Music Clubとしても活動。監督を務めるドラマ『お耳に合いましたら。』がテレビ東京で放送中。

三浦直之(みうら なおゆき)

1987年、宮城県出身。ロロ主宰 / 劇作家 / 演出家。2009年、主宰としてロロを立ち上げ、全作品の脚本・演出を担当。古今東西のポップカルチャーを無数に引用しながらつくり出される世界は破天荒ながらもエモーショナルであり、演劇ファンのみならずジャンルを超えて老若男女から支持されている。2019年脚本を担当したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞。

ヒコ

ポップカルチャーととんかつを愛するブログ「青春ゾンビ」の主宰。

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