特集 PR

館から街に飛び出した『シブカル祭。』雑踏に轟く女子たちの主張

館から街に飛び出した『シブカル祭。』雑踏に轟く女子たちの主張

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』
テキスト
島貫泰介
編集:野村由芽

渋谷パルコ休業後に開催される、初めての『シブカル祭。』

2011年に始まり、今年で6年目を迎えた『シブカル祭。』は、同祭にとって初の試みとなる夏・秋の2回開催を進行中だ。この変則的なスタイルの理由は、これまで主会場であった渋谷パルコのリニューアル休業に伴うものだが、同時に、渋谷という街に『シブカル祭。』という女性アーティストのための祝祭が定着し、欠かすことのできないものとして成長してきたことの証とも言える。夏会期にあたる『シブカル〈夏〉祭。2016 ~レッツ・ラスト・ダンス~』が、43年の歴史を持つ渋谷パルコの休業前最後の10日間を飾ったことからも、その存在感が伝わるだろう。世界的にも女性の躍進が話題の中心になる2010年代だが、それはここ渋谷でも変わらないのだ。

今月15日からちょうど1週間の会期で始まっている『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』は、最終日の21日に行われる渋谷クアトロでのライブパーティー(ライブと言っても、音楽、映画、ファッション、アート展示などがミックスした、とっても『シブカル祭。』らしい内容になる)がメインになっているが、そこに至るまでの気分をアゲてくれるイベントも気合いが入っている。

渋谷を想う40名の女子による、街角ポスタージャック

その1つが、渋谷センター街を中心に展開するポスタージャックプロジェクト。初参加を含む総勢40名のアーティストが「渋谷と私」をテーマにポスターを制作。現在、のべ160枚のポスターが渋谷の街をカラフルに彩っている。

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)
『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)
『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)

「渋谷と私」というと、まるで小学校の作文課題のようでちょっと面映くもあるが、その身近さはアーティストたちが感じるリアリティーと結びついて、想像以上の相乗効果を生み出している。

例えばイラストレーター&映像作家の大島智子は、彼氏と待ち合わせしてライブに行って……みたいな、渋谷のそこかしこで今日も起こっているような日常の風景をマンガにしている。10~20代女子の浮遊感と停滞感を表現していて、ちょっと切ない。

大島智子
大島智子

このような形容の難しい切なさは、妄想的な女子校生活や、おぼこい女子目線で理想化されたメガネ男子を描くマンガ家の岡藤真依、ウルトラマン級の巨女になって、スクランブル交差点で女友だちと待ち合わせする空想をポスターにぶつけた高田ローズの世界観にも通じるかもしれない。

岡藤真依
岡藤真依

高田ローズ
高田ローズ

近年、特に関心が高まりつつある現代詩や短歌といった「言葉」の観点では、とんだ林蘭(とんだばやし・らん)や、ほりいさやか、まるやまるいが心をザワザワさせる。

ほりいさやか
ほりいさやか

まるやまるい
まるやまるい

へろへろの書き文字で記した「学校辞めて ずっと渋谷に いたい」と主張するとんだ林のポスターは、ほとんど子どもの駄々だけれど、「あ~高校時代、勢いで中退しちゃうそんなに親しくない同級生いたよ~」という記憶を喚起させてくれて、いろんな意味で甘酸っぱい。

とんだ林蘭
とんだ林蘭

なんとなれば、今だって仕事を投げ出してどこかに逃げ出してしまいたい大人だってたくさんいるはずで、もしも街角で貼られているのを見かけたら「わかるぜ!」と速攻で心の同志に認定完了である。

コンセプトを重視するタイプの作品も楽しいが、一気呵成な衝動でビジュアル化したような作品も暴動的でとてもいい。アウトサイド感溢れる強迫的な筆致がヤバい上村江里。

上村江里
上村江里

渋谷の光と闇、といったスナップ写真のオカダキサラ。

オカダキサラ
オカダキサラ

花輪コスプレで現代美術界ではおなじみのキュンチョメ。

キュンチョメ
キュンチョメ

キャバ嬢文化とアートに架け橋を渡すような曼荼羅をデザインしたマコ・プリンシパル。

マコ・プリンシパル
マコ・プリンシパル

ミュータント化した女子の瞳が印象的な抜水摩耶。

抜水摩耶
抜水摩耶

ひたすらカワイク描かれたアニメキャラがむしろ不気味でもあるあいそ桃かなど、気になる作品はとても多い。

あいそ桃か
あいそ桃か

雑多な街に解き放たれた、21世紀の女子たちの主張

1990年代初頭にワシントンD.C.などから自然発生した、アメリカの「ライオットガールムーブメント」は、マッチョ主義の男性カルチャーに嫌気がさしたパンク少女たちが、自分たちのカルチャーを生み出した政治的な文化運動だったが、今回のポスタープロジェクトに参加している40名も、それぞれの「運動」を試みているように思う。

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)
『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)

もちろん「クソったれな男どもよ、くたばれ!」的な20世紀後半の急進性とはかたちを異にするが、女の子扱いされること、恋人との関係の煮え切らなさ、複雑な家族問題、従順な消費者として馴致されることへの違和感や嫌悪感、そしてもちろん自由であることへの希求は、時代と国が違っても共鳴し合える、巨大な「主張」であるはずだ。

ギャラリーや美術館で展示されるのと比較して、街角に貼られるポスターは、作品としての自立性はどうしても弱くなる。けれども、アーティスト一人ひとりの訴えたい想いは、雑多な情報が錯綜する環境にさらされることで、オルタナティブ性とタフネスを得る。

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)
『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』(PHOTO:岩澤高雄)

『シブカル祭。』が渋谷パルコという拠点から離れたことはさまざまな要素によるものだが、「街」というより開かれたフィールドを獲得できた偶然は、幸運であり、また必然でもある。彼女たちの声は、今日も、そしてこれからも渋谷の街に轟いている。

Page 1

イベント情報

『シブカル〈秋〉祭。2016 ~やっぱり渋谷で会いましょう~』

2016年10月15日(土)~10月21日(金)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO(10月21日のみ)、渋谷各所
参加クリエイター:
Homecomings
lovefilm
chelmico
NINJAS
ZOMBIE-CHANG
Luby Sparks
DEADKEBAB & PSYCHIC$
あいそ桃か
いすたえこ
伊波英里
上村江里
大島智子
オカダキサラ
岡藤真依
川瀬知代
鬼頭祈
キュンチョメ
草野庸子
最後の手段
ステレオテニス
関根優子
惣田紗希
大門真優子
高田ローズ
寺本愛
とんだ林蘭
ナガタニサキ
中村桃子
抜水摩耶
野本千洋
はらだ有彩
日向山葵
ふせでぃ
ほりいさやか
マコ・プリンシパル
まるやまるい
水上愛美
ミヤタチカ
三山ガリ
椋本真理子
Colliu
conix
Frankie Cihi
Mayumi Yamase
OTOME JOURNAL
SS6ky
YUI HORIUCHI
幸洋子
UMMMI.
ほか

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

cero“ロープウェー”

「この曲を最初に聞いた時になぜか、じっと佇む飴屋法水さんとメンバーの姿が浮かび上がってきて離れなかった」と語るのは監督を務めた仲原達彦。モノクロの8mmフィルムで撮られた何気ない風景やロープウェーの映像のはずが、なぜか現実離れした幻想的な感覚へと連れていく。昨年末にリリースされ、すでに耳に馴染んだはずの楽曲の世界がさらに広がり深まるような映像世界。(宮原)