レポート

SIRUP、古川麦らが共演。特殊なギミックがなくても届く真摯な音

テキスト
天野史彬
撮影:Kana Tarumi 編集:川浦慧
SIRUP、古川麦らが共演。特殊なギミックがなくても届く真摯な音

強烈な存在感と、中性的なボーカルのAmber’s

7月19日に渋谷のライブハウスTSUTAYA O-nestにて、CINRAと音楽アプリ「Eggs」の共同主催による無料音楽イベント『exPoP!!!!!』が開催された。

この日のトップを務めたのは、Amber’s。豊島こうき(Vo,Gt)と福島拓人(Gt)の2人から成るユニットで、この日は3人のサポートメンバーを加えたバンドセットで登場。抒情的なフォークロックや、The 1975(イギリス出身のオルタナティブロックバンド)のようなファンキーなモダンポップなど、決して一辺倒にならない引き出しの多いサウンドが印象的だった。

Amber’s
Amber’s

豊島こうき(Amber’s)
豊島こうき(Amber’s)

豊島の中性的なボーカルは、そこに1本の芯を通すように強烈な存在感をもって響いてくる。ちなみに、このAmber’s、特に豊島の歌声は渋谷すばるにラジオで大絶賛された過去もあるという。曲を追うごとに、どんどんとエモーションが肥大していくような、情熱的なパフォーマンスを披露した。

豊島こうき(Amber’s)

Amber’s

ceroとも古い付き合いのFALSETTOS、色彩豊かなサウンドを響かせる

2番手に登場したのは、FALSETTOS。メンバーのYukiko(Key,Tp)がアルバム『My Lost City』(ceroの2ndアルバム、2012年リリース)にブラスアレンジで参加するなど、ceroとの古くからの交流でも知られる4ピースバンドだ。今年2月にリリースされた1stアルバム『FALSETTOS』では、ジャンルや国籍を問うことが不毛に思えるような、自由で色彩豊かなサウンドを聴かせていた彼女たち。

FALSETTOS

FALSETTOS
FALSETTOS

そのパワフルなアンサンブル、瑞々しく重なり合う4人のハーモニーは、まるで、世界を真っ向から祝福するようなポジティブなエナジーに溢れている。特にラストを飾った“Newborn Baby”は、その名の通り、生まれたばかりの赤子の叫びと、それを抱きしめる母親の慈愛を同時に表現したかのようなバンドシンフォニーが素晴らしかった。この夜が終わってしばらく経った後も、その余韻が心に焼き付いて離れなかったくらいだ。

FALSETTOS

FALSETTOS

豪華なバンド構成で見せた古川麦、フロアを揺さぶり熱気で満たした

3番目にステージに立ったのは、古川麦。表現(Hyogen)、Doppelzimmer、あだち麗三郎と美味しい水(旧、あだち麗三郎クワルテッット)などのメンバーであり、ceroのサポートメンバーとしても活動する才人だが、この日は、アポロン増田(Ba)、田中佑司(Dr / bonobos)、別所和洋(Key / Yasei Collective)の3人をサポートに加えたバンドセットで登場。

古川麦
古川麦

アポロン増田
アポロン増田

田中佑司(bonobos)
田中佑司(bonobos)

別所和洋(Yasei Collective)
別所和洋(Yasei Collective)

聴き手の体にダイレクトに作用するような力強い響きを奏でる古川のギター、歌もスキャットも横断する柔軟なボーカリゼーションが、3人のメンバーとの化学反応によって増強&拡張され、フロアを大いに揺さぶっていく。そのカタルシスたるや、圧巻。

古川麦

今年3月にリリースされた2ndアルバム『シースケープ』は、ストリングスも多用された、繊細な室内楽的アンサンブルも素晴らしいアルバムだったが、この夜は、とことんフロアの熱気を高めていく強烈にエナジェティックなパフォーマンスを披露した。

古川麦

ユーモラスな人柄とギター1本の弾き語りで、フロアの一体感を作ったMichael Kaneko

4番手に登場したのは、シンガーソングライター、Michael Kaneko。この日、唯一ひとりでステージに立った彼は、湘南生まれ、南カリフォルニア育ち、音源をリリースする前から数々のCMにその歌声が起用され、大型フェスにも出演してきたという異例の経歴を持つ音楽家だ。

Michael Kaneko
Michael Kaneko

Michael Kaneko

「新曲やります」と言って始まった曲ではループペダルを使用して音を重ねていたが、基本的にはギター1本の弾き語りスタイル。ときにメロウに、ときにアグレッシブに、見事に緩急をつけながら奏でられるその音の連なりは、彼の体から「溢れ出ている」と表現するのがしっくりくるくらい、とめどなく、豊かに、空間を音で満たしていく。

手拍子を先導して一体感を求めたり、ユーモラスなMCでフロアを笑わせたりと、そのキャラクターも好感度大だったが、そんな彼の人柄と音楽がイコールで繋がれている感じがひしひしと伝わってくるパフォーマンスだった。

