METAFIVEの新作が早くも到着。その奔放な表現手法を語る

近年稀に見るほど濃厚なリリースラッシュが続く2016年の音楽シーンを振り返っても、「METAFIVEの1年だった」という人は決して少なくないだろう。待望されたデビューアルバム『META』を1月に発表し、『WORLD HAPINESS』をはじめとした夏フェス出演の合間には、ライブ作品『METALIVE』もリリース。

そして、アルバム発表から1年経たずして新作『METAHALF』を完成させ、11月30日からは初のワンマンツアー『WINTER LIVE 2016』が行われる。このツアーは2014年の1月に行われた『テクノリサイタル』からスタートした「METAFIVE期」の集大成とも言うべき、必見の内容となるはずだ。

今回の取材では、TOWA TEI、小山田圭吾、LEO今井の三人に、『META』を経て、より自由度を増したバンドの現在地について語ってもらった。METAFIVEは『WINTER LIVE 2016』をもって、一区切りを迎えることになりそうだが、来年はそれぞれのソロの新作が控えているという。まだまだ、楽しみは続きそうだ。

前はわりと最初に作った人が作り込む感じがあったのに対して、今回はもうちょっと密度が減った気がする。ある意味、人任せな感じ。(小山田)

―アルバムから1年以内にまた新作が聴けるとは思っていませんでした。

小山田(Gt,Cho):僕たちも最初は新作を作るつもりはなかったんです。ライブDVDが出ることになって、おまけで1~2曲作るつもりが曲を出し合ったら5曲になった。「じゃあ、ミニアルバムにしようか」という感じでした。

TEI(Syn,Noises,Programming):例えば、“Peach Pie”はもともと新曲を作ろうと思って作ったわけではないんです。「こういう曲があってもよくない?」ってLEOくんに聴かせたら、歌詞を作ってきた。さらにまりん(砂原良徳)が「この続きやっときますよ」って、「ゴールは俺が決めます」という感じで、できていきました。

METAFIVE
METAFIVE

―前作のアルバムの取材では「濃い作品になった」とおっしゃっていたので、今回はカロリー半分のイメージで作品を作ったのかと思っていました。

LEO(Vo,Syn,Gt,Programming):A面のみって感じですよね。だから通して聴けると思います。

TEI:前作は6曲目の“Anodyne”を聴いたら1回休憩して、「さあ、(7曲目の)“Disaster Baby”聴くぞ」って感じだったけど、今回はストンと最後まで聴ける。何ならもう一回頭からループしてもいいな、というようなね。

―「ハーフだから6曲にしよう」とはならなかったんですか?

LEO:それは思いました。でも5曲できあがった時点でボリューム感があったから、わざわざ作り足す必要ないな、と。

―『META』では「1人2曲」という分担と、まりんさんがおっしゃっていた「体が動くような感じ」がベースのコンセプトになっていましたが、『METAHALF』を作るにあたってそういうコンセプトはあったんですか?

TEI:今回はそういうのはなくて、それぞれが「こういうのMETAFIVEにいいんじゃない?」っていうのを持ち寄りました。今回はまりんがマネージャーから「リード曲を作れ」って言われていたらしくて、まりんは「十字架を背負っていた」と言ってました(笑)。それでまりんは“Musical Chairs”を作っていたから、他のメンバーが自由に“Egochin”をいい意味で無責任にやっているのがすごく羨ましかったって言ってましたね。

―誰かが元になる曲を作って、それに音を足していくという作り方は変わらずですか?

小山田:変わっていないけど、前は最初に作った人が作り込んでいたのに対して、今回は密度が減った気がする。ある意味、人任せな感じ。“Egochin”は特にそうだった。

TEI:“Egochin”は幸宏さん(高橋幸宏)とゴンちゃん(ゴンドウトモヒコ)が作っていて、途中から僕も作曲に加わりました。逆にさっきリード曲って言った“Musical Chairs”では、僕は何もやってないんです。逆にまりんは“Egochin”では何もやってないんですよ。

―必ずしもメンバー全員が関わらなくてもいい。それぐらい自由度が広がっていたんですね。

小山田:いろんな混じり具合があるのが面白いよね。今回LEOくん発信の曲はないけど、その代わり全曲の作詞作曲に絡んでたりする。

TEI:僕はCDジャケットのデザインだけでもいいですけどね。もしくは、みんなのメールに対して一番最初に「いいね」って返す役でもいいです(笑)。

ロマンティックなノイローゼ、まさしく彼(高橋)のことじゃないですか(笑)。(LEO)

