不確定な健康情報をどう見抜く? 医師と美容薬学モデルが考える

インターネットにより、私たちは欲しい情報がすぐに手に入るようになった反面、膨大な情報に振り回されることも多くなった。とくに昨年からのコロナ禍では、混乱する状況のなかでさまざまな健康情報が発信され、何を信じていいかわからなくなった人も多いだろう。

コロナ禍にかぎらず、これまでも医療・健康の分野ではネット上に出ている情報の信憑性について問題視されてきた。誤った情報が表示されないよう検索エンジンの仕組みもアップデートされてきたが、私たち情報を探す側ができることには何があるだろうか。

西洋医学と漢方医学、両方を取り入れて診療を行う正木稔子医師は、症状が起こる仕組みから患者に説明を行うことで、情報を判断するための知識をもってもらうことを大切にしているという。また、健康や美容についてSNSや多くのメディアで発信を行うモデルの千國めぐみさんは、情報を正しく判断するために資格を取り、健康を保つ方法のひとつに漢方を取り入れている。

自分にとって価値ある情報を選び、普段の暮らしに取り込み、健やかに生きていくにはどうすれば良いのだろうか? 健康にまつわる知識をもったふたりがたどり着いた、漢方薬という選択肢を軸に語ってもらった。

情報の選び方は、その人の生き方につながる

―千國さんはモデルや俳優のほかに、美容家としてメディアやSNSなどで健康や美容に関する情報を発信されていますが、発信した内容に対して、ファンの方々からどんな声を聞くことが多いでしょうか。

千國:健康や美容のことに対して、「どうしたらいいですか?」と答えを求められることがよくあります。しかし私はその人の身体の状態を理解しているわけではないので、答えようがなくて困ってしまうんです。おそらくその人自身も、自分の身体がどういう状態にあるのかわからないまま答えだけを求めていると思うんです。

ファンの方々には、私が発信する内容を全部信じてくれている人もいるのですが、「私の身体には合いましたけど、万人に効くとは限りません」っていうのは必ず言うようにしていて。

人それぞれ体質も体格も違うのだから、私の情報をそのまま全部受け止めなくてもいい。「私は違う」という意見もあっていいし、「わからない」と、そのままスルーしてくれてもいいと思っています。

―いま、コロナ禍の混乱のなかで、いろんな健康情報が飛び交っており、それに振り回されて心や身体が不安定になる方も多いと思います。正木先生が医療の現場で感じることはありますか?

正木:そういう方、多いですね。私がいちばん感じるのは、情報に振り回されてしまう人は、判断基準となる軸を持っていないこと。その状態で情報をたくさんインプットしても結局迷ってしまうことが多い。

だから私は患者さんに「この症状が出ているのはここが悲鳴を上げているというサインだよ」と、医学の理論からお伝えするんです。そうすると患者さんの知識がアップデートされて、自分で考えられるようになっていく。ネットにある答えを探し求めて振り回されるんじゃなくて、「先生、これで合っていますか?」と言えるようになる。

ただ、そうやって信頼して話せるお医者さんや薬剤師さんがいないという人も多いんです。「この先生だったらわかってもらえる、自分の傾向を知っている」という、行きつけの先生を見つけて相談してみてほしいです。

千國:ネットにある記事は、読者の目に止まりやすいようわかりやすく表面的に書かれていることも多い。それ自体はしょうがないと思います。大事なことは、読み手がそれを自覚しているかどうか。

私自身、肌がすごく荒れて何をしても治らなかった時期があり、ネットで調べてみたら、あれはダメ、これはダメという情報ばかりが出てきて。そのとき、「全部信じていたらワセリンしか塗れないじゃん」「なんでネガティブな情報しか出てこないんだろう」と思ったことがありました。

―ネガティブな情報に振り回されないために、気をつけていることはありますか。

千國:勉強ですね。情報に惑わされないためには知識をつけるのが手っ取り早いなと思ったんです。

成分のはたらきがわかる化粧品成分検定や、漢方の理論に基づき、自分の体質に合った生活を実践、指導できる漢方養生指導士など、興味のある分野の資格を取りました。

また、私は不調のとき、漢方薬局にいる薬剤師の方にも相談しています。漢方薬局とは、漢方を専門とする薬剤師が患者の症状をヒアリングして、症状に合った漢方薬を処方してくれるところ。私が相談している薬剤師の方は30分くらいかけて症状を聞いて、漢方薬を出してくれます。私の場合は漢方薬局でしたが、病院にかかる場合でも、相性の良い先生を見つけられるとラッキーだなと思います。

―自分に合った先生を見つけるコツはありますか?

