レビュー

My Hair is Badが描く人生のドラマ。『boys』に捧ぐ徹底レビュー

撮影:Masanori Fujikawa 編集:矢島大地(CINRA.NET編集部)
My Hair is Badが描く人生のドラマ。『boys』に捧ぐ徹底レビュー

CINRA.NET編集部が、ジャンルにかかわらず素晴らしい表現・伝えたいカルチャーを毎月選出する「今月の顔」。

6月の「顔」は、6月26日に4thフルアルバム『boys』をリリースしたMy Hair is Badだ。恋、青春、身も蓋もない本音を赤裸々に曝け出すことでひたすら人生に誠実であろうとする歌は、どのようにして聴く人の心を撃ち抜いてきたのか。CINRA.NET初登場であるからこそ、マイヘアの歌はなぜこんなにも狂おしくて日々を奮わせるのかを書き尽くそうと、マイヘア・ロングライナー3本と『boys』全曲レビューで構成した特別企画だ。さらには『boys』収録曲“化粧”のMV撮影時のメイキング写真も初出し、ギターボーカル・椎木知仁から直筆コメントも寄せてもらった。「CINRA.NETにとってのマイヘア」も「マイヘアにとってのマイヘア」も全部盛りにしたMy Hair is Badストーリー。さあさあ、一気に駆け抜けるように読んでください。

My Hair is Bad(まい へあー いず ばっど)<br>椎木知仁(Vo,Gt)、山本 大樹(バヤ / Ba,Cho)、山田淳(やまじゅん / Dr)による、新潟県・上越市出身の3ピースロックバンド。2008年結成。2013年にTHE NINTH APOLLOより『昨日になりたくて』をリリースし、2016年には『時代をあつめて』でEMI Recordsからメジャーデビュー。2019年6月26日の『boys』リリースに伴う「サバイブホームランツアー」では、最終公演をさいたまスーパーアリーナで2days開催することを発表した。
My Hair is Bad(まい へあー いず ばっど)
椎木知仁(Vo,Gt)、山本 大樹(バヤ / Ba,Cho)、山田淳(やまじゅん / Dr)による、新潟県・上越市出身の3ピースロックバンド。2008年結成。2013年にTHE NINTH APOLLOより『昨日になりたくて』をリリースし、2016年には『時代をあつめて』でEMI Recordsからメジャーデビュー。2019年6月26日の『boys』リリースに伴う「サバイブホームランツアー」では、最終公演をさいたまスーパーアリーナで2days開催することを発表した。

My Hair is Badは誰にもわからない言葉と気持ちを「翻訳」する テキスト:小川智宏

人の日記を覗き見るような気恥ずかしさでもって、僕たちはMy Hair is Badの歌を聴いてきた。SNSの短いテキストでは書ききれない、もってまわった気持ちの動きとささいな出来事の積み重ね。本人以外にとってはどうでもいいことが、どうでもよくなくなる瞬間に出会うために、プレイボタンを押す。その曲の主人公にシンクロするというよりも、主人公の友人になったような感覚で。チェーンの居酒屋かファミレスのボックスシートで友達から結局何を言っているのかわからないような愚痴か相談を受けながら、じつはそいつを羨ましく思う。たとえていうならそんな気分で、僕たちはMy Hair is Badを聴いてきた。

そこに書かれていることが事実なのか創作なのかにかかわらず(8割がた実体験という気もするが、日記に作り話を書くなんてよくあることだ)、椎木知仁の書く歌詞は徹底的に自分だけの言葉で、自分自身に向けてのみ書かれている。だからときどき前後の文脈がぶった切られていたりするし、散文的で、ラインとラインのつながりがよくわからなかったりする。共感、共鳴、絆、つながり。そんなものは求めていないし、さらにいえば信じてすらいない。それは裏を返せば、結局人の気持ちなんてわからないという思いの表れでもある。

