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My Little Loverは更新していく。だからこそ変化しない名曲の輝き

『My Little Lover☆acoakko at Billboard Live presented by 三井ガーデンホテルズ』
テキスト
天野史彬
編集:野村由芽、宮原朋之
My Little Loverは更新していく。だからこそ変化しない名曲の輝き

時代とともに消費される「ポップス」の世界で、21年生き抜いたマイラバの今

音楽を紹介する際に、「この曲はエバーグリーンな輝きを放っている」という言い回しを使われることが多々ある。その場合の「エバーグリーン」とは、言い換えるなら、「恒久的な」という意味合いだろう。色褪せることのない輝きを持った音楽がここにあるのだ、と。しかし、ポップスにおいて、「恒久的であること」は、そう簡単にあり得ることではない。ポップスとは本来、時代と共に生まれるものであるからこそ、時間が経っても輝きを失わず、大衆に聴かれ続けることは極めて難しい。

1995年にリリースされ、300万枚以上のセールスを上げた『evergreen』。My Little Loverのデビューアルバムのタイトルに冠されたのも、まさにこの言葉だった。サザンオールスターズや桑田佳祐のソロ作、Mr.Childrenなどに関わり、国内音楽シーンの中心にいた小林武史も所属したユニットがデビューアルバムで残した結果は、見事すぎるくらいにポップスとしての役割を果たしたと言える。95年、この国に生きる多くの人々が「マイラバ」を聴き、「マイラバ」を歌っていた。この瞬間、My Little Loverはわかちがたく、時代と結びついていたのだ。

My Little Lover『re:evergreen』ジャケット
My Little Lover『re:evergreen』ジャケット(Amazonで見る

しかし、それ故に、このアルバムに『evergreen』というタイトルが冠されたことは、とても興味深い。ポップスの輝きは変わりゆくものであることを知りながら、それでも変わらないものを描こうとするように、ある意味逆説的に冠せられたこのタイトル。そこには、時代と心中するポップスとしての役割以上の意思や祈りのようなものを感じとることができる。それから21年後、その祈りはどこに行き着いたのだろうか。

akko
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21年間、あらゆる人々の人生に寄り添ってきた歌が、一人の女性のから放たれる

東京と大阪のビルボードライブで開催された、My Little Loverのアコースティックプロジェクト「acoakko」のワンマンライブ『My Little Lover☆acoakko at Billboard Live presented by 三井ガーデンホテルズ』。私は、各夜2ステージ制で行われたこのライブの、東京公演1stステージに行った。

食事を座って楽しみながら音楽を堪能することができるビルボードライブだけあって、そこにはとても穏やかで濃密な空間が広がっていた。森俊之(Key)と古川昌義(Gt)という、「acoakko」が始まってからの10年間を連れ添ったパートナーたちの繊細で豊かな演奏。そこに、曲によってはストリングスカルテットも参加して、生演奏によるどこまでも豊潤な音世界が生み出されていく。

『My Little Lover☆acoakko at Billboard Live presented by 三井ガーデンホテルズ』 撮影:笹原清明
『My Little Lover☆acoakko at Billboard Live presented by 三井ガーデンホテルズ』 撮影:笹原清明

“STARDUST”に始まり、“悲しみよ今日わ”“予感”へと、深くその世界感に引きずり込んでいくような導入部を経て、最初の感情の沸点は、去年リリースされた楽曲である“ターミナル”だった。どこまでも力強く響くakkoの歌。それは、かつての、まだあどけなさを残した彼女の歌声とは違う、様々な時を経て歌い続けてきた人の年輪と貫禄が刻まれた歌声だった。この21年間、あらゆる人々の人生に寄り添ってきた歌が、この一人の女性の内側から放たれている――その事実から生まれる凄みがあった。

akko 撮影:笹原清明
撮影:笹原清明

そして後半、“wintersongが聴こえる”では会場から手拍子も起こり、空間全体の熱量が高まっていく。その熱量は、沼澤尚(Dr)も参加した本編ラストの2曲――“Man & Woman”と“白いカイト”という往年の大ヒット曲2連発で沸点に達した。この最後の2曲を歌うときのakkoの歌声は、前半とは違い、どこか90年代の彼女を思わせる、甘い煌めきと躍動感を感じさせるものだった。多くの人々の人生や記憶を飲み込んできたポップスだけが浮かび上がらせることのできる「時代の輪郭」のようなものがあって、akko本人もまた、その輪郭に寄り添いながら歌っているように思えた。

人は変えることのできない記憶を抱えながら、それでも「今」を生きていくものだが、きっとポップスもそうなのだ。変わることのない歌の記憶があり、でも変わり続ける歌い手の人生がある。akkoは「マイラバ」を更新しながら、歌い続けてきたのだ。

akko 撮影:笹原清明
撮影:笹原清明

akko 撮影:笹原清明
撮影:笹原清明

90年代を背負ったアルバム『evergreen』の宿命は、今もまだ終わっていない

20周年イヤーであった去年、『re:evergreen』という完全新作のアルバムと、『evergreen』のボーカルはオリジナルそのままに、演奏だけを小林武史が新録した『evergreen+』が2枚組アルバムとしてリリースされた。

akko 撮影:笹原清明
撮影:笹原清明

アンコールで演奏されたのは、“Hello, Again ~昔からある場所~”だった。<“記憶の中で ずっと二人は 生きて行ける”>というサビの歌い出しが有名なこの曲は、決して過去に閉じこもるための歌ではない。

僕は この手伸ばして 空に進み 風を受けて
生きて行こう どこかでまためぐるよ 遠い昔からある場所

記憶は消えない。そして、自ら抱えた記憶を輝かせるには、「今」の自分が輝くしかない。akkoは、とても力強く、美しく、歌っていた。そこには「今」を生きるポップアーティストとしてのMy Little Loverがいて、その姿はまるで、彼女が21年間、鳴らし続けた全ての音楽と、出会った人々の全ての人生を肯定しているようだった。ポップスは時代と心中するが、しかし、それを奏で続ける人がいれば、そこには新たな宿命が生まれる。『evergreen』というタイトルに込められた祈りの着地点は、もしかしたら、ここなのかもしれない。

イベント情報

『My Little Lover☆acoakko at Billboard Live presented by 三井ガーデンホテルズ』

2016年11月28日(月)
会場:東京都 六本木 Billboard Live Tokyo

プロフィール

My Little Lover
My Little Lover(まいりとるらばー)

1995年にシングル“Man & Woman/My Painting”でデビュー。わずか3か月の間に“白いカイト”“Hello, Again ~昔からある場所~”と、後にMy Little Loverの代表曲となる3曲を連続リリースし、1stアルバム『evergreen』がトリプルミリオンのセールスを記録。現在はセルフプロデュースによるアコースティックライブ『acoakko』の他、絵本『はなちゃんのわらいのたね』の出版など、アーティストとして、オーガニックなライフスタイルを大切にする一人の女性として、活動の幅を広げている。2015年、デビュー20周年プロジェクトとして、メモリアルな2枚組CD『re:evergreen』をリリース。

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