―具体的に曲についてお伺いすると、“Chemical”は小山田さん発信の曲ですね。

小山田:夏にCORNELIUSでアメリカツアーが決まっていて、忙しくなるかもしれなかったので、出し逃げした方がいいと思って早めに作りました(笑)。『META』のときはまりんが手弾きでシンセベースを弾いてたけど、エレキベースの曲はなかったので、ベースとドラムのパターンだけ作って、メロディーはLEOくんに投げました。

TEI:こういうアップテンポな曲ってなかったよね。“Gravetrippin'”とかも速いけど……。

小山田:“Gravetrippin'”はもっとメロディアスだね。“Chemical”はもうちょっとジャーマン(ロック)っぽい。

TEI:そうそう、クラウト(ロック)っぽいと思った。聴いて自主的に入れようと思ったのが、ブクブクっていう泡の音。ああいう効果音を入れる発想は、クラウトっぽいイメージが伝わってきたからだと思う。なので、たぶんタピオカを飲む用だと思うんだけど、「これなら低い音出るな」というような、Amazonで一番太いストローを買ったんです。

小山田:Amazonでストロー買ったんだ(笑)。あとシンセも入れてたでしょ?

TEI:“ライディーン”(YMOの代表曲)みたいなテケテケテケテケっていうシーケンスを入れました。「ライディーン」って書いてあるプリセット音をちょっといじって使ってます。YMOのメンバーが一人いるから、臆面もなく使える(笑)。

METAFIVE

―最初にも名前が挙がりましたが、“Peach Pie”はTEIさん発信なんですよね?

TEI:そうですね。最初はギターとトランペットしか入ってないダンスっぽい感じだったから、LEOくんがこんなに歌を入れてくれるとは思ってなかった。その後「仕上げは僕がやります」って、まりんがやってくれた。10歳くらいまでは僕が育てたけど、あとは全部まりんが育て上げたって感じですね。

―生みの親がTEIさんで、育ての親がまりんさんだと(笑)。

TEI:ホント曲ごとに作り方が違うのがいいよね。曲作りのフォーメーションができちゃうと終わりかなって思う。

―アルバムを一枚作って、METAFIVEとしての方法論が固まった部分もありつつ、逆によりフリーフォームになったとも言えそうですね。

TEI:僕とまりんは音楽の広い銀河系の中でもわりと近くにいるので、「必ず二人とも関わらなくてもいいんじゃない?」っていうことをよく話してます。出来がよければ、直接関わらなくても「これでいいじゃん」って思える。隙間があれば1音でも多く音を詰め込みたいって人はMETAFIVEにはいないんです。ゴンちゃんだって全曲吹いてるわけではないし。

―だからこそ“Peach Pie”でのトランペットのソロはとても効果的ですよね。

TEI:この曲、ゴンちゃんおいしいよね。紫色のスポットライトが当たりそうなイメージ(笑)。

METAFIVE

―作詞は全体にわたってLEOさんなんですか?

LEO:“Egochin”はTEIさんも書いてますけど、あとはだいたい僕ですね。

TEI:幸宏さんも歌詞を書く人ですけど、「書かなくてもいい」っていう選択肢もあるってことですね。でも、この間飲んだときに、幸宏さんが歌詞のことで何か言ってたよね?

LEO:もうちょっとリリカルというか、悲しげで柔らかい感情を伝える歌詞にフォーカスしていきたいって話をしてましたね。

TEI:自虐的な詞が多いって、自分で言ってましたね。『NEUROMANTIC』(1981年に発表された高橋幸宏の3枚目のソロアルバム)も、ニューロマ(1970年代後半のロンドンでニューウェイブから派生した音楽ジャンルのひとつ)と「NEUROTIC(神経症の・神経症者)」をかけてたわけだし。

LEO:ロマンティックなノイローゼって、まさしく彼のことじゃないですか(笑)。

今は情報がタイムラインで色々あがってくるから、一つひとつの情報の強さは薄まっている。むしろタイムラインにあがってこないものが面白い。(TEI)

―TEIさんは以前「2015年のお気に入り」としてBATTLES(アメリカのエクスペリメンタルロックバンド)を挙げていましたよね。彼らの音源はもはや、生演奏なのか打ち込みなのかわからないような奇妙な形になっている。でもライブだとフィジカルなかっこ良さがありますよね。METAFIVEに関しても、「生演奏と打ち込みの融合をさらに更新する」というような視点がありますか?

