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阿部真央が歌い続けてきた「寂しさ」が、今、生々しく突き刺さる

UNITED FOR MUSIC
テキスト
天野史彬
撮影:笹森健一 編集:柏井万作(CINRA.NET編集長)
阿部真央が歌い続けてきた「寂しさ」が、今、生々しく突き刺さる

自分を愛し、他者を愛すること――彼女は誰よりも深く、それを悩み続けることを覚悟しているように思える。その弱さと強さに聴き惚れる1時間

8月5日、シンガーソングライターの阿部真央が、ライブハウス「Shibuya WWW」にて無観客生配信ライブを開催した。この生配信ライブは、スペースシャワー、J-WAVE、CINRAの3団体が共同で立ち上げた「UNITED FOR MUSIC」プロジェクトの一環として行われたもので、オンラインチケットは前売り2,000円、当日2,500円でイープラスにて販売された。その売り上げはそれぞれの立場へのギャランティ含むライブ制作経費に充てられ、残った金額は、新型コロナウイルスの影響によって仕事を失ったライブハウス、アーティストやコンサートのスタッフ、収録スタッフといった人々に還元していくための、ライブエンタメ従事者支援基金「Music Cross Aid」へ支援金として寄付される。

UNITED FOR MUSICのロゴ
UNITED FOR MUSICのロゴ(オフィシャルサイトはこちら

この「UNITED FOR MUSIC」による生配信ライブは、これまでアルカラ、9mm Parabellum Bulletとバンドアクトが続いてきただけに、ステージでひとり、ギターの弾き語りでパフォーマンスを行った阿部真央の姿は新鮮にも映ったし、また、この日の彼女はソロアクトであるからこそ如実に表現し得る、「個」の内側に潜む多様な表情を……もっと簡単に言ってしまえば、「ひとりの人間が生きるっていうことは、とんでもなく複雑で、一筋縄じゃいかなくて、だからこそ尊いんだ」ということを、見事に音楽を通して描き伝えていた。約60分間のステージング、演奏されたのは8曲と通常のワンマン公演に比べれば決してボリュームの大きなライブではなかったが、しかし、それでも十分に阿部真央というシンガーソングライターの才気を感じることができるライブだった。

阿部真央(あべ まお)<br>2009年1月21日、アルバム『ふりぃ』でデビュー。等身大でリアルのみを綴った歌詞と、バラエティに富んだ楽曲毎に変化する、表現力豊かなボーカライゼーションは高く評価され、同世代の女性を中心に幅広い層からの支持を得るシンガーソングライター。2019年1月21日にデビュー10周年を迎え、1月22日には日本武道館、1月27日には初の関西アリーナ公演となる神戸ワールド記念ホールにて『らいぶ No.8~10th Anniversary Special』を開催。また1月23日にはキャリア初となるベストアルバム『阿部真央ベスト』を発売し、オリコンウィークリーチャート初登場9位を記録した。2020年1月には最新アルバム『まだいけます』を発売。8月12日には配信シングル『Be My Love』をリリースする。
阿部真央(あべ まお)
2009年1月21日、アルバム『ふりぃ』でデビュー。等身大でリアルのみを綴った歌詞と、バラエティに富んだ楽曲毎に変化する、表現力豊かなボーカライゼーションは高く評価され、同世代の女性を中心に幅広い層からの支持を得るシンガーソングライター。2019年1月21日にデビュー10周年を迎え、1月22日には日本武道館、1月27日には初の関西アリーナ公演となる神戸ワールド記念ホールにて『らいぶ No.8~10th Anniversary Special』を開催。また1月23日にはキャリア初となるベストアルバム『阿部真央ベスト』を発売し、オリコンウィークリーチャート初登場9位を記録した。2020年1月には最新アルバム『まだいけます』を発売。8月12日には配信シングル『Be My Love』をリリースする。

冒頭を飾った“ロンリー”では、<電話じゃもう足りない もう限界 / 今 会いたい 貴方に>と歌い、ライブ最後のアンコールで演奏された“I wanna see you”では、<ただ会いたくなった / それだけで乗り込んだバス / この気持ちに理由なんてないのさ>と歌う。この日のセットリストの軸にあったのはやはり、阿部真央の楽曲が普遍的に根を張っている「寂しさ」や「孤独感」だったが、しかし、その多くが恋愛における心象風景として表現されながらも、コロナ禍で簡単に人と出会うことができなくなったソーシャルディスタンシングな生活者たちの、あらゆる場面での孤独な感情に、その楽曲たちはフィットしていたのではないかと思う。

