中東情勢悪化による原油不足は、日常に影響を与えるだけではなく、「推し活」を楽しむうえでも無関係ではない問題だ。
2月28日のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃から始まった中東情勢の悪化は約1か月がたったいまも続いており、未だホルムズ海峡はイランによって事実上に封鎖されている状態だ。
日本は石油の原料となる原油の輸入のうち9割超を中東諸国に頼っている(*1)が、この影響で中東からの原油を運ぶタンカーが日本にたどり着けず、原油不足が危ぶまれる状況になっている。
韓国では公共の車両の運行規制が始まったほか、日本でも山芳製菓のスナック菓子「わさビーフ」が重油調達の困難から一時生産停止(*2)するなど、すでに生活にも影響が出始めている。
日本は石油の国家備蓄の放出を始めたが、このまま原油調達の不安が続くことは、生活や人々の命に密接する問題であることはもちろん、日々の生活に潤いを与えてくれるエンターテイメント業界や、推し活にも関わる問題でもある。
今回の記事では、グッズをはじめとした推し活と石油がどのように関わっているのか考える。
日用品から推し活グッズまで。石油由来の成分が使われている製品とは?
中東などで生産される原油は精製することで、重油や軽油、ガソリン、ナフサなどの石油製品に姿を変える(*3)。
これらの石油製品は生活に不可欠なプラスチック製品やペットボトルから、多くの衣類に使われるポリエステル・ナイロンなどの合成繊維、タイヤやホースなどの原料となる合成ゴムなど、さまざまな製品の原料として使用される。
推し活の定番グッズも石油由来の原料を使うものは少なくない。
アクリルスタンドは石油由来のアクリルが原料になっているほか、Tシャツなどのアパレル製品やぬいぐるみの多くが石油由来のポリエステルから作られている。また、ペンライトなどにも石油由来のプラスチック素材が使われている。
現状、グッズの大きな価格上昇が起きているわけではないが、ぬいぐるみ製品の価格を事前告知より値上げする企業も出てきている。
「マスコットぬいぐるみ」の販売価格改定を告知するツイート
ガソリン価格や飛行機のチケットにも影響
グッズだけでなく、ライブの開催や遠征する際の移動も石油と結びつきは強い。
ステージのセットや演出で使われる機材などは、基本的に大型のトレーラーで運ばれるが、ガソリン代が高騰すれば、ライブ開催にかかる経費も増えることになる。
実際、ガソリンの平均価格は一時190円台まで上昇しており(*5)、現在は政府の補助金によって価格を安定させている状況だ。
原油価格の上昇によって、遠征に使う飛行機にも影響が出ることもある。
2008年に原油価格が高騰した際には、日本の航空会社も燃料油高騰を反映させるため、運賃に上乗せして「燃油サーチャージ」を追加料金として設定。行先によっては数万円の上乗せとなることもあり、移動費の高騰から旅行を取りやめた人も少なくなかった。
2026年3月末現在、キャセイパシフィック航空や大韓航空など海外の航空会社ではすでに燃油サーチャージの値上げが始まっている。日本の大手航空会社であるJALとANAでは5月発券分までは価格据え置きが発表されているが、6月以降は値上げの可能性もあると報道されている(*6)。
また、日本と同じく原油の多くを中東から輸入している東南アジア諸国の一部では、車の使用制限を始めるなど、エネルギー危機への対応が進められている。
タイでは、政府職員の出勤日数の削減が始まったほか、ベトナム政府も企業に在宅勤務を推奨するなど、移動にかかるエネルギーを少しでも減らそうとする動きが起こりつつあるという(*7)。
日本では3月中旬時点で「普段通りの給油」を呼びかけるなど、変わらない日常を過ごすよう政府からもアナウンスされているが、今後、中東情勢が改善されず石油危機に陥れば、推し活やエンターテイメントはもちろん、生活への影響も出てくるだろう。
経済産業省による普段通りの給油への呼びかけ
原油問題は今後どうなる?
中東情勢は刻一刻と変化しており、今後原油の供給が安定するかどうか断言することは難しい。代替ルートを利用した原油の輸入なども始まっており、原油調達先の多角化が急がれる。
中東で起こる戦闘や原油不足に対して私たちが大きく行動を起こすことは難しいが、場合によっては推し活など私たちの日常にも大きく影響することを知り、国や情勢の動きを注視し、正しい情報を見極めていく必要がありそうだ。
*1 中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応|資源エネルギー庁
*2 製品供給に関する重要なお知らせ | ニュース&リリース | 山芳製菓株式会社
*3 石油精製とは 原油から重油生産、全体の16% - 日本経済新聞
*4 石油でできている製品どのような物がありますか?|DUSKIN
*5 ガソリン価格、史上最高値190円 補助金で下落見込みも…無策なら200円超えるの見方 - 産経ニュース
*6 燃油サーチャージ2倍値上げの航空会社も 燃料高騰で空の旅が値上げラッシュ 「耐えきるしかない」国内の観光地にも影響広がる|FNNプライムオンライン
*7 イラン情勢で高まる“燃料ひっ迫”の懸念 東南アジア各国で“在宅勤務”“燃料の使用制限”対策相次ぐ | TBS NEWS DIG (1ページ)
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