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あらかじめ決められた恋人たちへ インタビュー

あらかじめ決められた恋人たちへ インタビュー

インタビュー・テキスト
柏井万作

聴いてる人が自由に想像して、
カラッポの中に物語を詰めてくれたら理想ですよ

―今回のアルバムタイトル『カラ』にはどんな意味があるんですか?

池永:まずは空っぽの「空=カラ」ですね。あとエスペラント語っていう、世界共通語として作られた言葉では、「大切なこと」っていう意味らしいんです。でも日本語だと空っぽでしょ。大切なものがカラって、うわーロマンチックやなあって。

―深いですね~。

池永:あと「from」ですね。ルーツ。大阪から、の「から」。あとダブって、元音を分断して色付けしていく作業なので、色をつけていく色彩感覚も「カラー」ですよね。しかもスペイン語では「表情」という意味なんですよ。表情と色彩感って似てるじゃないですか。しかもそれが空虚だったり、空虚の空の色って青色でそらいろできれいやったり。

―本当に色んな意味があるんですね。それぞれの曲も意味付けされているんですか?

池永:それはもう、聴く人に丸投げしたい部分なんですよ。歌や言葉が無い分、自由にイメージの幅を与えられるじゃないですか。だからこちら側からどういう曲なのか限定するつもりはなくて、聴いてもらった人それぞれが何かを感じてくれたら一番嬉しいです。そういう意味もあって『カラ』なのかもしれないですね、今思いついたんですけど(笑)。でも本当に、聴いてる人が自由に想像して、カラッポの中に物語を詰めてくれたら理想ですよ。

あらかじめ決められた恋人たちへ インタビュー

―映画を観ていても、セリフのないシーンのほうが考えさせられますよね。そういう非説明的な場面なり音楽って、受け手の器量が問われる部分かもしれないですが。

池永:そういえば僕が映画を観ていて感動するのは、そういうセリフのない引き絵が多いんです。日本映画って、役者が真剣に語るシーンでわざと顔や口元を映さないで、逆に手を映したりするんですけど、それってインスト音楽と同じですよね。言葉じゃなく、心象風景を語るようなね。

ピアニカって、どんなに勇ましいフレーズ吹いても
哀愁があるんですよね。僕、女々しいんですよ(笑)。

―ところで、「あらかじめ決められた恋人たちへ」という名前にはどんな由来があるんですか?

池永:『あらかじめ失われた恋人たちよ』っていう映画があるんですよ。なんかロマンがあって、カッコいい名前だなあと思って。あと、この名前だとどんな音楽を作っているのか想像できないのも気に入ってますね。もともとはドアーズみたいなロックバンドだったんですけど、まあ面白くなかったんでしょう、メンバー皆辞めていって。そのままソロ活動になっていったんです。

―池永さん、相当な映画好きですよね。大阪芸大で映画の勉強もされていたり、先日公開されて話題になった映画『青空ポンチ』の音楽も担当されていますよね。

池永:『青空ポンチ』の柴田(剛)監督とか、『天然コケッコー』の山下(敦弘)監督は同期なんですよ。僕が初めてちゃんとバンドやったのも柴田くんとで。ジャンクバンドだったんですけど、最終的には血まみれの大喧嘩をしてやめちゃいましたけどね(笑)。

―血まみれですか!(笑)

池永:フレンドリーっていうファミレスで。ライブよりも一番ジャンクでした(笑)。柴田くんはすごい面白い人間なんですけど、面白い分抜けてるというか、適当なんですよね。レコーディングが終わる10分前に来て、「間に合った~」って。「間にあってへんわ!!!」って(笑)。もう、たまりにたまって。

―爆発したと。

池永:多分向こうもたまってたんでしょうね。ペイブメントとかダイナソーJrとか、ああいうジャンクな音楽をやりたいって組んだバンドなのに、途中からメンバー二人がスピッツみたいなのやりたいって言い出したから。ジャンクバンドにスピッツはできないよと。でもまあ、今となってはめちゃくちゃ仲いいですけどね。

―なるほど、ピアニカの牧歌的な雰囲気からは想像できないエピソードでした(笑)。ピアニカを使い始めたキッカケは?

池永:撮影現場の小道具だったピアニカをもらったのがきっかけなんですよ。

―それからずっとピアニカを吹き続けているんですよね?

池永:そう、性に合ってたんでしょうね。まあピアニカにこだわってるわけじゃないですけど、なんか音色が好きなんです。どんなに勇ましいフレーズ吹いても哀愁があるんですよね。僕、女々しいんですよ(笑)。

―でもその女々しさっていうか、メランコリックな部分といのうは、あら恋が愛されてる理由の一つですよね。誰だって、家で独りの時は女々しくなることもあると思いますし。

池永:音楽を聴きたくなるのって、そういう時だったりしますよね。人とうまく話せなかったとか、スポーツがヘタクソで悔しいとか、そういう現実からの逃げ場じゃないですけど、音楽を聴いて許された感じがあるというか。だから僕も、そういう感じで聴いてもらえたら嬉しいんですよ。生きる糧じゃないですけど、あ、なんかやろうみたいに思ってもらえたらいいですね。

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リリース情報

あらかじめ決められた恋人たちへ『カラ』
あらかじめ決められた恋人たちへ
『カラ』

2008年10月15日発売
価格:2,300円(税込)
MAOCD-023X mao

1. アカリ feat.石井モタコ(fromオシリペンペンズ)
2. よく眠る
3. トカレフ
4. 錆びる灯
5. 時間
6. silent way
7. トオクノ
8. 引火
9. コウカン
10. 十数えて(from audio safari / あらかじめ決められた恋人たちへREMIX)

プロフィール

あらかじめ決められた恋人たちへ

「あらかじめ決められた恋人たちへ」は、ピアニカ奏者、トラックメイカー池永正二によるソロユニット。哀愁の中に潜む狂気、猥雑さの中で輝くイノセンスという相反する要素が常に内包されているその作風は安易なカテゴライズ不可能な唯一無二の音風景を描き続けている。2008年10月15日、サードアルバム『カラ』をmaoよりリリース。

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