レビュー

豪華海外アクトを迎えた「90年代感」が新しい、『StarFes.'14』が気づかせてくれたこと

伊藤大輔
2014/10/02
豪華海外アクトを迎えた「90年代感」が新しい、『StarFes.'14』が気づかせてくれたこと

「1990年代感」が個性になっている『StarFes.』

夏の間、毎週末のように開催される音楽フェスティバル。フェスの飽和期を過ぎた現在、イベント自体に確固たる個性が求められるようになっている。今回レポートする『StarFes.』は、2012年より開催されている新しいフェスで、「1990年代」を感じさせるアーティストラインナップが個性となっているフェスだ。例えば今年であればOutkastが再結成し各国のフェスのヘッドライナーを飾ったりと、90年代リバイバルは今のトレンドといってもいいだろう。『StarFes.』はそんな現在の潮流をしっかりと掴み、これまでにThe Orb(彼らは80年代もカブるが)やUNKLE、System 7といったダンスミュージック系アクトを呼んでいる。

そんな『StarFes.』は今年より、VICE Japanが主催することになった。VICEは世界中に支部を持ち、アンダーグラウンドなストリートカルチャーを中心に扱うデジタルメディアということもあって、今年の『StarFes.』はロックフェスとダンスミュージックフェスの中間を行く、「ストリート感」が強まった印象だ。何と言ってもその目玉は、メインステージに登場したエリカ・バドゥとNASで、どちらも90年代に黄金期を迎えたUSヒップホップ / R&Bシーンを代表するアーティストである。そしてDJ陣がラインナップされたStarFloorにはダディ・G(Massive Attack)やマーク・ファリナ、石野卓球が出演し、スペシャルステージにはBOREDOMSと、どこを切っても90年代的な匂いを感じるラインナップと言える。

『StarFes.'14』会場風景
『StarFes.'14』会場風景

VICE Japanが求める日本のストリート感覚とは?

それにしてもなぜ『StarFes.'14』はここまで「90年代」という時代感が出たのか……? その理由はVICE Japanが求めるストリート感覚が、90年代的なセンスで構築されているからだろう。出演した国内アーティストを例に挙げると、朝イチで登場したBOREDOMS。山塚アイが複数のドラムやギター、ベースを用いて生み出すオーケストレーションのサイケデリックな陶酔感は、90年代のレイヴ / ダンスカルチャーを通過した世代ならではのものだし、その後メインステージのStarArenaに登場したZAZEN BOYSのプログレッシブロックやニューウェイヴを行き来する切れ味の鋭い演奏も、90年代から日本のオルタナロックをリードしてきた向井秀徳の説得力あってこその表現だった。

ZAZEN BOYS(撮影:Masato Yokoyama)
ZAZEN BOYS(撮影:Masato Yokoyama)

そしてVICE Japanが求めるストリート感覚の最たる例は、DJ KRUSHだろう。日本のヒップホップシーンの黎明期より活動し、現在は世界的なアーティストでもある彼がターンテーブルから放つ、ズシンと頭を揺さぶるオリジナリティー溢れたビートは、まさに日本発のストリートミュージックを体現していた。

DJ KRUSH(撮影:Masato Yokoyama)
DJ KRUSH(撮影:Masato Yokoyama)

『StarFes.'14』を盛り上げた豪華海外アクト

海外勢に目を移すと、エリカ・バドゥとNASはお互いに90年代にリリースしたデビュー作が大ヒットしたという意味でも共通点のあるアーティストだ。4年ぶりの来日となったエリカ・バドゥは気鋭のベーシスト「Thundercat」を擁したフルバンドセットで、ジャズ~ヒップホップを織り交ぜたグルーヴィーなサウンドと、鼻にかかるような艶やかな歌でオーディエンスを魅了した。

エリカ・バドゥ(撮影:Atsuko Tanaka)
エリカ・バドゥ(撮影:Atsuko Tanaka)

その一方、NASは94年にリリースされた彼のデビュー盤にしてヒップホップ史に残る傑作『illmatic』の再現ライブを敢行。中でも“It Ain't Hard To Tell”では、サンプルネタでもあるマイケル・ジャクソンの“Human Nature”をイントロでかけたりと、90年代らしい大胆なサンプリングを用いたヒップホップクラシックのオンパレードで、そのパフォーマンスは『StarFes.'14』のトリを飾るにふさわしいものだった。

NAS(撮影:Masato Yokoyama)
NAS(撮影:Masato Yokoyama)

他にも反体制的なメッセージを掲げるPUBLIC ENEMYも素晴らしいものだった。権力と戦うことを歌った“Fight The Power”などは、東日本大震災以降の日本に住む者にとって、これまでと違った意味で心に刻み込まれたはずだし、ファンクやロックをゴッタ煮にしたパワフルなバンドスタイルのステージングは、『StarFes.'14』の一番の盛り上がりを見せていた。

PUBLIC ENEMY(撮影:Atsuko Tanaka)
PUBLIC ENEMY(撮影:Atsuko Tanaka)

また、ダンス系アクトが揃ったStarFloorでは、90年代よりサンフランシスコで活躍するDJ「マーク・ファリナ」による軽快なハウスセットの心地良さも絶品だった。Massive Attackのダディ・Gによるジャングルセットに続いてヘッドラインを務めたのは石野卓球。安定感のあるテクノセットはさすがの一言で、こちらも90年代らしいダンスミュージックを押し出した、今年の『StarFes.』らしい流れを感じることができた。

石野卓球(撮影:Masato Yokoyama)
石野卓球(撮影:Masato Yokoyama)

『StarFes.'14』が気づかせてくれたこと

最後に、これまで何度も「90年代」という言葉を使ったが、もうひとつ付け加えると、『StarFes.'14』の出演者の多くは、90年代より活動しながら、時代に迎合せずに自身の音楽を探求し続けているアーティストばかりであったこと。そのぶん音楽的な表現も深く、見どころも多い充実した内容だった。オーディエンスの年齢層も一般的なロックフェスと比較すると比較的高く、会場全体もゆとりのある設計だったので、全体的にピースフルな雰囲気だったのも好印象。そして何と言っても印象に残ったのは、NASの“The World Is Yours”などの盛り上がり方を見て、90年代のヒット曲は今でも求心力があることを目の当たりにできたことだ。移り変わりが激しく、細分化した今の音楽シーンに比べて、90年代はもっと各アーティストのパワーが強かった時代。2010年代も半ばに差しかかった今、90年代という時代感に注目が集まっているのも興味深いし、あの時代のパワーに気づかせてくれたという意味でも、『StarFes.』は希有なフェスティバルだと思った。早くも来年はどんなアーティストを呼んでくれるのか楽しみである。

イベント情報

『VICE Japan presents StarFes.'14』

2014年9月20日(土)OPEN 9:30 / START 10:30 / CLOSE 20:00
会場:千葉県 幕張海浜公園 特設会場
出演:
[StarArena]
Nas“illmatic 20th anniversary special set”
PUBLIC ENEMY
ERYKAH BADU
DJ KRUSH
the band apart
ZAZEN BOYS
[StarFloor]
TAKKYU ISHINO
DADDY G(MASSIVE ATTACK)
MARK FARINA
DJ NATURE
LINDSTRØM(LIVE)
VAN CLIFFE
[Boredoms Spcial Stage]
BOREDOMS
[Perfomers]
ZiNEZ(Jinji Takeguchi)
YOKOTA YOSUKE
ZEN(島田善)
J-TRAP.
TATSUYA from 人ISM

(メイン画像:photo by Tadamasa_Iguchi)

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