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肩書きは名乗らない 坂本慎太郎インタビュー

インタビュー・テキスト:柴那典 撮影:木下夕希(2011/12/20)

自主レーベル「zelone records」から11月18日にリリースされた1stアルバム『幻とのつきあい方』が、オリコンチャートでも11位となるヒットを記録した坂本慎太郎。ソロデビュー作が巻き起こした反響は、昨年3月のゆらゆら帝国の解散以降彼の動きがずっと待ち望まれてきたこと、そして彼以外に作ることのできない世界観が確固としてあり続けることの証明と言っていいだろう。

コンガの乾いた音色が印象的な、洗練されたユルさと微かな熱を感じさせる全10曲。甘いメロディとソウルの風味を感じさせる曲調は、バンド時代とは違う「個」の風合いを感じさせる。歌詞の言葉はどこか示唆的だが、しかしその音楽には、聴いているうちに自然と生活の中にピッタリとハマるような心地よさがある。

iPadで1ヶ月かけて制作されたという"君はそう決めた"のサイケデリックでユーモラスな自作アニメーションのPVも話題を呼んだ彼。アルバムの背景にある美学を、あらためて尋ねた。

PROFILE

坂本慎太郎
1967年9月9日大阪生まれ。1989年:ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。2006年:アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。2010年:ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。2011年:salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート。
zelone records

ロックコンサートみたいな場所じゃないところで鳴ってるイメージはありましたね。

―アルバムが先日リリースされて、たとえばチャートも含めたセールス面での反響も非常に大きかったと思います。今の状況にはどんな手応えがありますか?

坂本:それは他の人たちが売れてないだけなんじゃないのかな(笑)。本来売れてるようなビッグネームが今の時期に作品を出してないとか、もしくは以前ほどCDが売れてないから、僕みたいなのがこんなに上がってきちゃうのかな、って思いましたけど。

―ただ、このアルバムが求められていたものだということはすごく思うんです。すごく居心地のいい音楽だと思うんですけど、それは単に心地いい音楽ということじゃなくて、とても批評的な表現になっている。そのスイートスポットに合致する人が多かったということなんじゃないか、と。

坂本:わかんないですよね、それは。どうなんでしょうね。ホントにいいと思ってるのか1人1人に訊いてみたいですけどね(笑)。

―坂本慎太郎さんご自身としては、自分にとっての居心地のいい音楽を作ろうという意識はありました?

坂本:完全にそれだけですね。ずっと家にこもって1人で作ってたんですけど、何かに対して何かをするとか、他の誰かがどう思うとか、そういうことは考えていなくて。そもそも世の中で流行っているものも知らないし。今の自分が感じている身の回りの空気感みたいな中で、聴きたい感じのアルバムだという。


坂本慎太郎
坂本慎太郎

―どういう場所で鳴ってるとか、どういう空気感のところで鳴っているとか、そういうイメージもあったんでしょうか?

坂本:やっぱり、ロックコンサートみたいな場所じゃないところで鳴ってるイメージはありましたね。それは音響的なこともあるし、ステージにバンドがいて、みんなそっちの方を向いているような感じの場所じゃないところというか。そういうところじゃなくて、場末の小さなバーみたいなところでみんなが話していて、邪魔にならないように箱バンがやっているみたいな。

―拳が上がってないという?

坂本:上がってないですね。だけど音楽はすごくいい感じで鳴ってる。そこの空気感のような音楽というイメージです。

―これはゆらゆら帝国の頃にも遡る話かもしれないですが、ロックコンサートの約束事や形骸化に対する批評的な感覚は、坂本さん自身もずっと持っていたと思っているんですね。その流れで聴くと、『空洞です』とこのアルバムは、鳴らしている音は違うかもしれないですけど、見ている方向は結構近いように思っているんですけれども。どうでしょう?

坂本:それは自分でもわからないんです。作ってる時は、バンドでやってきたことを受けてとか、それをあえて絶ち切ってとか、そういうことは一切考えていなかったですね。で、結果、こんな感じになった。もし流れがあったりするように感じるのであれば、狙ったというよりは、自然にこうなったという。自分ではそこは全然意識してないですね。

2/4ページ:みんながさり気なく興味津々な感じがちょっと鬱陶しいなって思って(笑)。

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