TEI:METAFIVEはレコーディングユニットでありつつ、ライブバンドだとも思ってます。ライブだとみんな前のめりになるから曲のテンポを上げたりするし、普段からわざわざ打ち込みだ、生だって分けない人たちなので、自然なんだと思いますね。

―レコーディングはレコーディングの良さがありつつ、やはりライブではフィジカルを重要視しているってことですね。

小山田:パソコン開いてジーッとしてる人をライブで観てるのは面白くないだろうしね(笑)。

TEI:エレクトロニカ全盛の頃はホントそういうライブが多かったよね。MacBookをジーッと見てて、「Amazonで買い物してんじゃないの?」って(笑)。DJだってそういう人もいるかもしれない。METAFIVEはそういう「やってる振り」みたいなのはないです(笑)。

―「生演奏と打ち込み」という観点ではなくても、2016年に聴いた作品の中でMETAFIVEの曲作りの参考になったようなものってありますか?

小山田:マイブームみたいなのはちょいちょいあるんだけど……特にこれっていうのはないかな。

TEI:僕にもマイブームはあって、相変わらずレコードは掘ってる。ここ2日くらいは1990年代のヒップホップしか聴いてないし、その前はずっとファンキーめのジャズを聴いてたり。

ネガティブな意味ではなく、最近は新しい音楽にそんなに期待していないというか。BATTLESのライブは確かに今まで見たロックとは違うすごさがあったけど、そういう衝撃はここ最近はほとんどないかな。CORNELIUSは映像を使ってライブやり始めたのは15年前とか?

小山田:初めてやったのは20年くらい前かな。

TEI:そのときは「日本のCORNELIUSが」みたいな噂をよく耳にしましたね。今は情報がタイムラインで色々あがってくるから、一つひとつの情報の強さは薄まっている。なのでむしろタイムラインにあがってこないものが面白いんじゃないかな。

中古レコードを肯定するのもその理由で、サブスクリプション(Apple MusicやSpotifyをはじめとする定額制音楽ストリーミングサービス)に上がってる曲には僕が毎日聴いてるようなレコードはほとんどない。別に今を否定してるわけじゃなくて、新しい古いは関係なく、マジョリティーが全てじゃないっていうことなんですよ。やっぱりマイブームの方が大事なんじゃないかって思いますね。

年末のライブをもって活動自粛です(笑)。まあ、自然とそれぞれの活動に戻るって感じなんじゃないですかね。(TEI)

―LEOさんは今年9月に3年ぶりのワンマンを開催していますが、METAFIVEの活動がソロ活動に刺激を与えている部分も大きいのではないかと思います。

LEO:ワンマンライブ自体は10周年っていうのが一番の理由だったので、METAFIVEの活動と直接関係があったわけではないんです。ただ、ひとつプロジェクトが増えると、自然にグルーピングしますよね。「この曲はMETAFIVEっぽすぎる」とか「これは自分のソロでやろう」というのは、これから出てくるんじゃないですかね。

小山田:そういうのは僕もあると思う。METAFIVEでやってるようなことは、自分のではやらなくてもいい。

TEI:小山田くんは自分のソロではリードで歌う人だけど、METAFIVEでは歌わないしね。

―CORNELIUSの新作はだいぶ制作が進んでいるそうですが、METAFIVEでは歌っていない分、歌の割合が増えてたりしますか?

小山田:うん、ほとんど歌ものです。METAFIVEだけじゃなくて、ここ10年で作品自体は色々作ってるから、いざ自分でやるとなったら、歌うことぐらいかな(笑)。

―TEIさんもソロの新作が完成間近だそうですね。

TEI:僕が最初のソロを作ったときって、流れで作ったんですよ。何となく当時やってたバンド(Deee-Lite)と方向性がずれてきて、そのときソロを「いいじゃん」って言ってくれたのが教授(坂本龍一)だったんです。「レーベル作るから出そうよ」って、ケツを叩かれて出したのが『Future Listening!』(1995年)っていうアルバムで、「Deee-LiteのTOWA TEIソロアルバム」だった。そう考えると、次に出るアルバムは「METAFIVEのTOWA TEIソロアルバム」ということになるんですね。

