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「たくらむ」ための映画術 入江悠×川村元気プロデューサー対談

「たくらむ」ための映画術 入江悠×川村元気プロデューサー対談

インタビュー・テキスト
九龍ジョー
撮影:菱沼勇夫

監督は現場の思いを背負っているんですね。一方で僕は、最終的にお客さんに届く映画のカタチにしか興味がない。(川村)

入江:様々な監督と仕事されていますけど、監督選びのポイントってあるんですか。

川村:どちらかというインディペンデント映画のほうが好きなんですよ。で、単純にイチ映画ファンとしてそうした映画を観ているときに、「面白いけど、でもこの監督のホントの特技はこっちなんじゃないかな」って思うことがあるんです。それで、自分のストックしている企画の中からこれをやってもらったらいいんじゃないかなって発想をします。要は組み合わせですね。

入江:なるほど。『宇宙兄弟』の森義隆監督って、僕と同じ歳(1979年生まれ)なんです。かなりの大抜擢でしたよね。

川村:原作者の小山宙哉さんが「あまり色のついていない監督のほうがいい」と言っていて、「じゃ、若い監督でやりましょうか」というやりとりがあったんです。僕も有名な原作だから有名監督に、っていう流れよりも、どうなるかわからない監督のほうが良いなと思っていて。もちろんそれは危険もあるんですけど(笑)。でもやる前からできあがりが見えてしまうほうがもっと危険だし、多少粗くても熱のあるほうが良いと思ったんです。で、何人か監督候補を小山さんに提案した中で、小山さんが森監督の『ひゃくはち』っていうインディペンデント映画を観て、「この人の映画がすごく良い」と。じゃ、森さんでいきましょうってことになったんです。そこから会社を説得する大変さはありましたけど。

『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会
『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会

入江:なるほど。実は僕も『宇宙兄弟』の原作漫画が大好きで、またJAXAに通うぐらい宇宙も好きなんです。それでちょうどJAXAで開催された小山さんのトークショーに行ったときに、『宇宙兄弟』が映画化されることを知って。しかもプロデューサーは川村さんで、監督は僕と同じ歳っていう。それを聞いてすごく嫉妬しました。チクショウ! って(笑)。

川村:ハハハハ! 連絡くださいよ!

入江:でももう決まってたんで。で、映画を観たら、やっぱりNASAのシーンとか無茶をしてて良いなあって。

川村:アポロ11号で人類初めて月面着陸を経験した、バズ・オルドリン本人が出てますからね。もうただ僕が会いたいだけっていう(笑)。でも映画ってそうやって自分の夢を叶えてくれる場所でもありますよね。

入江:とくに僕らの世代は『アポロ13』(1995)とか、宇宙に行く映画が次々と生まれていた時代だったので、バズ・オルドリンはテンション上がりましたね! また、森さんのような若い監督との仕事もある一方で、『告白』の中島監督だったり、『モテキ』の大根監督っていうのは、すでにキャリアのある方たちですよね。

川村:『告白』のときは、まだ売れる前に原作を読んで映画化したいと思ってすぐに出版社に問い合わせをしたら、中島監督からも映画化したいと言われていると。で、中島さんとはそれ以前にある映画の企画を進めていたんですけど、頓挫してしまったことがあって、「いつか必ず一緒にやりたい」と思っていたので、それがこのタイミングで結実することになったんです。

入江:中島監督の現場って、細部までこだわることでも有名ですよね。

川村:ええ、細かいですね。

入江:しかも年齢もかなり上じゃないですか。そういう監督と渡り合うっていうのはどういう作業なんですか。

川村:渡り合わないっていうことじゃないですかね(笑)。それよりもイメージをどれくらい共有できるかっていうことが重要なので。「憲法」がしっかりできていれば、撮影現場で生まれるこだわりとか熱とか予想外のこととかはぜんぜんオッケーなんです。あとは編集の場でそれを冷静に見極める。そのためにも僕はあまり現場に行かないんです。現場の感動を編集の場に持ち込まないように。

川村元気

入江:「これ違いますよね」ってことも言うんですか。

川村:もちろん。良いものを作るためですから。ただ、すごく遠慮しながら言ってるつもりなんですけど、「お前はズケズケものを言う」ってよく怒られます(笑)。「編集のときに性格が悪くなる」って。

入江:お話を聞いてると、「たぶんそうだろうな」って思います(笑)。

川村:監督のほうは「現場で何テイクも重ねた」「俳優にも頑張ってもらった」みたいな現場の思いを背負っているんですね。一方で僕は、最終的にお客さんに届く映画のカタチにしか興味がない。なので結果として、そんなつもりではなくても、現場の思いとは違うことを言わざるをえないこともあるわけです。

入江:でも、集団作業だとそのクールな視線が重要ですよね。

川村:クールなつもりが、だんだんムキになってしまうことも多いんですけどね(笑)。

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『入江悠の追い越し車線で失礼します Driven by 三井ダイレクト損保』

毎週日曜日20:30〜21:00からTOKYO-FMで放送

リリース情報

『世界から猫が消えたなら』
『世界から猫が消えたなら』

2012年10月25日発売
著者:川村元気
価格:1,470円(税込)
ページ数:221頁
発行:マガジンハウス

リリース情報

『宇宙兄弟』(Blu-ray&DVD)
『宇宙兄弟』(Blu-ray&DVD)

2012年12月21日発売
価格:
スペシャル・エディション(Blu-ray):7,035円(税込)
スタンダード・エディション(Blu-ray):3,990円(税込)、(DVD)2,940円(税込)
発売元:東宝

監督:森義隆
脚本:大森美香
出演:小栗旬、岡田将生

リリース情報

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)

2012年11月21日発売予定
価格:3,990円(税込)
発売元:アミューズソフト/メモリーテック

監督・脚本・編集:入江悠
出演:
奥野瑛太
駒木根隆介
水澤紳吾
斉藤めぐみ
北村昭博
永澤俊矢
ガンビーノ小林
美保純
橘輝
板橋駿谷
中村織央
配島徹也
中村隆太郎
HI-KING
回鍋肉
smallest
倉田大輔

プロフィール

入江悠

1979年、神奈川県生まれ。監督作『SRサイタマノラッパー』(2009)が『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』でグランプリ、『富山国際ファンタスティック映画祭』で最優秀アジア映画賞を受賞。同シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(2012)では野外フェスシーンに延べ2000人のエキストラを集め、インディペンデント映画として破格の撮影規模が話題となる。

プロフィール

川村元気

1979年生まれ。東宝の映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『宇宙兄弟』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia 2010」に選出され、11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。今年10月、初の小説『世界から猫が消えたなら』をマガジンハウスより発表、すでに5万部突破のベストセラーとなっている。

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