<ブラジャーのホックを外す時だけ / 心の中までわかった気がした>(“真赤”)。そんなことを別れ際の恋人に告げたら、ぶん殴られて終わりだろう。<本当のことなんか聞きたくないんだ / 作り笑いが作る幸せだってあんだろ>(“優しさの行方”)なんて本音、面と向かっていったら人間としてダメ出しされるだろう。「独り言」だからこそ成立する、あけすけの本心と記憶の断片。My Hair is Badを作っているのはそういう言葉たちだ。<僕は言う / 「そばにいて」 / 君は言う / 「あなたでいて」 / 言葉で言わなくちゃってことはね>(“ドラマみたいだ”)――「言葉で言わなくちゃ」ってことは、気持ちは伝わらない、わからないということだ。ライブのステージ上で椎木がときどきキョドって見えるのは、誰にもわからない言葉で書いたはずの歌が届いている、伝わっているということを目の当たりにしているからかもしれない。にしているからかもしれない。もういい加減慣れたら?と思うけど、いつまで経ってもフロアから観る椎木はそんな感じだ。

椎木による日記のような、あるいは独り言のような言葉がちゃんと理解され、届いているのはなぜかといえば、バカみたいな話だが、My Hair is Badがちゃんとロックバンドをやっているからだ。バヤこと山本大樹が弾くベースとやまじゅんこと山田淳が叩くドラムは、歌に過剰に寄り添うでも、エゴを撒き散らすでもなく、ちゃんとあるべき場所にあるという感じがする。居酒屋で愚痴か相談かわからない話をうなずきながら聞いてくれて、でも安易に「わかるよ」とは言わないでいてくれる、そんな友達のような音だなあと、マイヘアを聴いていると思う。そんなふたりのフィルターを通して、椎木の独り言は僕たちの言葉に翻訳される。椎木が「マイヘアは椎木のバンドって言われるのが嫌だ」というようなことを言っているのは、つまりそういうことだ。

My Hair is Bad

「わからない」がロックバンドの力によって「わかる」に変わる。それが椎木がロックバンドを続けている理由だと思うし、My Hair is Badはそれを愚直にやってきたからこそ今の場所までたどり着けたのだろう。ただ、そのメカニズムももしかしたら変わっていくのかもしれないという予感を、最新アルバム『boys』は感じさせる。『boys』は決して独り言で埋め尽くされた日記のようなアルバムというだけではないからだ。もちろん個人的体験や個人的心情は相変わらずてんこ盛りだが、その体験や心情を、椎木はちゃんと「物語」として歌おうとしている。“夏が過ぎてく”へのアンサーともいえる“君が海”もそう、地元への思いを綴った“ホームタウン”もそう、人生を見渡すような視点を手にした“芝居”もそう。少しだけ世界に向かって開かれた「物語」たちが、バンドのアンサンブルによってドラマチックに補強され、鳴り響く。そこから見えるのはマイヘアが進んでいく新しい未来だ。

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リリース情報

My Hair is Bad『boys』初回限定盤
My Hair is Bad
『boys』初回限定盤(紙ジャケット仕様 / CD+DVD)

2019年6月26日(水)発売
価格:4,536円(税込)
UPCH-29333

[CD]
1.君が海
2.青
3.浮気のとなりで
4.化粧
5.観覧車
6.ホームタウン
7.one
8.愛の毒
9.lighter
10.怠惰でいいとも!
11.虜
12.舞台をおりて
13.芝居

[DVD]
LIVE at LIVE HOUSE「心斎橋BRONZE」2019年1月12日
『boys』レコーディングドキュメント

My Hair is Bad『boys』通常盤
My Hair is Bad
『boys』通常盤(CD)

2019年6月26日(水)発売
価格:3,024円(税込)

1.君が海
2.青
3.浮気のとなりで
4.化粧
5.観覧車
6.ホームタウン
7.one
8.愛の毒
9.lighter
10.怠惰でいいとも!
11.虜
12.舞台をおりて
13.芝居

プロフィール

My Hair is Bad
My Hair is Bad(まい へあー いず ばっど)

椎木知仁(Vo,Gt)、山本 大樹(バヤ / Ba,Cho)、山田淳(やまじゅん / Dr)による、新潟県・上越市出身の3ピースロックバンド。2008年結成。2013年にTHE NINTH APOLLOより『昨日になりたくて』をリリースし、2016年には『時代をあつめて』でEMI Recordsからメジャーデビュー。2019年6月26日の『boys』リリースに伴う「サバイブホームランツアー」では、最終公演をさいたまスーパーアリーナで2days開催することを発表した。

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