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なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

CAMPFIRE
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

今って、繊細で複雑な形をした子がいっぱいいるのに、いわゆる日本の芸能事務所が持ってる型のパターンは圧倒的に少ないなと思うんですね。

―「現状『ミスiD』で大きな収益を出しているわけではない」というお話でしたが、とはいえ今後はビジネス的な観点でも発展させていくビジョンをお持ちなのでしょうか?

小林:そうなんです。今は正直収支トントン程度。僕にビジネス的才覚がないので(笑)。でも、今の若い子たちの状況はとても繊細で移ろいやすく、そしてあまりにカオスでダイバーシティーなので、簡単にはビジネスになるものではないなと思っているんです。産みの苦しみは当然かなと。

ただ、可能性やビジネス的な新しいゾーンは、あらゆるところに見えてきています。手を差し伸べてくださる方も、一緒に動いてくれる方も、確実に増えていますしね。2017年は、今までにない新しいことをどんどんやります、とだけ言っておきます。

―具体的に、どういったことをイメージされているかお聞かせいただけますか?

小林:最終的に僕がやりたいと思ってるのは、今までの事務所ではないタイプのキャスティングサービスみたいなことで。『ミスiD』を「才能ある女の子のストックモデル」として成立させていくというか。これまで『ミスiD』に出てくれた子も、「4年前に出た子はもうケアしない」ではなくて、今でもイベントとかをやるときには参加してもらったりしてるんですね。

『国民的美少女コンテスト』とか『ホリプロタレントスカウトキャラバン』とかは、毎年更新されていくわけですけど、『ミスiD』はストックしていって、そのなかで混ざってくれたら面白いなと。なおかつ、まだ事務所が決まってない子をコンテンツとして持つような形にして、なにかのニーズに対してこちらから提供したり、アイデアを持ちかけたりして、そこをビジネスに落とし込めればなって考えています。

小林司

―新しいタイプの「タレント事務所」というイメージでしょうか。

小林:それに近いんですが、決して「芸能」ではないですね。現状だと、「バラエティー番組に強い事務所」とか「モデル業務に強い事務所」とか、それぞれの事務所に個性があって、その事務所が持っているノウハウや他社との関係性のなかでタレントさんたちも仕事をするわけですよね。でも、たとえば三角形の女の子なのに、事務所としては丸の女の子の個性の伸ばし方しか持っていなくて、そこに押し込むしかない、というときもなかにはあると思う。今って、三角とか丸とか、従来の形にハマる子だけではなくて、もっと繊細で複雑な形をした子がいっぱいいるのに、いわゆる日本の芸能事務所が持ってる型のパターンは圧倒的に少ないなと思うんですね。

―もちろん、旧来の事務所の強みもあるけれども……。

小林:そう。そこにハマればものすごく売れたり、遠くにいけたりするので、それはそれで素晴らしいんです。ただ、従来の型にハマりにくい子が増えている現状に対しては、今までのシステムはどうしても古くなっちゃう。そこでいわゆる芸能事務所ではなく、出版社のようなカルチャーを作ってきた企業が噛むことで、「ド芸能」ではない開かれ方ができるんじゃないかと思うんですよね。

とにかく「抱え込む」とか「逃がさない」という発想はもう死滅してる。

―「古い枠組みではなく、新しい枠組みで考える」というのは今のエンターテイメント業界全般にとっても大事なことですよね。小林さんはかつて、『妄撮男子』を講談社以外の出版社で展開したこともありました。

小林:『KING』で男性読者向けにスタートした『妄撮』を、女性読者向けにやろうと思ったときに、講談社の女性誌——『with』とか『ViVi』でやることもできたんですけど、悲しいことにあまりどこも乗り気ではなくて。そのときたまたま知り合った『an・an』(マガジンハウス)の編集の方が、「うちなら8ページでやるよ」って乗ってくれたんです。「編集長もOKですよ」と。そしたら単純に、面白くできるほうでやるのに越したことはないじゃないですか。

コンテンツを、最初から最後まですべて抱え込まなきゃいけない、という時代はもう終わってると思うんです。もともと僕は帰属意識が薄いのと、会社の肩書きがなきゃ仕事ができないという時代は終わるとずっと思っていきてきたので、むしろ会社の外に出れると呼吸がしやすくて(笑)。そちらのほうが、よっぽどマインドでつながれる同志が見つかりやすい。

