インタビュー

松本人志インタビュー 僕は最初から「ドM」じゃなかった

松本人志インタビュー 僕は最初から「ドM」じゃなかった

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:菱沼勇夫

誰もやったことのないものをやるのが面白いっていうのは、正直僕にとっては当たり前のことだと思ってるんですけど……。意外とそうでもない人たちが多いんですよね。

―これまでの松本さんの作品を観ていると、「誰も見たことのないもの」「誰も感じたことのないもの」を作りたいという強い意識がある一方で、やはり最終的には人を楽しませるエンターテイメントに帰結したいという願望も感じます。松本さんにとって、映画やエンターテイメントとは、どのように定義づけられているものなんでしょうか。

松本:僕はお笑いを30年以上やってきてるから、映画の中にそれほど笑いを詰め込まなくてもいいなって、最近特に思うんです。例えば、格闘家がKOされて失神してるのに、まだ身体が反応してしまうってことがありますよね。僕もそれに近いものがあって、身体にお笑いが染みついているから、意識しなくても勝手に出てくるものがあると思うんです。映画では、その勝手に出てしまった部分を楽しんでもらう程度でいいんじゃないかなって。

―なるほど。

松本:エンターテイメントとしての笑いに関しては毎日テレビでやっているから、映画ではもうちょっと違うものをやらんとあかんと思う。僕がコメディーや喜劇みたいなものを映画で撮っても、それほど面白くならないと思うんですよ。それだったら、浜田と二人で喋ってる方が笑いの量は多いだろうし。

―映画を撮り始めた頃のインタビューで、「思い浮かんだアイデアが過去の映画や小説とかぶってないか、慎重に確認する」と話されていましたね。

松本:誰もやったことのないものをやるのが面白いっていうのは、正直僕にとっては当たり前のことだと思ってるんですけど……。意外とそうでもない人たちが多いんですよね。

―そうかもしれないですね。

松本:当然失敗する可能性も大きいんですよ。だから、他の作家はなかなかそのリスクを背負うことができないのかな、とも思う。でも、僕の強みは別に失敗してもいいってこと。未知のことをやっているわけだから、そりゃあ失敗することもありますよ。100%成功することがわかっていたら実験じゃないですから。

松本人志

―例えば『しんぼる』が公開された当時は、非常に実験的な作品だと賛否両論がありました。でも、今あらためて観直してみたら、実は『R100』に近い部分もあったり、たしかに実験的でしたけど、必ずしも失敗はしてないですよね。

松本:それは僕の経験値とずるさがあって、実験とは言っていてもどこかで受け身もとれるようにしてるんです(笑)。『ガキの使いやあらへんで!!』なんかは、年間通じていろんな企画をやっていて、当然失敗もあるけど、そこで鍛えられている。あんなに実験している番組って他にないですもんね。実験は続けていかなあかんと思うし、そこから生まれてくるものが絶対にあるから。

―そういった、松本さんの作品作りにおける実験的な部分が、海外の映画祭などでは「非常に独創的」と高い評価を受けている一方で、いまだ日本の映画界からの評価は定まっていないようにも感じます。そこにジレンマを感じられたりはしませんか?

松本:うーん……。日本で僕の映画を面白いって言ってくれる人は、そもそも僕のことを好きな人だと思うし、面白くないと言う人は、そもそも僕のことが好きじゃない人だと思うんですよね。だから映画に関して、国内の評価はあまり参考にならないかも、と思っているんです。一方で海外の人はダウンタウンの松本人志を知らないから変な先入観がないし、1人の外国人監督の作品として観てくれる。その人たちの素直な評価は、ある程度信じていいのかなって思っています。

―外国人の感性ざっくりしすぎ、とか思ったりしませんか。

松本:むしろ逆じゃないですか?

―細かいニュアンスまでキャッチしてくれますか?

松本:海外の人のほうが映画を観ることに対して真面目だと思う。どっちがいいかっていうことはさておき、そういう感触があります。

―1本の映画作品として観てくれている?

松本:そうですね。日本の人たちに伝えたいのは、もうそろそろ、「松本人志=お笑い」、という先入観を捨てて映画を観てほしい。たくさんの人たちが「いい」と言ったから素晴らしい、周りの人がつまらないと言ったからつまらない、というのは、本当にバカげた話なんですよ。

―そういう意味では『R100』は、相当挑戦的なタイトルですよね。100歳以上でなければこの映画は観てはいけない、理解できない。つまり僕らも松本さん自身も観てはいけないし、理解できない(笑)。

松本:そのとおりですね(笑)。

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作品情報

『R100』

2013年10月5日(土)から全国ロードショー
監督・脚本:松本人志
出演:
大森南朋
大地真央
寺島しのぶ
片桐はいり
冨永愛
佐藤江梨子
渡辺直美
前田吟
YOU
西本晴紀
松本人志
松尾スズキ
渡部篤郎
配給:ワーナー・ブラザース映画

プロフィール

松本人志(まつもと ひとし)

1963年、兵庫県尼崎市生まれ。82年、浜田雅功とダウンタウンを結成。89年に『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』(日本テレビ)が放映開始。91年に始まった『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ)では、テレビにおけるコント番組のあり方を一変させた。93年のオリジナルビデオ作品『ダウンタウン松本人志の流 頭頭』を皮切りに、映像作品の監督にも着手。『HITOSI MATUMOTO VISUALBUM』シリーズでは、新作コントを次々発表。07年に『大日本人』で映画監督デビュー。以降、『しんぼる』(09年)、『さや侍』(11年)を手がけ、今回の『R100』は第4作目にあたる。

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