レポート

全国から苫小牧へ NOT WONKの意思に呼応した同志たちの熱狂

テキスト
石井恵梨子
撮影:桑島智輝 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)
2019/12/23
全国から苫小牧へ NOT WONKの意思に呼応した同志たちの熱狂

NOT WONKの本拠地「苫小牧」で始まった特別な一日

苫小牧でNOT WONKのワンマン『YOUR NAME』を見た。いや、「見た」という言葉がどうもしっくり来ない。最初こそ「見に行く」つもりだった。でも今となってはこう書くしかない。「見てしまった」と。

新千歳空港から約30分、想像以上に小さな街だった。駅前は閑散としており、北口にメガドンキが一軒、南口には廃墟となったショッピングセンターに侵入禁止の囲いが巡らせてある。数軒のビジネスホテル、王子製紙の巨大工場、そこからにゅっと生えている煙突以外、目につくものが本当に何もない。駅前を歩く人にもほとんど会わないから、ライブハウスELLCUBE前に10人ほどが集まっているのを見れば、それはもう十分な「人だかり」である。開場時間の少し前、11:50に加藤修平がひょっこり出てきて「オープンしまーす」と宣言するところから、この特別な一日は始まった。

加藤修平(NOT WONK)
加藤修平(NOT WONK)

いかにして『YOUR NAME』は生まれたのか。詳しくは加藤が7月にブログで発表したステートメントに譲るが、チケット250枚を自分たちで用意すると宣言し、瞬発力ひとつで共演バンドを募ってみれば、全国から24アクトが揃っていた。

NOT WONKがツイートしたステートメント

その意気や良しと挙手した先輩ミュージシャンがいれば、居ても立ってもいられなかった同世代や後輩バンドも多数いるだろう。脱兎と名乗る仙台の若者に至っては「この日のためにバンド組みます!」とメールを寄せ、本当にメンバーを集めて記念すべき初ライブをやってみせた。NOT WONKの音楽と存在とが、全国に点在する若き魂に火を点けたのだ。

ワンマン前のオープンステージがスタート

正午ちょうど、札幌のパンクバンドDr.NY(ドクター・ニューヨーク)がいきなり全裸でのフロアライブを開始。2曲が終わった段階でパフォーマーの塚原がThe Clashのジャケットよろしくギターを破壊! 何がなんだかわからないがドアタマから最高のテンションで幕が上がる。ひとバンドの持ち時間は15分。演奏中も隣で次の演者がセッティングを始めており、Dr.NYが終わった直後からcult grass starsが不穏なポストハードコアをぶっ放す。彼らは根室を拠点に活動し、「NOT WONKがいなければ今の僕らはいない」と公言している10代のトリオ。その音には1980年末期から連綿と続いてきた道産オルタナティブの血が感じられる。

続くHue'sは大阪の4人組。苫小牧はもとより北海道ライブが初めてだそうで、ボーカルがVOIDのTシャツを着ているのは気合の表れと見た。その後の出演者も、envyだったりFOULだったり、着用Tシャツを見ているだけで目が楽しくてしょうがない。断っておくが、これはオッサンたちの同窓会ではないのである。みんな現在進行系で追いかけている。ファズを踏む瞬間の快感、せーので爆音を鳴らすバンドの醍醐味を。「サブスクの時代にギターの音は敬遠され……」みたいな話は東京で勝手にどうぞ、こちらは楽しくやってますよ、という感じなのだ。

重要なのは、こっちで中指立ててやる、のニュアンスがないことだ。これは加藤修平の言動や物腰に拠るところが大きいのだが、入り口で初対面の客と談笑している彼は、少し芯が強そうだな、という以外はごく普通の青年に見える。少なくともエキセントリックだとかチンピラだとか、そんな形容詞がまったく似合わない。「パンクとは真面目に生きること」だと以前話してくれたように、彼の行動にアンチから始まるものは少ない。ただスッと前を向き、どうすればより良く生きられるのかを自問するだけ。そして出した答えは直接ジャッジしてもらう。そんな意識の在り方が実に2019年らしい。

GEZANが仲間たちと『全感覚祭』をブチ上げたのとは別のベクトルで、『YOUR NAME』が全国から苫小牧に人を集めてみせた。カメラマン桑島智輝を筆頭に、個人が勝手に作ってきたファンジンが並ぶのも今の時代だ。メディアが取り上げないなら個人でやる。義務でも使命でも連帯でもないから、それぞれの取捨選択が際立つのだ。

加藤修平(NOT WONK)
加藤修平(NOT WONK)
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イベント情報

『NOT WONK presents “Your Name” one man show』
『NOT WONK presents “Your Name” one man show』

2019年12月7日(土)OPEN 12:00 START 19:00
会場:苫小牧ELLCUBE
料金:3,000円(ドリンク別)

出演:NOT WONK
オープンステージ企画出演者(順不同):
Gotch
Discharming man
突然少年
やっほー
TIMELY ERROR
The Triops
SUP
インディーガール
まえだゆりな
BANGLANG
INViSBL
ザ・ジラフス
脱兎
Hue's
SEAPOOL
And Summer Club
LADALES
JEEP
The Big Mouth
cult grass stars
zo-sun park
Dr.NY
MAPPY
大久保光涼

『NOT WONK presents “BIPOLAR” ONEMAN』
『NOT WONK presents “BIPOLAR” ONEMAN』

2020年5月2日(土)OPEN 18:00 START 19:00
渋谷CLUB QUATTRO
料金:前売 3,000円(ドリンク別) / 当日 3,500円(ドリンク別)

オフィシャル最速先行受付:12/23(月)12:00~1/6(月)23:59
受付期間:2019/12/23(月)12:00~2020/1/19(日)23:59
枚数制限:お1人様 4枚まで申し込み可

プロフィール

NOT WONK
NOT WONK(のっと うぉんく)

shuhei kato、kohei fujii、akim chanからなる北海道・苫小牧出身の3ピース。2015年5月に『Laughing Nerds And A Wallflower』でデビューし、新人なら驚異的なセールスを記録。2016年には2ndアルバム『This Ordinary』をリリース、続けて放たれた『Penfield』では、パンクとオルタナティブロック、ネオソウルまでを一気に消化した新たな音像を提示した。2019年には東京での初ワンマンを成功させ6月には待望の3rdアルバム『Down the Valley』をリリース。

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