子供たちに芸術文化を届ける架け橋に。東京都とアーツカウンシル東京がコーディネーター養成講座を開催

東京都と、創造活動をサポートするアーツカウンシル東京が、子供向け芸術文化体験コーディネーター「ことてとて」を養成するプログラムを実施する。8月1日より、受講者の募集が始まっている。受講料は無料で、30人を募集している。

子供向け事業に関わる講師陣の講座や現場研修などを通して、地域の現場とアーティストなどをつなぐ橋渡しとなり、子供の芸術文化体験をコーディネートするためのスキルやマインドを学べるという。プログラムの詳細や目指すことは何なのか? 担当者へのメールインタビューを通して深堀りする。

子供向け芸術文化体験コーディネーター「ことてとて」とは?

このコーディネーター養成プログラムは、2025年9月27日から2026年2月にかけて実施される。

プログラム履修生は「ことてとて」という愛称で呼ばれるという。こどもたちの「こ」、子供たちが体験する創造的な「こと」と、「こと」を支えるたくさんの人の「てとて(手と手)」、それらをつなぎ、紡いでいく取り組みをイメージして名付けられた。

「ことてとて」養成講座を受講する30名は、基礎講座として専門家による6回の講座と2回程度の現場研修を経て、最後には参加者同士で事例を共有する振り返りをおこなう。座学や実践だけでなく、実践に活きるネットワークづくりの場としての活用も期待されている。

地域のコーディネーター人材が限られている。養成プログラムの背景

この養成プログラムの目的は、子供たちへの良質な芸術文化体験を広く展開できるよう、地域の現場とアーティストをつなぐ「橋渡し」ができる人材を育成することだ。

なぜ、地域で活動するコーディネーターが必要なのだろうか? アーツカウンシル東京担当者の田村麻子さんはこう語る。

アーツカウンシル東京・田村麻子さん

子供たちにとって芸術文化は、多様性を認める柔軟な感性や想像力、自らの意思を伝える力を育むうえで、重要なものであると考えています。

東京都は今年度、より多くの子供たちへ「自分だけの特別な体験」を届けるため、プログラムの開発や広報、人材育成などを一体的にコーディネートする「東京こども芸術文化プラットフォーム『TOKYOカルチャーデビュー』を(公財)東京都歴史文化財団に立ち上げました。

この取組みを社会のムーブメントにしていくためには、企業や団体などの協力も得ながら、社会全体で子供向け事業が充実し、多くの感性の芽生えを応援していく必要があります。しかし、地域の現場などでは子供向け事業をコーディネートできる人材が限られており、取り組みが広がらないという課題がありました。

森美術館ラーニング・キュレーター、美術作家らが講師に。プログラムの内容とは

2025年9月27日からスタートする基礎講座の内容は以下の通り。机上の学びから現場の視点を知る講座まで、幅広くカバーされている。

・第1回 なぜ子供に芸術文化体験が必要なのか?
 講師:NPO法人 芸術家と子どもたち代表 堤康彦氏

・第2回 子供の成長と芸術文化体験がもたらすもの
 講師:東京学芸大学教授・デザイン研究室 鉃矢悦朗氏

・第3回 国内外の子供向けプログラムの実例を探る
 講師:森美術館ラーニング・キュレーター 白木栄世氏

・第4回 施設側の視点で企画から実施のプロセスを学ぶ
 講師:東京文化会館 事業企画課長 梶奈生子氏

・ 第5回 アーティストと共創する上での視点を学ぶ
 講師:ファシリテーター/アートエデュケーター 臼井隆志氏

・第6回 場の特性を捉え、プログラムを構築する
 講師:美術作家 大巻伸嗣氏

基礎講座には、国内外の実例をリサーチし、分析するという講座も含まれている。海外の事例で注目すべき取り組みには、たとえばどんなものがあるのだろうか?

文化庁によると、イギリスでは「すべての子供や若者が早い時期から芸術の豊かさを体験する機会をもつ」という目標のもと、子供たちの感性や創造性を育む芸術教育が行われている。その一つが、小学校で実施されたロールプレイだ。博物館や写真家のスタジオなど、あらゆるテーマを設けた空間をアーティストと一緒に作り、子供たちは想像力を働かせながら、ときには博物館の受付係など、さまざまな職種になりきるのだという。

このような国内外のユニークな事例を知ることは、コーディネーターとしての視野を広げることや自らの現場に戻った際の実践にも役立つだろう。

基礎講座のほかにも、現場研修と振り返り共有会が予定されている。現場研修では、実際の子供向けのプログラムの現場を視察することで、現場で行われているコミュニケーションを間近で学ぶことができる。

最後には、講座を通して得た学びや気づきを参加者全員で共有しあう振り返り共有会をおこなう。

子供たちへの体験事業に対する熱意ある人を募集

このプログラムは無料で受講でき、区市町村や文化財団などの文化事業担当者や、文化施設の職員、教員や教育関係者など、さまざまなバックグラウンドを有する方々の参加応募を受け付けている。

子供向け芸術文化事業の実践を目指しており、東京を活動拠点としていること、原則としてすべてのプログラムに参加できること、受講後も芸術文化の振興に関する活動に携わる意思があることなど――4つの条件を満たせば、応募することが可能だ。

募集期間は8月1日から8月29日まで。応募者多数の場合は選考を行うという。

最後に、どんな人にこのプログラムに参加してほしいか、田村さんに聞いた。

アーツカウンシル東京・田村麻子さん

日ごろから子供たちに接するような仕事をしていて、「子供たちへの体験事業」を充実させたいと考えている方はもちろん、今後子供向け事業をコーディネートしていきたいと考えている方の受講も大歓迎です。

人とコミュニケーションを取ることが好きな方、子供をはじめとした様々な立場や環境に置かれている人の背景を理解しようとすることができる方、そして何よりもコーディネーターというお仕事に関心を持ち、実行に移そうと思っている方の応募をお待ちしています!

未来を担う子供たちに芸術文化を広げる「ことてとて」。申込方法など、詳細は公式サイトに掲載されている。

子供向け芸術文化体験コーディネーター「ことてとて」 養成プログラム 
応募資格
地域の現場等でプログラムの実践をめざす、区市町村や文化財団等の文化事業担当者、文化施設の職員、教員・教育関係者、子供向けの活動を行っている企業・団体スタッフ等で、次の(1)〜(4)の要件を満たす方

(1)子供に対する芸術文化体験プログラムの重要性を理解し、主に東京を活動拠点とする方
(2)子供を対象とした芸術文化体験プログラムの実践に意欲がある方
(3)原則としてすべてのプログラムに参加し、講師及び他の受講者と積極的に交流や議論ができる方
(4)受講後も芸術文化の振興に資する活動に携わる意思がある方

募集人数
30名

オンライン説明会
2025年8月9日(土)14:00~15:00
後日字幕付きの動画を公開(8月19日頃)
※詳細は公式サイトへ

募集期間
2025年8月1日(金)~8月29日(金)17:00まで
公式サイトから申込フォームにて応募可能。

選考について
採否にかかわらず2025年9月12日(金)17:00までにE-mail にて本人に通知


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