レビュー

独自の立ち位置で成長し続けて18年、GRAPEVINEの新たな挑戦

小野田雄
2015/04/23
独自の立ち位置で成長し続けて18年、GRAPEVINEの新たな挑戦

オーバーグラウンドでもアンダーグラウンドでもない、独自の立ち位置で進化し続けるGRAPEVINE

2014年にSPEEDSTAR RECORDSに移籍し、今年1月に移籍第1弾となる通算12枚目のアルバム『Burning tree』をリリースしたロックバンド、GRAPEVINE。「葡萄のつる」を意味するそのバンド名は、ソウルシンガー、マーヴィン・ゲイのヒット曲“I Heard It Through The Grapevine”に由来している。その名が物語る通り、1997年のデビューから初期にかけては、ソウルやブルースを土台としながら、現代的に解釈したブルースロックやサザンロックの痕跡が見て取れた。しかし、彼らはルーツミュージックにありがちな本物志向を頑なに否定していたし、内に秘めた熱を爆発的に放ちながらも、音楽シーンの流行りやムーブメントと距離を置いていたこともあり、個人的には彼らの音楽性や魅力が語りにくくもあった。

その語りにくさは、バンドの特異なポジションともつながっていく。2ndアルバム『Lifetime』(1999年)は20万枚以上のセールスを記録するが、当時周囲から期待されていた「ポストMr.Children」的な存在に落ち着くことなく、彼らはオーバーグラウンドでもアンダーグラウンドでもない、独自な立ち位置で音楽的な進化を重ねていくことになる。そして、メンバーの脱退がありながらも、田中和将(Vo,Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr)に加えて、金戸覚(Ba)、高野勲(Key)という二人のサポートプレイヤーを交えて以降、それまで直接的に放出してきた爆発的な熱を内在化させていった。その熱は、具体と抽象を巧みに行き来し、解釈の多様性を生み出す田中の歌詞世界とプログレッシブなバンドアンサンブルに注がれ、「葡萄のつる」は掴んだその手からすりぬけるような、なんとも不思議な感触を18年にわたって維持し続けてきた。

レーベル移籍後を経て、GRAPEVINEの何がどう変わったのか?

新作アルバム『Burning tree』は、そんなGRAPEVINEの歴史を踏まえ、「再デビュー」のつもりでSPEEDSTAR RECORDSとタッグを組んだ作品だ。そのアルバムを受けた2年ぶりの全国ツアーが、4月3日、赤坂BLITZよりスタート。GRAPEVINEの何がどう変わったのか、実際にライブで表現される場となる。

GRAPEVINE 撮影:TAKU FUJII
GRAPEVINE 撮影:TAKU FUJII

Sun Ra & His Arkestraの妖しげなコズミック(宇宙的)ジャズが場内に流れる中登場した五人は、変わったというより、むしろこれまでの歩みを積極的に肯定して、いい意味で肝が据わったような、そして自由になったような、そんな印象を受けた。メンバーのキャラクターやバンドの佇まいではなく、音楽の強度でブレイクスルーを果たすべく、MCでは多くを話さず、ロックバンドのフロントマンとしてはいささか無愛想な田中の立ち居振る舞いは、音楽にすべてを語らせたいという意図が感じられた。そして、それを受け入れるオーディエンスとの共犯関係のもと、彼らは『Burning tree』の楽曲を次々に披露した。


「これが今年のGRAPEVINEです」

新作にて、アフリカの民族楽器「ウォータードラム」をフィーチャーし、作り込んだアレンジを聴かせる“Big tree song”は、ドラマー亀井がシンセパッドを叩いて対応したほか、メンバーそれぞれがベルやグロッケン、ハンドクラップを用いてポリリズミックな躍動感を表現。また、“Big tree song”と共通したテーマが扱われているという“サクリファイス”は、美しいギターのつま弾きに乗せた田中と亀井のボーカルハーモニーが静から動へ膨らんでいく様が圧巻だった。この2曲に象徴される『Burning tree』は、今まで以上に田中の心情が歌詞に投影されており、サウンド面においては自由度を増し、シンセサイザーやミニマルなフレーズのループを織り込むことでアレンジがより緻密になった。それらの楽曲が、深みを増した美しいメロディーによって統一され、大きな川の流れのように耳に注ぎ込まれるアルバムだ。その流れにどっぷりと浸るオーディエンスに対して、「これが今年のGRAPEVINEです」と誇らしげに語る田中が実に印象的だった。

