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夏目知幸が振り返る、レーベル設立とバンドにとって苦難の時期

『シャムキャッツ・夏目知幸が送る 10年分の歌とことば』
テキスト
渡辺裕也
撮影:小河原万里花 編集:川浦慧(CINRA.NET編集部)
夏目知幸が振り返る、レーベル設立とバンドにとって苦難の時期

僕らは友達として作品を作る関係性ではなくなってたけど、もう一度そういう雰囲気にならないかーーそういうメッセージを渡したかった。

―自分たちのストロングポイントをもういちど見直す時期に来たと。そこで完成したアルバムが『Friends Again』(2017年)。何よりもこのタイトルが象徴的ですよね。

夏目:新作のコンセプトをバンドに持ち込むのって、僕はメンバーへのちょっとしたプレゼントだと思ってるんです。僕らは自主レーベルという道を選んで、ただ友達としてわちゃわちゃ作品を作る関係性ではなくなってたけど、もう一度そういう雰囲気にならないかーーそういうメッセージをメンバーに渡したいなって。

シャムキャッツ『Friends Again』ジャケット
シャムキャッツ『Friends Again』ジャケット
シャムキャッツ『Friends Again』を聴く(Apple Musicはこちら

―『Friends Again』は、菅原くんがソングライターとして覚醒した作品でもありますよね。

夏目:『Friends Again』を作ったときは、あらためて思いましたね。この4人はひとつの目標に向かって行くときの力が本当に強いなって。俺がルールみたいなものをひとつ提示して、菅原がそこから逸脱したものを作ってくる。そうなっていくと作品がどんどん芳醇になっていくんです。

それこそ菅原が“Riviera”を持ってきたときは、もうバッチリだと思いましたね。“Riviera”は改装中のマンション、そして僕が書いた“花草”にはマンションの屋上がでてくる。さらに“Riviera”では<神様にお願いした>と歌ってるんだけど、一方で僕の書いた“Coyote”では<とりとめのない景色に神様は似合わない>と歌ってて。これはめちゃくちゃいいアルバムになると思いました。

―同じような情景を舞台としながら、主体となるキャラクターはそれぞれ異なる感情を抱いていると。

夏目:そうそう。というのも、この頃のシャムキャッツがテーマとして掲げていたことのひとつが「アンビバレント」だったんです。なにかひとつの事象が起きたときに、自分のなかでそれと背中合わせの感情が生まれる。

たとえば、友達から子供が産まれたと連絡がきて、めちゃくちゃ嬉しい。でも、なんか置いてかれた気がして寂しい、みたいな。今の俺らにとってはそういうアンビバレントな感情がリアルなんじゃないかって。『Friends Again』の歌詞はそれが自然にできてるんですよね。

夏目知幸

身の回りもそうだし、バンドメンバーにも「大丈夫」が足りてない感じがしてたんです。

―“花草”“台北”には、東アジアへと活動範囲を拡げ始めていたバンドの状況も表れていますよね。

夏目:いろいろゴタゴタはありつつ、当時の僕らは韓国と台湾に行くチャンスを得ることができて、そこですごくいいパフォーマンスができたんです。で、そのときに感じた「俺ら、ぜんぜんイケるじゃん!」みたいなウキウキした気持ちをそのまま曲にしたのが“台北”。

シャムキャッツ“台北”を聴く(Apple Musicはこちら

夏目:“花草”に関していうと、台湾ではインディポップのことを花草系というらしくて。それってめっちゃいいなと。日本だとインディって2軍みたいなイメージを抱かれがちだからイヤなんだけど、花草系と言われたら、「ええその通りです」みたいな(笑)。

で、これはほぼネタバレになっちゃうんだけど、この曲はRCサクセションの“トランジスタ・ラジオ”がヒントになってるんです。それこそ屋上ソングのナンバー1といえば、“トランジスタ・ラジオ”ですからね。

シャムキャッツ“花草”を聴く(Apple Musicはこちら

―どうヒントになったのか、もう少し噛み砕いて教えてもらってもいいですか?

夏目:“トランジスタ・ラジオ”って、要は自分が暮らしている街のブルースみたいな曲なんですよね。彼は退屈な授業を抜け出して屋上で煙草を吸っている。ラジオから流れてくる海外の音楽に救われていて、彼はそれを誰とも共有できない。そして、彼の好きなひとはいま教室で授業を受けてる。そこで<あぁ こんな気持ちうまく言えたことがない>っていう。

RCサクセション“トランジスタ・ラジオ”を聴く(Apple Musicはこちら

―“花草”の歌詞はそこのオマージュだったんですね。

夏目:うん。多分どの時代にも“トランジスタ・ラジオ”の彼とおなじ気持ちになる少年はいると思うんです。だから僕も“トランジスタ・ラジオ”の主人公みたいな少年に勇気を与えたかったというか、屋上に花でも咲いてたらいいかなって。

あと、これも台湾と韓国でライブをしたときにわかったことなんですけど、「大丈夫」という言葉ってすごく便利なんですよね。「大丈夫」は韓国だと「ケンチャナ」、台湾だと「メイクワンシィー」というんですけど、この言葉を言うだけで、相手にすこし安心してもらえる感じがあって。それから僕のなかで「大丈夫」という言葉がすごく強いものになったんです。なので、“Coyote”という曲ではとにかく「大丈夫」と歌いたかった。あの曲のストーリーは「大丈夫」で締めくくりたいなって。

―というのは?

夏目:身の回りもそうだし、バンドメンバーにも「大丈夫」が足りてない感じがしてたんです。なんとなくね。いや、自分がそう言ってほしかっただけなのかな。大丈夫って。

―いずれにせよ、東アジアとの交流が生まれたことで、夏目くんの視点はあきらかにひろがったようですね。

夏目:うん。やっぱり環境って大事ですよ。むしろ、なにかを変えるなら環境しかないんだなって。環境が変われば、自分は絶対に変わりますからね。

『シャムキャッツ・夏目知幸が送る 10年分の歌とことば』
『シャムキャッツ・夏目知幸が送る 10年分の歌とことば』
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イベント情報

『第3回 シャムキャッツ・夏目知幸が送る 10年分の歌とことば』
『第3回 シャムキャッツ・夏目知幸が送る 10年分の歌とことば』

2019年11月16日(土)
会場:東京都 渋谷ヒカリエ 8 / MADO
登壇:
夏目知幸
渡辺裕也

リリース情報

シャムキャッツ『はなたば』
シャムキャッツ
『はなたば』(CD+DVD)

2019年11月6日(水)発売
価格:2,420円(税込)
TETRA-1018

[CD]
1. おくまんこうねん
2. Catcher
3. かわいいコックさん
4. はなたば ~セールスマンの失恋~
5. 我来了

[DVD]
『バンドの毎日4』

シャムキャッツ『はなたば』
シャムキャッツ
『はなたば』(LP)

2019年11月20日(水)発売
価格:2,750円(税込)
TETRA-1019

1. おくまんこうねん
2. Catcher
3. かわいいコックさん
4. はなたば ~セールスマンの失恋~
5. 我来了

プロフィール

夏目知幸
夏目知幸(なつめ ともゆき)

東京を中心に活動するオルタナティブギターポップバンドシャムキャッツのボーカル、ギター、作詞作曲。2016年、自主レーベル〈TETRA RECORDS〉を設立し、リリースやマネジメントも自身で行なっている。近年はタイ、中国、台湾などアジア圏でのライブも積極的。個人では弾き語り、楽曲提供、DJ、執筆など。

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