特集 PR

「たくらむ」ための映画術 入江悠×川村元気プロデューサー対談

「たくらむ」ための映画術 入江悠×川村元気プロデューサー対談

インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:菱沼勇夫

時代の空気を読むのではなく、時代の空気を作り出す。東宝の新鋭映画プロデューサーとして、それまで「感動」一辺倒だった日本映画界に『告白』『悪人』などアンチモラルでヘビーな作品をぶつけ、大ヒット。その勢いが終わらないうちに、今度は対極的なJ-POPエンタテインメント『モテキ』やアニメ作品『おおかみこどもの雨と雪』をまたもヒットに導くなど、いまや日本映画界、正真正銘のヒットメーカーとなったプロデューサー川村元気。川村と同世代でありながら、インディペンデント映画を軸に『SRサイタマノラッパー』シリーズで日本映画の新鋭監督として注目されている入江悠にとっても、川村は常に意識する存在である。この秋、TOKYO-FMで始まった入江悠がホストを務めるラジオ番組『入江悠の追い越し車線で失礼します』の第2回目のゲストとして登場した川村に、映画監督の立場から入江が本音で迫った。「企画をたくらんでいるときが一番楽しい」と言う川村の発想の秘訣とは何か。その映画作りの原点にまで遡って話を聞いた。

監督の名前で映画を観るのはありますけど、川村さんの場合、プロデューサーの名前で観られるっていうこともあると思うんですよね。(入江)

入江:同世代で名前を意識した映画プロデューサーって川村さんが初めてなんです。そういえばこのあいだ台湾に行ったとき、たまたま『モテキ』を上映していたんですね。そしたら、看板に「川村元気監製」(中国語で「プロデューサー」の意味)ってデカデカ書いてあったんですけど、監督の大根仁さんの名前は入ってなかった(笑)。

川村:「入江くんがTwitterでつぶやいてた」って大根さんに言われました(笑)。『電車男』や『デトロイト・メタル・シティ』や『告白』がかなりヒットして、『宇宙兄弟』も『プチョン国際映画祭』でグランプリを穫ったり、アジアではまあまあ評価されているのではと。

入江:監督の名前で映画を観るっていうのは、これまでもありましたけど、川村さんの場合、そうやってプロデューサーの名前で観られるっていうこともありうると思うんですよね。

左から:入江悠、川村元気
左から:入江悠、川村元気

川村:僕は逆に、監督やプロデューサーの名前で映画を観る人って実は少ないと思っていて、むしろそういった名前が前に出ないような作品を作りたいと常日頃考えていますね。例えば『告白』って、映像を見ただけだと、まさか中島哲也監督が撮ってるとは気づかないと思うんです。それまでの中島さんのカラフルなイメージとはちょっと違うので。「この映画、誰がやってるんだろう」ってまず思ってもらって、ちょっと調べると「実は……」っていう。そういう順番のほうが良いなと。

入江:逆説的にですけど、そういう驚きが川村さんの手掛けた映画の特徴にもなってますよね。「実はこの作品も川村さんだったのか!?」っていう。

川村:僕が手掛けているのはメジャー配給映画の中でも尖った作品なので、それをどう多くのお客さんに広げていくかっていう部分では、悪目立ちするしかないんですよ(笑)。とにかく興味を持ってもらう。でないと『告白』みたいな暗い映画は、まず観てもらえないので。

入江:僕、『告白』を北海道のシネコンで見たんですけど、劇場が若い子でいっぱいだったんでビックリしました。

川村:やっぱり20歳ぐらいまでの若い人にまず映画を観てもらいたいんですよね。自分の中でも、心に残っている映画って10代から20代前半ぐらいまでに観た映画が多いので。それ以降だと、どうしても「あの作品に似ている」とか「ああいう感じだ」っていう感想になってしまいがちじゃないですか。

僕の場合、プロデューサーの仕事は、映画作りのための「憲法」を制定する係だと思っているんです。(川村)

入江:僕たちが10代の頃はまだハリウッド映画が面白かった時期で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『ターミネーター』とかもありましたよね。僕は今でも思い返すと、結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に戻りたくなるんです。

川村:それは二重の意味で?(笑)。

入江:そう、映画の原点っていう意味と、あと過去へ戻りたいっていう(笑)。川村さんの仕事の原点ってどんなものだったりしますか。

川村元気

川村:やっぱりイチ映画ファンとして「自分が観たい映画を作る」っていうことしかないですね。あとは、この監督とこの物語を結びつけたらどういう化学変化が起こるんだろう? っていう。企画って、「企」の字は「たくらむ」っていう意味で、「画」は「みんなで集まる」っていう意味ですよね。つまりは、「みんなで集まって、何かを企む」。僕はその作業が大好きなんです。それでいて、現場は苦手っていう(笑)。

入江:ちなみにその「たくらむ」作業っていうのはどういうときにするんですか?