―確かに、そういう見え方にもなりますよね。

TEI:実際には、METAFIVEとの共通項もあれば、絶対やらないような曲も入っているけど、僕の場合はMETAFIVEで歌ものをやってる分、ソロではインストが多くなりそうです。みんな参加してくれてるから、METAFIVEっぽさもありつつ、一方で女の子も参加してる。METAFIVEとイコールではないんだけど、全然違うものでもない。そこは面白いですね。LEOくんにソロアルバムの1曲を「これMETAFIVEでもよくない?」って聴かせたら、「これなくなっちゃうと、ソロアルバムのリード曲がないんじゃないですか?」って言われた(笑)。

小山田:心配してくれたんだ(笑)。

TEI:「こいつ意外と社会性あるな」って(笑)。

―METAFIVEがあることによって、それぞれのソロがどうなるかも気になる。二重の楽しみが生まれるとも言えそうですね。

TEI:METAFIVEの活動自体この先10年もあるものじゃないし、もしかしたら最初で最後のMETAFIVE活動期中のソロアルバムかもしれないしね。

―今年はアルバム、ライブ作品、ミニアルバムと活発なリリースがあって、ライブの本数も多かったですけど、このペースがずっと続くわけではないということですね。

TEI:年末のライブをもって活動自粛です(笑)。まあ、自然とそれぞれの活動に戻るって感じですね。

METAFIVE

―pupaにしろIn Phaseにしろ(共に高橋幸宏がメンバーのバンド)、幸宏さんは解散を明言してるわけじゃないし、METAFIVEもそうなるのかなって思っています(笑)。

TEI:そっか、幸宏さんはバンド作るのが趣味なのか(笑)。

―METAFIVEでの活動を通じて改めて感じた高橋幸宏という人の魅力はどんなところですか?

TEI:いつもファッショナブルで、浴衣がはだけた状態とか見たことないですね……浴衣姿自体見たことないけど(笑)。食べるし飲むし、ホント元気ですよね。

小山田:うん、僕らみたいな人たちとワイワイやれるのがすごいなって思う。

LEO:幸宏さんはドラムの音がでかい。体が大きいわけじゃないのに、パーンっていい音がする。あれがすごいですね。

TEI:あとはやっぱり、幸宏さんがいないとMETAFIVEは成り立たないですね。まあ、LEOくんがいなくなっても考えられないか。僕は別にいなくても大丈夫だと思うんですけど。

小山田:僕もいなくて大丈夫だと思う(笑)。幸宏さんとLEOくんがいれば、何とかなる。

TEI:いずれは「METAFIVEです」って、二人でステージに上がってたりしてね(笑)。

リリース情報
METAFIVE
『METAHALF』(CD)

2016年11月9日(水)発売
価格:1,944円(税込)
WPCL-12456

1. Musical Chairs
2. Chemical
3. Egochin
4. Peach Pie
5. Submarine

イベント情報
『METAFIVE “WINTER LIVE 2016”』

2016年11月30日(水)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO
料金:7,500円(ドリンク別)

2016年12月1日(木)
会場:大阪府 なんばhatch
VJ:YUGO NAKAMURA(tha)
料金:1階7,500円 2階指定席8,500円(共にドリンク別)

2016年12月3日(土)
会場:東京都 お台場 Zepp DiverCity
VJ:YUGO NAKAMURA(tha)
料金:1階7,500円 2階指定席8,500円(共にドリンク別)

2016年12月5日(月)、12月6日(火)
会場:北海道 札幌 ペニーレーン24
VJ:YUGO NAKAMURA(tha)
料金:7,500円(ドリンク別)

プロフィール
METAFIVE
METAFIVE (めたふぁいぶ)

高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井。それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2014年1月に六本木EX THEATERのオープニング企画として行われた、「高橋幸宏&METAFIVE」としての一夜限りのスーパー企画として結成され、その後不定期に活動を続行。同年の『TAICOCLUB'14』『WORLD HAPPINESS 2014』『SPACE SHOWER TV 開局25周年×攻殻機動隊25周年×日本科学未来館』、2015年の『WORLD HAPPINESS 2015』『OTODAMA'15~音泉魂~』に出演。圧倒的な存在感を示し、大きな賞賛を得る。2016年1月にオリジナルアルバム『META』をリリース。アルバム発売直後に行われたEXシアター六本木でのライヴを全曲完全映像化した作品『METALIVE』を8月にリリース。11月9日にはオリジナル曲5曲を収録したミニ・アルバム『METAHALF』を発売。



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