連載:あの人と街の記憶

下北沢とセントチヒロ・チッチの記憶。何十歳も年上の友達がくれた、ズキッと刺さる大好きな言葉

日常が大きく変化したいま、「どこで誰と何をして生きていくか」という話題は、多くの人に共通するテーマに発展したように思います。

知らない街の景色を思い浮かべてみたり、そこに生きる人々の温度を感じたりすることは、これからの生き方を考える、ひとつのヒントになるのかもしれません。

この連載「あの人と街の記憶」では、さまざまな表現者が、思い入れのある街と、そこで出会った人との思い出やエピソードを私的に綴ります。8回目は、音楽家のセントチヒロ・チッチさん。下北沢で出会った、年齢も職業も異なるいろんな友達との思い出を綴ります。

「音楽に出会わせてもらった瞬間は、この街が一番多かった。そしてほんとの『友達』というものを知った場所」

薄暗い朝、汚れた駅前のシャッター街、寝転ぶおじさんを野良猫が2匹見つめている。アスファルトがベッドになるなんて平和な街かもしれないなぁなんて思ったり。そんな光景がくっきりと記憶に刻まれている。

私の下北沢の記憶は濃い~ものばかり。
東京出身と言えど、私の地元八王子はとっても田舎で、都内に出る時は「東京行ってくる」と言うくらい端っこに位置しているから、下北沢は田舎者の私にとって天国みたいな街だったのです。

ここにはスーツの怖い人が道に立ってないし、ずっと聴いていただいすきなバンドが立ったライブハウスがいくつもある。街に並ぶかわいい古着、南口を歩くと美味しそうな匂いがいつもした。なんだかここだけはゆっくり時間が流れているように感じて不思議だった。

音楽に出会わせてもらった瞬間は、この街が一番多かった。そしてほんとの「友達」というものを知った場所。

おっきな事件がなくても特別なことがたくさん降ってくるのです。何かに失敗したっていじわるされたって胸糞悪いこと言われたって、ここに来れば友達がいた。大好きな場所があった。

友達って言っても同世代だけじゃなくて、何個も年下の人もいれば60代のおじさまもいる。音楽や映像をつくる仕事をしている人もいればプロレスをしていたり、OLもいればお洋服をつくる人もいるしお芝居をしている人もいて、そこで出会う人たちはとにかく駄菓子の詰め合わせみたいだった。

歳が近いからこそ何でも話せるなんて思ってた昔の自分に馬鹿だなぁと言ってやりたい。だって私らしく生きていいんだよって教えてくれたのは何十個も離れたおじさま達で、生きることを超楽しくさせてくれた。

私よりずっと長く生きてきた人たちは、幸せそうでいまも自分が面白いと思う方向に向かって歩いている。スーパー現役! そりゃ興味が湧かないわけなくて、とにかくたくさん話した。話して話して話しまくった。人生で何度も訪れる選択肢のなかで、この時間がいくつも隠れてた方向を教えてくれてた。

別にお酒がなくたっていいんです。このお店で大好きなアボカドフライとガトーショコラがあれば6時間はいけちゃう。

「自分だけのYESを探し続けなさい」。ある日、おじさまに言われた。
この言葉が大好きだし、ズキっと刺さっている。だからいまもこれからも、ずっとこの言葉を大切にして生きていきたいと思うのです。そのYESが見つかった時、私はどんな生き方をしてるのだろう。想像もできないからいいのです。

街はどんどん変わってしまって寂しいけど、言葉を紡ぐことも伝えることも考えることも話すことを大切にすることも、下北沢で出会った人たちに教えてもらったなぁといま感じながら思い出してました。文字で記憶を伝えることは難しいけど、思い出すの楽しかったです。

これからも人を愛しながらたくさん話をしてまだ知らないことに出会って、たまには逃げ道をつくって健康に生きていきたいな~わたし。

セントチヒロ・チッチの選曲による、この街の記憶に結びつく6曲
プロフィール
セントチヒロ・チッチ
セントチヒロ・チッチ

楽器を持たないパンクバンドBiSHのメンバー。熱くストレートな歌唱と繊細な歌唱を使い分け感情を全面に出すBiSHの支柱。MCや、ラジオ、インタビューでも中心的存在。趣味であるフィルムカメラでの写真センスも評価が高い。音楽業界きってのカレー好きで、スパイスカレーを探求する番組でMCも務める。2018年9月には、憧れの存在であるGOING STEADY / 銀杏BOYZの名曲“夜王子と月の姫”のカバーでソロデビュー。



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