Michael Kaneko

Michael Kaneko

SIRUPの歌声と存在感で「踊らずにはいられない」熱狂が生まれた

この日のトリを飾ったのは、大阪出身のシンガーソングライターSIRUP。かつて『exPoP!!!!!』にも出演しているshowmoreの井上惇志(Key)を含む3名のバンドメンバーを従えてステージ中央に登場したSIRUP。彼のにこやかで、自然体で、しかし威風堂々とした佇まいは、早くもスターのような風格を漂わせている。

SIRUP

SIRUP

サウンドは、エレクトロニックでモダンな質感とオーセンティックなソウルの温もりが絶妙に交錯したR&B / HIPHOPサウンド。1曲目“Synapse”から、ダンサブルなビート、アップリフティングなメロディー、そしてSIRUPの歌声と存在感で、熱気は一気に高まっていく。

SIRUP

SIRUP

私は前方のフロアで観ていたのだが、空間全体に「踊らずにはいられない!」という高揚した空気感が立ち込めていたのが、とても刺激的だった。そこにあったのは、「踊りやすいビートがある」とか、「歌いやすいメロがある」とか、そんなレベルの表現では生み出しえない熱狂だ。「いま、この瞬間」を捉えた音楽だけが生み出せる、空間そのものを掌握するような熱狂が、そこには生まれているように感じた。この日の前日に配信リリースされたばかりの“Do Well”も披露。みんな、本当に楽しそうだった。

SIRUP

この日の『exPoP!!!!!』に出演した5組は、「いい曲を作り、いい演奏をし、いい歌を歌う」というとてもシンプルなポイントに真正面から向き合い、音楽を真摯に届けようとしている面々のように感じられた。いい音楽は、いい。そんな当たり前だけど本当に特別なことを、友達や恋人に呟きたくなるような夜だった。

Amber’s
Amber’s

FALSETTOS
FALSETTOS

古川麦
古川麦

Michael Kaneko
Michael Kaneko

SIRUP
SIRUP

イベント情報

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume111』

2018年7月19日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
Amber's
FALSETTOS
古川麦
Michael Kaneko
SIRUP
料金:無料(2ドリンク別)

『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume113』

2018年9月27日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest

出演:
THREE1989
STEPHENSMITH
ペンギンラッシュ
ディープファン君
and more!!!!!
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール

Amber's(あんばーず)

ロードムービーのように展開するメロディと言葉。柔らかさと鋭さが絡み合うアンビエントロック。豊島こうき(Vo,Gt)、福島拓人(Gt)の2人ユニット「Amber's」。

FALSETTOS(ふぁるせっつ)

東京を中心に活動する4ピースバンド。2015年、楽曲「Ink」が坂本龍一のラジオ番組「RADIO SAKAMOTO」(J-WAVE)のオーディショ ンコーナーで年間優秀作を受賞。2016年はNYツアーを実施し、Brian Chase (Yeah Yeah Yeahs) などと共演。2018年2月2日、初のオフィシャル・リリースである1stアルバム『FALSETTOS』をリリース。アルバム収録曲『6』が、テレビ東京『モヤモヤさまぁ~ず2』のエンティングテーマ(2018年1月~3月)に選曲。2018年2月2日~の一週間、アルバムがApple Musicの『今週のNEW ARTIST』で取り上げられた。『ミュージックマガジン』(2018年3月号)、『MUSICA』(2018年2月号)ほか、ディスクレビュー掲載多数。

古川麦(ふるかわ ばく)

1984年8月27日カリフォルニア生まれ。日本、オーストラリアで育つ。シンガー、ギタリストとしてソロで活躍する他、ceroではトランペットとコーラスを担当し多数のライブ・録音に参加。表現(Hyogen)、Doppelzimmer、あだち麗三郎クワルテットのメンバー。日本国内にとどまらず、台湾など、海外でのライブも多数。どのジャンルの枠にも収まらない唯一無二の凝った楽曲センス、確かな演奏技術、温かみのある歌声で、多くの人を魅了している。2014年10月初のソロアルバム"far/close"発売。2016年9月に7inch"Seven Colors"をカクバリズムよりリリース。2018年3月2ndアルバム『シースケープ』をP-VINEよりリリース。東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科卒。

Michael Kaneko(まいける かねこ)

湘南生まれ、南カリフォルニア育ちの日本人シンガーソングライター。ウィスパーながらも芯のあるシルキーヴォイスが話題となり、デビュー前にもかかわらずその声は5,000万人に届くことに。2017年『Westbound EP』をリリース、活躍の場を世界規模で広げている。

SIRUP(しらっぷ)

大阪出身のシンガーソングライターKYOtaroによるニュープロジェクト「SIRUP(シラップ)」。このプロジェクトでは、ルーツであるR&B/ソウル、HIPHOPなどのブラックミュージックをベースにジャンルを超えて様々なクリエイターとコラボし、新しいものを生み出していく。その変幻自在なボーカルスタイル、五感を刺激するグルーヴィーなサウンド、そして個性的な歌詞の世界観でリスナーを魅了する。SIRUPは、Sing & Rapからなる造語。

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