正木:評判がいいからといって、自分に合うかといったら、そういうものでもない。ただし、話を聞いてくれるかはポイントのひとつだと思います。患者さん側もコミュニケーションを心掛けてほしいですね。特に漢方は、いろんなことを聞かないと判断がつかないので(※1)。

千國:私はその漢方薬局がどのくらい続いているのか、どのくらいの患者さんが通っているかを調べてますね。いまはオンライン相談をやっている漢方薬局や病院が多いから、より身近になったかもしれない。

正木:自分にとって何が必要な情報なのか、実際に先生に会って相談することは大事。究極的には、情報を選びとっていくことは生き方の問題にもつながってくると思うんです。

―生き方の問題ですか?

正木:患者さんと向き合って、なぜ治りたいのか、どういう方法で健康を維持したいのかという理由を聞いていくと、最終的にどう生きていきたいのかという問いに行き着くんです。

私は以前がん治療をおこなっていましたが、がんでも標準治療(科学的根拠に基づき、現時点で可能な最良の治療)を受けたくないという方もいて。その方に標準治療を押し付けることが、本当にいいことなのかはわからないですよね。もちろんすごく話し合いますけど、最終的に何を選ぶかは治療を受ける人の生き方の問題になってくる。

―どう治したいか、自分がどう生きたいのかまで考えることは、あまりなかったかもしれません。

正木:同じ症状でも、患者さんによって求めている治療は違います。たとえば、のどの違和感で来院する方で「自分はがんではないのか?」だけを知りたい方もいれば、「とにかく症状を取ってほしい」という方もいる。それに応じてアプローチが変わってきます。ゆっくり話を聞いていかないと、患者さんが求めているものがわからないんです。だから患者さん側も、何を求めて病院に行くのか、自分で認識することも大事だなと思います。

千國:私の場合はオタク気質の凝り性で、興味があることはとことん深堀りする癖があります。漢方養生指導士の資格を取ったのもまさにそれだった。身体の不調もどうして起こっているのか、原因から知りたいと思ってしまいますね。

「未病の概念を知らないと、いつまでも病気を探してしまう」

―ネットの情報に答えだけを求めてしまう人には、どんな傾向があると感じますか。

千國:私の想像だと、「不調」という状態を察知できない人が多い印象です。たとえば生理痛を「痛くてあたりまえ」として深く考えずに過ごしてしまう。気分が晴れないのはなんでだろうとか、どうしてこんなにイライラするんだろうとか考えることなく、自分の身体に起こっている変化に無頓着になってしまっている。

特にいまの病院は西洋医学が中心だから、病名で診断されないと身体が不調だと気づかない人は多いと思います。

―西洋医学と東洋医学では、病気の判断基準が違うのでしょうか。

正木:西洋医学と東洋医学では得意分野が違います。西洋医学は「病気」になってしまったものに対しての治療法がすごく発達している。一方で、漢方医学では病気になる前の段階の「未病」の治療を得意としています。たとえば、手術自体は西洋医学の分野ですが、手術後の体力回復には漢方薬が絶大な役割を果たします。

―未病、とはどういう状態でしょうか。

正木:病気として診断されないけれど、症状はあるという状態です。たとえば生理痛の場合、身体に異常が見られない場合でも痛みが発生し、生活に支障をきたすこともある(※2)。

西洋医学の薬でも痛みを軽減できますが、東洋医学の漢方では症状を根本から改善するよう、体質の改善にもアプローチできる。未病の概念を知らない方は多いので、もっと知られたらいいなと思います。

千國:このあいだも、ずっと耳がふさがった感じがあって耳鼻科に行ったんですけど、検査しても何も見つからなくて。「なんだよー!」と思って漢方薬局に行って薬剤師の方に症状を話したら、ストレスによって上半身に不調がきていると言われて。その症状を緩和する漢方を出してもらって飲んでいるうちに治ったんです。「もしかして私、耳のなかになにか異物ができているんじゃないか?」という疑問にとらわれすぎていたら、ずっと病院をグルグルしていたような気がします。

