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なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

なぜ見た目重視ではないアイドルを探す?『ミスiD』小林司の発想

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インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

女の子自身の感性が一番新しいに決まっているので、「導く」みたいなイメージは一切ない。

―『ミスiD』は今年で5年目を迎えて、小林さんご自身もずっと選考委員を務められてきたわけですが、『ミスiD』に応募してくる女の子の変化や進化をどう見ていますか?

小林:今は、たとえば高校を途中でやめて、通信制の高校に入って、それから慶応義塾大学に入るなんて子がザラにいるんですよね。それって10年前の感覚ではありえなかったと思う。高校をやめるって、不良とか、いじめられてるとか、つまりドロップアウトのイメージしかありませんでした。でも、今のティーンエイジャーは、ただ「学校に行かない」という選択をしてるだけで、「勉強をやめます」ということではないんです。そういう決断が速い女の子たちは、学校のような決められた場所にははまらない。

小林司

―そういったなかで、『ミスiD』ではどういう女の子をフックアップしたいと考えていますか?

小林:『ミスiD』は、基本的には「ネット」を基盤にしています。ネットの世界にいる子、ネットをよく見ている子、ネットしか逃げ場がない子。これまでは『ViVi』のオーディションだったら『ViVi』っぽいハーフみたいな子が来るし、『ヤンマガ』のオーディションだったらおっぱいの大きな健康的な子が来ていた。初めから物差しが存在してるから、そこに近い子しか来なかったんですね。

でも、ネットにはどういう子がいるのかわからない。まあ、乱暴に言うと、もはや「ネット=世間」なので(笑)、あらゆる人種がいます。なので、偏見とかバイアスだけは絶対持たないようにしていて、こちらから女の子をコーディネートする感覚はなく、とにかく出てきた子に対応しようと。

『ミスiD2017』グランプリ受賞者・武田杏香(審査員たちのコメントを見る

―はみ出た子が出てきたら、その子をむしろ面白がって、それによってさらに可能性が広がると。

小林:そうですね。そこに対して思考停止しないように、常に考え続ける、見続けるという感じです。女の子自身の感性が一番新しいに決まってるので、「導く」みたいなイメージは一切なく、来たものに対して「こういう時代なのか」って考える。受容と寛容ですね。そうすると、まだ定義できないような小さなジャンルにも会えるかもしれないし、見たことない人とどんどん出会えるんです。

―「受容と寛容」によって、影に隠れていた才能や感性を拾い上げることができるんですね。

小林:去年は元HKT48で人気者だった「ゆうこす」こと菅本裕子のような女の子が準グランプリを獲りました。選考委員の吉田豪さんに「地獄を見た女は強い」と評されたり、完全に自信を失っていたのが「ネオモテ」的なキーワードで『ミスiD』で再評価されたことで自信を取り戻し、今ではSNSを駆使して女の子の新しいカリスマになっています。

ネットに強く、自撮りからイベントプランニング、動画作りまで、なんでも自分でできちゃうDIY体質に加え、『ミスiD』で地獄から這い上がったことで、「失敗を恐れない」というマインドを習得した。そうすることで、芸能事務所に所属しない女の子の未来をどんどん可視化していってくれている気がします。ある意味、どんぴしゃに「『ミスiD』っぽい子」ですよね。

そういうこともあって、『ミスiD』は、ある種の「駆け込み寺」とよく言われるのですが、こういうことがもっと増えていくといいなと思います。芸能界だって、そうじゃない世界だって、セカンドチャンスやサードチャンスのない世界なんてつまらないじゃないですか。実際は、かなりやっかいな駆け込み寺だし、日々対応してるだけでとてつもなく繊細さも必要になるので、面倒くさいですよ。でも、プロアマ問わず、「このなかだと息が吸える」とか「ここなら新しい自分になれる」とか、そう思ってもらえる場所になればいいなと思っています。

これを読んでいる学生さんがいれば、ぜひ言いたいんですけど、会社を上手く騙すことが必要だと思うんです。

―『ミスiD』は『ミスマガジン』のように雑誌の冠がついているわけではありません。その上で、講談社がオーディションをやる意味合いはどこにあるとお考えでしょうか?

