特集 PR

ジョン・マエダや福岡伸一が登壇『NSK Future Forum 3』レポート

NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3
テキスト
内田伸一
撮影:杉能信介 編集:宮原朋之(CINRA.NET編集部)
ジョン・マエダや福岡伸一が登壇『NSK Future Forum 3』レポート

3人の気鋭アーティストが語る「SENSE OF MOTION」

第2部は、荒牧悠、市原えつこ、和田永という気鋭アーティスト3名によるディスカッション。それぞれ、このフォーラムに先立ってNSKの技術部門を訪問もした彼らが、フォーラムのテーマに沿いつつ自らの現在とこれからを語った。

荒牧は、チタニウム製ワイヤーや特殊紙など素材の特質を活かした「動き」を生む作品や、木板に部分的にペイントすることで「図と地」の関係が逆転する作品などで、ものの仕組みやそれに対する人の認知をユーモラスにあつかう。「(対象の)機構を活かしたり、強調したりすることから作品が生まれることが多い」という。それらは繊細ながら明確な機能をもたず、本フォーラムのテーマ「不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ」にも通じるものを感じさせる。

荒牧悠
荒牧悠

メディアアーティストの市原は、祖母の死を機に取り組んだ『デジタルシャーマン・プロジェクト』で広く注目された。これは故人をロボットに「憑依」させ、共に四十九日まで過ごせるというもの。会場では同作のほか、東北のなまはげ文化を現代の東京に移植する妄想映像作品『都市のナマハゲ』などを紹介。自らの創作の特徴を「日本の民間信仰をテクノロジーと組み合わせる」ものだと説明した。初期の奇作『セクハラ・インターフェース』も、性信仰への関心という点で今のアプローチとつながるようだ。そこには、心や感情の「動き」をあつかう視点も見いだせる。

市原えつこ
市原えつこ

和田は、旧式のオープンリール型テープレコーダーを楽器として奏でる「Open Reel Ensemble」などで知られるアーティスト / ミュージシャン。近年は、古い電化製品を楽器化した電磁盆踊り「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」など、活動のスケールを広げる。「江戸時代には、捨てられた傘や桶が妖怪になるイメージがありました。それなら現代の妖怪は、廃棄された電化製品では? という妄想が脳内でスパークした」という和田は、その先に家電妖怪の「供養」と都市の新たな土着音楽というイメージを膨らませた。彼の表現は、音と動き、時間と空間が一体化するパフォーマティブな面も大きな特徴だ。

和田永
和田永

工業製品とアート。対照的な組み合わせから、新たな表現が生まれる

ディスカッションでは編集家の紫牟田伸子を司会に迎え、事前にNSK社を訪問、見学してきた3作家が、そこから得たインスピレーションについても語った。

荒牧:現場で見せてもらった「ボールねじ」や「リニアガイド」という製品が、(空手の)寸止めのようにシュッ、シュッという正確で機敏な平行運動を生んでいて、これで「波」のような動きが生み出せないかなと想像しました。また、大量に並べて一斉に動かすことで群舞を見ているような感じになるかな、とも思いました。

市川:ベアリング製造をベースに、モビリティロボット開発などの先端研究もしているのが面白かったです。想定用途は視覚障害者の方々のためのようですが、あれをもし私の考える祭りや行進にもお借りできたら……という妄想が。また、ジョイスティックで動物の人工授精レベルの繊細な動きもできるのを知り、こうしたことが簡単にできる時代がきたとき、倫理面も含め人間はどう行動するべきかなど、いろいろ考えるきっかけにもなりました。

和田:NSKの工場を見て実感したのは、人類は回転と共に生きていくのだなということ。水車も風車もそうだし、ベアリングはそうした回転の摩擦をなくし、別の運動に変換するわけですよね。摩擦を究極的に減らせるところまできた結果、摩擦音で演奏するオルゴール作品まで作ってしまったのも面白い。