『妄撮 モーサツ』表紙(2008年、講談社)
『妄撮 モーサツ』表紙(2008年、講談社)表紙(Amazonで見る

―会社も業界も超えて、同じマインドを持つ人たちでつながって、いいコンテンツを作っていくべきだと。

小林:とにかく「抱え込む」とか「逃がさない」という発想はもう死滅してる。面白いコンテンツは当然ジャンルも媒体も超えるので、超えたときはそこに従ったほうがいいというのは、すごく思います。

たとえば『ミスiD 2015』でグランプリを受賞した金子理江なんて、『ヤングジャンプ』(集英社)さんが、ドーンと表紙で使ってくれたりした。しかも、「ミスiD 2015グランプリ」という言葉を堂々と出して。先ほども話に挙げた『an・an』さんで言えば、半年間毎週女の子についてのコラムを連載させてもらったこともありました。そこで、メジャーデビュー前の大森靖子さんのことを書かせてもらったり。少しずつですが、素敵な時代に向かってるなあと(笑)。

―「雑誌の遺伝子としてのつながる面白さ」という最初の話にも通じますね。

小林:そうですね。出版社同士が一緒に面白いものを育てていかないと、未来なんてないですからね。あと、僕はとにかく座組みとか枠組みありきで、最後にコンテンツを考えるという発想がすごく嫌いなんです。「こことここで面白いことをやりましょう」ってやっても、大体つまんないじゃないですか? 「コンテンツはあとで考えましょう」ってなったときは、ホントクソみたいなものしか出ないんですよ。

そうではなくて、先に心を動かされるようなコンテンツのアイデアがあって、そのためにはどんな人の力が必要なのか、という順番で考えるべき。そこが逆転してしまったら、どんなメディアミックスでもまったく意味がないと思います。やっぱり、「面白い」ってことが人を走らせるんです。そうであってほしいというのは強く思いますね。『ミスiD』も、もっとそういうものになりたいです。

小林司

声が大きい人が勝つんじゃなくて、小さい声を拾っていく。

―この連載記事はCINRA.NETとCAMPFIREの合同企画なのですが、小林さんはクラウドファンディングについてはどのような印象をお持ちですか?

小林:『ミスiD』では、映画のプロジェクトをクラウドファンディングを通して実現させていただいていたりします。こういうサービスが出てこないと、新しいシステムは立ちいかないと思いますね。さっきのたとえでいうと、旧来の価値観では丸と三角しかなくて、そこに対してしかお金が出なかったけど、そうではないものが増えている。そのなかで、そういった人やもの、小さい声をフォローするための先立つものが絶対に必要で、そのためのひとつとしてクラウドファンディングは画期的な発明だと思います。

―CAMPFIRE代表の家入一真さんは、今年から『ミスiD』の選考委員も務められていますね。

小林:家入さんって、選考委員みんなで白木屋へ打ち上げに行ったすぐあとに、「やっぱり僕はインターネットが一番落ち着く」ってツイートするような方で(笑)。そこが逆に大好きというか、信用できるんです。あと、社会性がないでしょう?(笑) 僕もまったくないので、とてもシンパシーを感じるんです。できることなら仕事なんてしたくもないし、いまだに日曜の夜なんて憂鬱で死にたくなります。でも、家入さんもきっとそうだと、勝手に思っています(笑)。

『ミスiD』に参加する子もほとんどそうだし、CAMPFIREのトップにいる人がそれを感覚的にわかってるというのはめちゃくちゃ大きいと思うんです。声が大きい人が勝つんじゃなくて、小さい声を拾っていく。クラウドファンディングはその典型で、そこも『ミスiD』がやりたいこと、拾いたい未来とすごく似ているんです。より密接に結びついて、一緒に歩いていけたらいいなと思っていますね。

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プロフィール

小林司(こばやし つかさ)

講談社第一事業局企画部所属。編集者。ミスiD実行委員長。別名「妄撮P」。入社後、『FRaU』『VoCE』の編集に携わる。2006年、男性誌『KING』にて「妄撮(モーサツ)」の連載を開始。夢眠ねむを被写体とした『アキバ妄撮』(角川グループパブリッシング、2011年)や、『吉木りさ×妄撮 リア充だけがハッピーじゃない』(講談社、2012年)など、ヒットを飛ばす。その他、水原希子や二階堂ふみなどにいち早く目をつけ、『水原希子フォトブック KIKO』(講談社、2010年)、『二階堂ふみフォトブック 進級できるかな。』(講談社、2012年)などの編集を手がける。2012年より、まったく新しいタイプの女の子を発掘し育てるオーディション『ミスiD』を開催。

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