小林:現状『ミスiD』というプロジェクト単体で、大きな収益を出しているわけではないです。そこは正直まだまだだし、ダメですね。正直、会社の上の方だって意味がわからないと思います。「『ミスiD』? なんなんだよ」って。ただ、こういうコンテンツは完全に上から理解されてもダメなので(笑)。

たぶん10年前だったら、「わからん、もう終わり」な企画だと思うんですよ。でも今は、出版社自体が「本」というコンテンツの活用だけでこのまま生き残れるかという時代なので、新しいことへの冒険は逆に必要だ、という気持ちがどこかにあると思うんです。だから、わからないなりにやらせてくれている。もはや今は、「このままなにも手を打たないのは死に値する」時代だと思うんですよね。

ただ僕は、日々24時間なんらかの形で『ミスiD』と向き合ってますが、彼女たちのコンテンツに向かうのと同じくらい、会社に認めてもらうためにもエネルギーを使っています。これは会社員なら当たり前だと思うんですね。これを読んでいる学生さんがいれば、ぜひ言いたいんですけど、新しいことをやりたいなら会社を上手く騙すことが必要だと思うんです。

小林司

―「上手く騙す」というのは?

小林:今の時代はなにがヒットするか誰にもわからないし、上の立場にいる人たちにも正しい判断基準がない。だから各編集者に委ねられている部分が昔よりも多いと思うんです。たとえば『進撃の巨人』なんて、ある意味グロテスクだし、いわゆる画力もノーマルに高いというようなものではないですよね。でも信念を持って描ける作家さんと、それを支える信念のある若い編集者が、ある意味誰にも触らせずに、あそこまで持って行った。

いろんな人の言うことを聞いていたら、ホントにそれはよくある、誰もが理解できるノーマルでつまらないものになってしまう。でも、そんなものはすべて、すでに世の中に溢れているんです。今は「わからないことに対して、拒否をしてもしょうがない」という感じになってると思います。そういうものが一点突破できるから。だから、むしろチャンスです。

―会社への話し方次第で、若い人にとっても、自分のやりたいことをできる可能性が広がっている時代であると。

小林:ただ、それを言い出して遂行する人間が、マーケティング的な発想ではなく、本気でそれを面白いと思っていないとダメです。そこに自信がなかったら、人を動かすことはできない。だから、自分のやりたいことには信念を持って、それが本気で面白いと思って、どんな未来図を描いているのかを会社にちゃんと説明できるくらいにはしないといけない。できたら、なんとなく楽しそうに。で、「なんだかよくわかんないけど面白そうだな」と思わせる(笑)。逆に言うと、それさえちゃんとできれば、今は会社のなかでもある程度は好きなことがやれると思うんですよね。

小林司

―1990年代は雑誌がめちゃくちゃ売れていて、会社も余裕があるからこそ「好きなことをやっていいよ」という部署があったりした。でも、時代の変化によってだんだんと売れなくなっていき、「好きなことをやる余裕なんてない」に変わっていった。今はまたそこから変わってきて、「このまま同じことをやっていてもダメだから、個人のアイデアを活かそう」という流れになっていて、むしろチャンスの多い時代になっているように考えられると。

小林:そうだと思いますね。だから、「手を挙げて、下ろさないもん勝ち」というか。もちろん、ただ「好きにやれる」という時代では当然ないですけど、逆に言えば、「それでもやりたい」というのはそれだけでも存在意義があって、あとはその説得材料を命懸けで準備すればいい。

とにかく、こういう時代でもアナログな執念は有効というか、何事もどうしたって「対人間」なので、熱量が一番のプレゼンだと思うんです。『ミスiD』はそういった時代とかとも重なって、ホント奇跡的に、ギリギリで成功したんじゃないかと思います。いや、成功してるのかな……すべてがまだこれからなので、成功してるとは口が裂けても言いません(笑)。

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プロフィール

小林司(こばやし つかさ)

講談社第一事業局企画部所属。編集者。ミスiD実行委員長。別名「妄撮P」。入社後、『FRaU』『VoCE』の編集に携わる。2006年、男性誌『KING』にて「妄撮(モーサツ)」の連載を開始。夢眠ねむを被写体とした『アキバ妄撮』(角川グループパブリッシング、2011年)や、『吉木りさ×妄撮 リア充だけがハッピーじゃない』(講談社、2012年)など、ヒットを飛ばす。その他、水原希子や二階堂ふみなどにいち早く目をつけ、『水原希子フォトブック KIKO』(講談社、2010年)、『二階堂ふみフォトブック 進級できるかな。』(講談社、2012年)などの編集を手がける。2012年より、まったく新しいタイプの女の子を発掘し育てるオーディション『ミスiD』を開催。

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