川村:日常生活の中ですね。無理に「たくらもう」って考えても何も出てこないですから。あと僕はバックパッカーでして、ちょうどこれからモロッコに行くんですけど、年に1回ぐらいそういう一人旅をするんです。そこでバーッとすべてを出して、カラッポになって、帰りの飛行機でいろいろ思いつくっていう。そのストックで1年間頑張る、みたいな感じですね。

入江:一人旅でリセットするっていうことですか?

川村:そうです。映画業界って魑魅魍魎が集まる場所なので、人間関係の中でポジティブな影響も、ネガティブな影響もいろいろ受けるじゃないですか。それはモノを作る現場なら当たり前のことなんですけど。一人旅で1週間ぐらい誰とも喋らないっていう環境に身を置くと、そういう人間関係がどうでもよくなるんです。それがないとちょっとやってられないところもありますね。

入江:映画って究極の集団作業ですし、プロデューサーはその人間関係を束ねる仕事ですからね。

川村:あまり束ねてないですけどね(笑)。僕の場合、プロデューサーの仕事は、映画作りのための「憲法」を制定する係だと思っているんです。

入江:「憲法」……ですか?

川村:この映画はこういうカタチでこの時代に存在したい。っていう「憲法」ですね。それさえできれば、あとは読み解いたスタッフがそれぞれ「民法」や「刑事法」を個別に作ってくれる。そうしてできたアウトプットを、再度、編集の段階で「憲法」に照らし合わせてみるっていう感じです。

Page 1
次へ
『入江悠の追い越し車線で失礼します Driven by 三井ダイレクト損保』

毎週日曜日20:30〜21:00からTOKYO-FMで放送

リリース情報

『世界から猫が消えたなら』
『世界から猫が消えたなら』

2012年10月25日発売
著者:川村元気
価格:1,470円(税込)
ページ数:221頁
発行:マガジンハウス

リリース情報

『宇宙兄弟』(Blu-ray&DVD)
『宇宙兄弟』(Blu-ray&DVD)

2012年12月21日発売
価格:
スペシャル・エディション(Blu-ray):7,035円(税込)
スタンダード・エディション(Blu-ray):3,990円(税込)、(DVD)2,940円(税込)
発売元:東宝

監督:森義隆
脚本:大森美香
出演:小栗旬、岡田将生

リリース情報

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)

2012年11月21日発売予定
価格:3,990円(税込)
発売元:アミューズソフト/メモリーテック

監督・脚本・編集:入江悠
出演:
奥野瑛太
駒木根隆介
水澤紳吾
斉藤めぐみ
北村昭博
永澤俊矢
ガンビーノ小林
美保純
橘輝
板橋駿谷
中村織央
配島徹也
中村隆太郎
HI-KING
回鍋肉
smallest
倉田大輔

プロフィール

入江悠

1979年、神奈川県生まれ。監督作『SRサイタマノラッパー』(2009)が『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』でグランプリ、『富山国際ファンタスティック映画祭』で最優秀アジア映画賞を受賞。同シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(2012)では野外フェスシーンに延べ2000人のエキストラを集め、インディペンデント映画として破格の撮影規模が話題となる。

プロフィール

川村元気

1979年生まれ。東宝の映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『宇宙兄弟』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia 2010」に選出され、11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。今年10月、初の小説『世界から猫が消えたなら』をマガジンハウスより発表、すでに5万部突破のベストセラーとなっている。

\

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

RYOHEI KUBOTA “RISING”

ぼくのりりっくのぼうよみ、小山薫堂らからも注目される19歳のハンドパン奏者・久保田リョウヘイの“RISING”のPV。自然に溶け込むような佇まいから生み出される、まるみのある幽玄的なサウンドと情熱的なビートに身をもたげたくなる。演奏はYouTubeを見て独学で学んだらしい。圧巻です。(飯嶋)