阿部真央

阿部真央がずっと歌い続けてきた「寂しさ」は、「彼女はずっと、今の僕らの気持ちを歌っていたんじゃないか」と思うくらい、2020年の「今、この瞬間」に対して生々しかった。「会えない」「だから、会いたい」「だけど、会えない」……この右往左往する気持ちは、今、生活の中のあらゆる場面にとても濃い色味で浸透していて、だからこそステージでひとり、ずっとそれを歌い続けてきた阿部真央の凛とした姿が美しく映える。

 
 

孤独、という人間存在の軸を歌いながら、そのなかにある多面的な在りようを表現し得るのも、阿部真央という表現者の強みだ。8月12日に配信リリースとなる新曲“Be My Love”では淡い想いをスケールの大きなメロディと共に威風堂々と歌い上げ、かと思えば、“まだいけます”では力強くカメラを睨むような鋭い眼光でワイルドな姿を見せ、かと思えば、“貴方の恋人になりたいのです”では今にも壊れてしまいそうなほどの繊細な心情を歌声に託し、かと思えば、“Believe in yourself”ではメッセンジャーとして画面越しのリスナーたちを鼓舞し、かと思えば、“ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~”では、狂気的とも思える恋愛感情を臆面もなく歌いあげる……その表現力の多彩さに圧倒される。

阿部真央

人はみんなバラバラだが、それだけでなく、ひとりの人間の内側にも、バラバラな感情や表情がある。誰もが明るくもあれば暗くもあるし、男っぽくもあれば女っぽくもある。誰もが「僕」「私」「あたし」「俺」「お前」「貴方」「君」……そんな様々な一人称や二人称によって自分を語り、誰かに語られる。そんな、複雑怪奇な「個人」という存在、そこにある多種多様な在りようを受け入れながら、自分もまた「個人」として表現をし続けるシンガーソングライター・阿部真央の芯がよくわかるステージングだった。

阿部真央

また印象的だったのは、この日のライブはMC中に、iPadを通して事前にTwitter上で募集されたファンからのメッセージを読み上げたり、またライブ中にリアルタイムで寄せられるコメントに反応したりと生配信ならではのコミュニケーションを行いながら進行していたのだが、その中で、リアルタイムに流れてきた自身の体形に対するコメントに関して阿部真央が語った言葉だった。

阿部真央

阿部:私、2019年の頭くらいには痩せていたんですけど、今は、ちょっと太っているんです。でも、歌ってある程度体重があるとすごく声が出るんだよね。もちろん細くてパワフルな声を出せる人もいるけど、私は個人的に、歌を優先するのなら、不健康にガリガリになっちゃいけないなと思います。もちろん、今日のライブや撮影のために今もある程度は絞っているけど、どんな形であれ、自信を持っていたいわけ。前までは、ちょっと太ったら「どうしよう~」と思っていたけど、「太った」とか「痩せた」ということでは、誰の価値も変わらない。結局、どういう心持ちで本人が生きていくか、そして、どれくらい自分に自信を持っているか……それは、命レベルで。伝わらなかったら別にいいんだけど、同じようなことで悩んでいる人がいたら、伝えたかったです。私がずっとそれで悩んできたので。でも、もう吹っ切れたので、わりと平気です。太っていても痩せていても、愛して、私を(笑)。私もあなたを愛しています、どんな形になろうと。

自分を愛し、他者を愛すること――シンプルで、しかし、誰もが延々と悩み続けるそのことについて。阿部真央の音楽を聴くと、彼女は誰よりも深く、それを悩み続けることを覚悟しているように思える。その弱さと強さに聴き惚れる1時間だった。

阿部真央

イベント情報

『UNITED FOR MUSIC-Live 60- 阿部真央』
『UNITED FOR MUSIC-Live 60- 阿部真央』

2020年8月5日(水)
料金:前売2,000円 当日2,500円

※2020/8/11(火)18:00までアーカイブが視聴可能

プロフィール

阿部真央(あべ まお)

2009年1月21日、アルバム『ふりぃ』でデビュー。等身大でリアルのみを綴った歌詞と、バラエティに富んだ楽曲毎に変化する、表現力豊かなヴォーカライゼーションは高く評価され、同世代の女性を中心に幅広い層からの支持を得るシンガーソングライター。デビューイヤーから夏フェスの大舞台でのライブに出演し、その圧倒的な存在感をともなったライブパフォーマンスも高く評価される。2019年1月21日にデビュー10周年を迎え、1月22日には日本武道館、1月27日には初の関西アリーナ公演となる神戸ワールド記念ホールにて「らいぶ No.8~10th Anniversary Special」を開催。また1月23日にはキャリア初となるベストアルバム『阿部真央ベスト』を発売し、オリコンウィークリーチャート初登場9位を記録した。2020年1月には最新アルバム「まだいけます」を発売。8月12日には配信シングル「Be My Love」をリリースする。

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