僕は扇風機も楽器にしていて、回転によって音を出すのが夢なんです。時間を表現するのは弦楽器、管楽器ではなく「回転楽器」だなと思ったり。どこかに回転音楽崇拝の村があったとして、そこでは舞台も客席も回転できて……。

左から:中谷日出、荒牧悠、市原えつこ、和田永、紫牟田伸子
左から:中谷日出、荒牧悠、市原えつこ、和田永、紫牟田伸子

会場にいたNSK社長ほかの経営陣は、温かな笑顔でこうしたアーティストの妄想、もとい想像に耳を傾けていた。NSKはこれまで、アーティストがベアリングを取り入れた作品による展覧会もスパイラルで開いており、過去には名和晃平(2006年)や、ライゾマティクスリサーチ(2016年)らが参加している。「確かさ」を追求する工業製品と、「不確かさ」のなかにも創造性を見つけ出すアートや人間らしさの世界。この対照的な組み合わせが、また新たな表現への「動き」につながることを期待したい。本フォーラムは、来年以降も継続的に開催する予定だ。

Page 3
前へ

イベント情報

『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』
『NSK VISION 2026 Project:SENSE OF MOTION-Future Forum 3 不確かなものが生む、あたらしい動き。決め切らない発想から生まれるクリエイティビティ』

2018年11月10日(土)
会場:東京都 表参道 スパイラルホール
出演:
ジョン・マエダ
福岡伸一
荒牧悠
市原えつこ
和田永
中谷日出
紫牟田伸子

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

あらかじめ決められた恋人たちへ“日々feat.アフロ”

何かを我慢することに慣れすぎて忘れてしまいそうになっている「感情」を、たった10分でこじ開けてしまう魔法のようなミュージックビデオ。現在地を確かめながらも、徐々に感情を回転させていくアフロの言葉とあら恋の音。人を傷つけるのではなく、慈しみ輝かせるためのエモーションが天井知らずの勢いで駆け上がっていった先に待ち構えている景色が、普段とは違ったものに見える。これが芸術の力だと言わんばかりに、潔く堂々と振り切っていて気持ちがいい。柴田剛監督のもと、タイコウクニヨシの写真と佐伯龍蔵の映像にも注目。(柏井)

  1. ドラマ『ここぼく』が描いた日本社会のいま。危機感と真実の追及 1

    ドラマ『ここぼく』が描いた日本社会のいま。危機感と真実の追及

  2. 佐藤健とシム・ウンギョンが共演 サントリーウイスキー「知多」新動画 2

    佐藤健とシム・ウンギョンが共演 サントリーウイスキー「知多」新動画

  3. 記録映画『東京オリンピック2017』に七尾旅人らがコメント ポスター到着 3

    記録映画『東京オリンピック2017』に七尾旅人らがコメント ポスター到着

  4. スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士 4

    スチャとネバヤン、同じ電波をキャッチしちゃった似た者同士

  5. 羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う 5

    羊文学を形づくる「音」 6つの日本語曲を選んで3人で語り合う

  6. 坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ 6

    坂口恭平が語る「死なないという勝ち方」。画狂老人・北斎に学ぶ

  7. ジム・ジャームッシュ特集上映ポスター&チラシ12種、大島依提亜がデザイン 7

    ジム・ジャームッシュ特集上映ポスター&チラシ12種、大島依提亜がデザイン

  8. 青春音楽映画『ショック・ドゥ・フューチャー』予告編、石野卓球らコメント 8

    青春音楽映画『ショック・ドゥ・フューチャー』予告編、石野卓球らコメント

  9. 自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語 9

    自己不信や周囲の目にどう向き合う? 女性アスリートの6篇の物語

  10. ちゃんみなが経験した、容姿に基づく中傷と賛美 自らラップで切る 10

    ちゃんみなが経験した、容姿に基づく中傷と賛美 自らラップで切る