この日はツアー初日ということもあって、緻密にアレンジされた新曲の数々は、まだまだ演奏に固さが感じられたが、ライブ巧者の彼らのことなので、2か月にわたる濃密なツアーの中で演奏をさらに磨き込み、最高のライブショーを全国各地で展開することになるはずだ。メンバー全員が40代を迎えてなお、オーバーグラウンドとアンダーグラウンドのエアポケットで洗練と挑戦を続けるGRAPEVINE。その先に伸びる道は決して平坦ではないかもしれないが、彼らの音楽は今後もリスナーの心を静かに、激しく燃やすだろう。

イベント情報

『GRAPEVINE Tour2015』

2015年4月3日(金)
会場:東京都 赤坂BLITZ

『GRAPEVINE Tour2015』

2015年4月3日(金)
会場:東京都 赤坂BLITZ

2015年4月5日(日)
会場:静岡県 Live House浜松窓枠

2015年4月11日(土)
会場:香川県 高松 DIME

2015年4月12日(日)
会場:兵庫県 Kobe SLOPE

2015年4月18日(土)
会場:新潟県 LOTS

2015年4月19日(日)
会場:長野県 CLUB JUNK BOX

2015年4月29日(水・祝)
会場:富山県 MAIRO

2015年5月1日(金)
会場:岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM

2015年5月3日(日)
会場:熊本県 B.9 V1

2015年5月6日(水・祝)
会場:神奈川県 横浜 Bay Hall

2015年5月10日(日)
会場:北海道 札幌 ペニーレーン24

2015年5月16日(土)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2015年5月17日(日)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2015年5月23日(土)
会場:岩手県 盛岡 Club Change WAVE

2015年5月24日(日)
会場:宮城県 仙台 Rensa

2015年5月30日(土)
会場:大阪府 なんばHatch

2015年5月31日(日)
会場:愛知県 名古屋ダイアモンドホール

2015年6月6日(土)
会場:東京都 豊洲PIT

料金:各公演 4,500円(ドリンク別)

リリース情報

GRAPEVINE『Burning tree』初回限定盤
GRAPEVINE
『Burning tree』初回限定盤(CD+DVD)

2015年1月28日(水)発売
価格:3,996円(税込)
SPEEDSTAR RECORDS / VIZL-756

1. Big tree song
2. KOL(キックアウト ラヴァー)
3. 死番虫
4. Weight
5. Empty song
6. MAWATA
7. IPA
8. 流転
9. アルファビル
10. Esq.
11. サクリファイス
[DVD]
1. “Empty song”Music Video
2. VIDEOVINE Vol.2 (RECORDING / SHOOTING / LIVE)

GRAPEVINE『Burning tree』通常盤
GRAPEVINE
『Burning tree』通常盤(CD)

2015年1月28日(水)発売
価格:3,240円(税込)
SPEEDSTAR RECORDS / VICL-64266

1. Big tree song
2. KOL(キックアウト ラヴァー)
3. 死番虫
4. Weight
5. Empty song
6. MAWATA
7. IPA
8. 流転
9. アルファビル
10. Esq.
11. サクリファイス

プロフィール

GRAPEVINE
GRAPEVINE(ぐれいぷばいん)

ブルースやソウルに耽溺していた早熟なボーカリストと、ビートルズやニール・ヤング、XTCに影響をうけたプレイヤーたちが大阪で出会う。彼らはマーヴィン・ゲイの曲から名前を借用し、ロックバンド「GRAPEVINE」を結成する。結成メンバーは田中和将(Vocal/Guitar)、西川弘剛(Guitar)、亀井亨(Drums)、西原誠(Ba)。セルフリリースのカセットテープが注目をあび、1997年にポニー・キャニオンと契約。1997年9月、ミニアルバム『覚醒』でデビュー。2枚のスマッシュヒットシングル(“スロウ”“光について”)を含むアルバム『Lifetime』(1999)がチャートでTOP3にエントリーした。2002年に西原誠が脱退し、金戸覚(Ba)、高野勲(Key)がメンバーに加わった。2005年から、プロデューサーに長田進(Dr.Strange love)を迎えて共同作業を行う。2014年、アルバム『Lifetime』再現ライブ『IN A LIFETIME』を開催。そして、ビクター/スピードスターレコーズに移籍。2014年11月19日に移籍第一弾シングル『Empty song』、2015年1月28日にはアルバム『Burning tree』をリリース。

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