正木:未病の概念を知らずに、いつまでも病名を探し続ける人は多いですね。東洋医学の教科書ともいわれている『黄帝内経』によると、女性は7の倍数、男性は8の倍数の年齢で身体が変化するといわれています。人間は必ず歳をとる。自分の身体が変化することを大前提として認識して、「これは起こって当然の変化」って対処していくことが大事。

たとえば年齢を重ねて白髪が出てきたとき、悲観的になるのではなく、白髪が出てきたらそろそろ生活スタイルを変えようとか、仕事の仕方を変えようとか、受け入れて対処していけばいい。これは諦めとは違います。それに気づかないと、体力が落ちているのに若いときと同じように頑張って、「なんか最近疲れが取れないな」って言いはじめてしまうんです。

(※2)参考記事:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「月経痛(生理痛)」

健やかに暮らすための「心身一如」に基づく漢方の考え方

―東洋医学や漢方の有効分野(※3)について、もう少し詳しく教えていただけますか?

正木:メンタルによる身体症状の改善も、漢方の得意分野です。この前いらっしゃった患者さんは、「喉が詰まる感じがする、空気を飲んでしまう」と問診票に書かれていて。これは漢方に詳しくない先生だと「ふ~ん」っていう感じで終わっちゃう。

千國:そうなんです! この前の耳鼻科では、まさにその対応をされました。

正木:漢方には「心身一如」といって、心と身体はひとつであるという考え方があります。それは私が専門にしている耳鼻科だけじゃなくて、ストレスでお腹が痛くなる方もいるし、肩こりがひどくなる方もいる。いろいろなところに症状が出ます。

千國:まさに私も喉が詰まるとか、鼻の奥が苦しいみたいな症状があって、漢方でよくなった経験があります。

正木:不眠症ひとつとっても、たとえば仕事を抱えすぎて寝る直前まで仕事のことを考えてしまい、夢のなかでも仕事をしている方と、不安なことがあって不眠になっている方に出す漢方は違います。だから、患者さんの話をしっかり聞く必要があるんです。

千國:症状の原因がわかって緩和されると、ストレスに対する姿勢も変わる気がします。安心できるし、「ま、いっか」みたいなテンションになれる。私の場合も症状の原因によって漢方を使い分けています。

―日々、ストレスを抱えて過ごしている人は多いと思います。ストレスの多い状況でも健やかに暮らすためには、何が大事だと思いますか?

千國:私の場合、極端な意見や断定した言い方をしている意見は、「ふーん、そうなんだ」くらいのテンションで受け止めるようにしています。いろんな角度から考えたいから、1個の材料で決めることはしません。自分に合っているかもわからないので。

健康を害する要因として、「ストレスが生まれやすい社会システム」だと理解しておくといいような気がします。だから、自分や誰かがイライラしていても仕方ない。「誰のせいでもない」っていうマインドでいることかな。

正木:客観的な視点から自分を見ることは、とても大事だと思います。私は、週に一度は自分と向き合うようにしています。

ライフスタイルでは、お風呂に浸かることと、運動のためにヨガをすることを毎日の習慣にしています。また、食事は本当に基本の基本ですよね。いま食べているもので人間の身体はできていますし、15年後の自分の身体にも影響してくるから。

(※3)参考記事:女性の健康推進室 ヘルスケアラボ「女性と漢方」

企業情報
株式会社ツムラ

カラダやココロのバランスを保つための漢方情報、養生などの大切さをお伝えします。ライフスタイルに“漢方の知恵”を取り入れてHAPPYな毎日を過ごしましょう。
ツムラは、「自然と健康を科学する」という経営理念のもと、漢方薬を通じて人々の健康に寄与し、豊かな生活環境づくりの実現とともに、女性のライフステージのサポートを目指しております。
ウェブサイト情報
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Women's Health Action×CINRAがお届けする、女性の心とからだの健康を考えるウェルネス&カルチャープラットフォームです。月経・妊活など女性特有のお悩みやヘルスケアに役立つ記事、専門家からのメッセージ、イベント情報などをお知らせします。
プロフィール
千國めぐみ (ちくに めぐみ)

モデル・俳優。美容薬学検定、化粧品成分検定や漢方養生指導士など美容と健康に関する幅広い知識をもち、WebメディアやSNS、ファッション雑誌等で情報発信を行う。

正木稔子 (まさき としこ)

医師。耳鼻咽喉科を専門領域とし、西洋医学に漢方を取り入れたスタイルで診療を行う。現在は診療業務と並行し音楽一座HEAVENESEの専属医や講演活動なども行っている。



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