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ヘンリー・グリーンの電子音楽にみる英国でしか生まれ得ない感性

ヘンリー・グリーン『Shift』
テキスト
宇野維正
編集:木村直大、山元翔一
ヘンリー・グリーンの電子音楽にみる英国でしか生まれ得ない感性

ロバート・ワイアットの系譜を継ぐ、ブリストルのDNA

ブリストルと言えばイギリス西部最大の港町ということもあって、歴史的にジャマイカからの移民が多かった。その風土を背景に、1990年代にはMassive Attack、Portishead、Trickyを筆頭とする「トリップホップ」と呼ばれたUKヒップホップの一大潮流の発信源となり、その発展系でもある「ドラムンベース」の中心人物ロニ・サイズも登場したわけだが、自分が『Shift』を聴いて思い浮かべたのはそれより二世代ほど前の「ブリストル出身ミュージシャンの偉人」、元Soft Machineのロバート・ワイアットの作品だ。

最初に聴いた時に「これは英国でしか生まれ得ない音楽だな」と思ったのも、ロバート・ワイアットの作品の根底に常に流れ続けていた、「1960年代以降、最も英国らしい音楽」と言ってもいいカンタベリーロックの伝統をそこに聴き取ったからかもしれない。

ロバート・ワイアット『Rock Bottom』(1974年)を聴く(Spotifyを開く

フランク・オーシャンを輩出したことでも知られるOdd Future(Odd Future Wolf Gang Kill Them All)のリーダー、Tyler, The Creatorは、昨年のアルバム『Flower Boy』のインスピレーション源として、Soft Machineの名前を挙げていた。また、TylerはEverything But The Girlの大ファンで、同作収録の“November”では、当初ボーカリストとしてトレイシー・ソーンをフィーチャリングしようとしていたとも明かしている。

そんないくつかのエピソードから、ロバート・ワイアットとベン・ワット(Everything But The Girl)のコラボレーションによって生まれた1982年の名作『Summer Into Winter』のことが頭をよぎったのは自分だけだろうか。

ベン・ワット『Summer into Winter』(1982年)を聴く(Spotifyを開く

ちょっと話が脱線してしまったが、近年、英国のミュージシャンが「世界」に発見されるルートには、「英国らしさ」を脱臭していく方向だけでなく、逆に「英国らしさ」を突き詰める方向もあるということだ(それは、英国のミュージシャンに限らず日本のミュージシャンにも言えることだろう)。そういう観点からも、ヘンリー・グリーンの「英国らしさ」が端々から零れ落ちてくる、繊細でパーソナルなエレクトロニックミュージックは注目に値する。

ヘンリー・グリーンを聴く
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リリース情報

ヘンリー・グリーン『Shift』
ヘンリー・グリーン
『Shift』(CD)

2018年4月18日(水)発売
価格:2,592円(税込)
TUGR-053

1.i
2.Aiir
3.Shift
4.Another Light
5.Stay Here
6.We
7.Without You
8.Contra
9.Diversion
10.Something

プロフィール

ヘンリー・グリーン

現在22歳のヘンリー・グリーンは、イギリス西部にある港湾都市ブリストルに生まれた。このソングライター/プロデューサーであるヘンリー・グリーンの名前が注目されるようになったのは2013年10月。ノルウェーの大人気プロデューサーであるKYGO(カイゴ)が、グリーンがカバーしたMGMTの「Electric Feel」をリミックスしてSoundCloudにアップしたことから始まった。たちまち広まり、今では1000万回再生を達成している。2015年6月にデビューEP『Slow』、続く2017年2月に2nd EP『Real』をリリースし各ストリーミングサービスでも話題に。待望のデビュー作『Shift』を2018年にリリースし、遂に日本デビューを果たす。

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