8月16日、17日に開催された『SUMMER SONIC 2025』(以下、サマソニ)。FALL OUT BOYとアリシア・キーズがヘッドライナーを務めた今年の会場では、真夏の音楽祭を彩る大型のアート作品が展示された。
この取り組みは、世界に展開できる作品をアーティストとともに創作するプロジェクト『MUSIC LOVES ART』の一環として実施されたものだ。サマソニの会場だけではなく、8月いっぱいまで、千葉市や大阪市の街中でアート作品を楽しむことができる。
主催は文化庁。アーティストをはじめ、自治体や『SUMMER SONIC』と連携しながら音楽とアートが交差する体験をつくる狙いは何なのか? サマソニ大阪会場を視察した文化庁の都倉俊一長官の言葉とともに伝える。
babot、森山大道、AUTOMOAIらの作品を展示

幕張メッセ正面広場に展示されたAUTOMOAIの作品『UNTITLED』
『MUSIC LOVES ART 2025』は、8月15日(金)〜31日(日)までの17日間にわたり開催されている。「転調の光景」をテーマに掲げ、千葉市や大阪市、吹田市で、大型のアート作品の展示や駅構内の大型ビジョンを活用した映像作品の上映、ツアーなどを展開中だ。
『SUMMER SONIC 2025』の幕張会場付近では、AUTOMOAIやGOO CHOKI PARらの作品が披露され、万博記念公園内にある大阪会場にはバルーンを使った躍動感のある作品が展示された。

大阪会場に展示されたbabotの作品『DREAM DREAM DREAM / 夢夢夢(むむむ)』/ 撮影:倉科直弘
全長約45メートルのこの作品『DREAM DREAM DREAM / 夢夢夢(むむむ)』は、メディアアートの先駆者の一人といわれ、多摩美術大学の学長を務めた故・高橋士郎によるバルーンアート(通称「babot(バボット)」)の作品。
高橋は1970年の大阪万博でコンピュータを使った『立体機構』シリーズを発表しており、その高橋が考案したバルーンアートが、大阪万博が開かれる2025年に帰還したというストーリーを着想したという。
さらに8月31日まで、千葉市内の海浜幕張駅南口駅前広場や、大阪市の大阪ステーションシティ(JR大阪駅)、萬福寺、中之島公園など、さまざまなエリアでパブリックアート作品が展示されている。
参加アーティストは阿部和樹、MMEMI(エムエムエミ)、森山大道、コトブキ、田村育歩ら多様な顔ぶれが並んでいる。

田村育歩による作品『桃源郷とタクシー』 MLA2025 Visual Edit / 8月31日まで大阪ステーションシティ(JR大阪駅)2階アトリウム広場、心斎橋PARCO地下2階、プレナ幕張(屋外ビジョン)、イオンモール幕張新都心(館内サイネージ)で展示される。

GOO CHOKI PARによる作品『Sound in Motion』 / 千葉市のQVCジャパン本社ビル、海浜幕張駅南口駅前広場で展示される。

森山大道『FLOATING FLOWER』 / 萬福寺 山門2階に8月31日まで展示。
文化芸術のグローバル展開を目指す『MUSIC LOVES ART』とは?
『MUSIC LOVES ART』は日本の文化芸術のグローバル展開を目指し、文化庁が2022年から始めたプロジェクトだ。同庁では新たな文化を創造するためのアプローチとして、アートと音楽を融合させた取り組みを推進しているという。
国内外から多数の人々が訪れる『SUMMER SONIC』とスタート時から連携し、第1回目ではレアンドロ・エルリッヒやフォトグラファーの細倉真弓らが作品を発表した。
8月16日に大阪で開催された『SUMMER SONIC』の会場には、文化庁の都倉俊一長官が視察に訪れ、babotのアート作品を鑑賞。アーティストと交流する時間や関係者らとの懇談会の場も設けられた。

作品を鑑賞する都倉長官 / 撮影:倉科直弘
懇談会には『SUMMER SONIC』を主催するクリエイティブマンや、大阪のラジオ局であるFM802のほか、音楽業界5団体が設立した一般社団法人カルチャー アンド エンタテインメント産業振興会(CEIPA)の関係者らが参加した。
懇談会の内容は非公開だったが、日本のコンテンツの海外発信について話し合われたという。
韓国のコンテンツ戦略「見習わなければならない」

文化庁の都倉俊一長官 / 撮影:倉科直弘
都倉氏が取材陣に強調したのは、「官民一体」で文化芸術のグローバル推進に取り組んでいくことの重要性だ。国と企業が連携しながら、文化芸術と経済の好循環を目指していくという。
今年5月に初めて開催された日本発の国際音楽賞、『MUSIC AWARDS JAPAN』もその取り組みの一つだ。「アジア版グラミー賞」を掲げるこのアワードの主催者は音楽業界の主要5団体だが、文化庁も協力している。
京都で開かれた『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』授賞式の様子。細野晴臣がスピーチを披露した。
「日本の文化芸術の振興において、海外展開はマストになっていきます。それを実施するには国だけではなく企業の力も必要で、民間のノウハウを吸収してやっていく必要がある。日本には豊富なコンテンツと才能がありますが、その大きな財産をもっと活かして海外展開に力を入れていかないといけません」
また都倉氏は、参考になるケースとして韓国のコンテンツ戦略を挙げる。
「韓国は国策として自国のコンテンツを盛り上げることをやってきました。数十年前は日本のコンテンツを追いかける存在でしたが、『アカデミー賞』も獲り、今や日本が韓国を追いかけている。国のシステムが違うため全く同じことはできませんが、世界を席巻するエンターテイメントをつくりあげていることを見習わなければなりません。日本の豊かなリソースや才能を発掘し、広げていく仕事を民間企業と協力しながら進めていきたいと考えています」

撮影:倉科直弘
2025年秋以降には、アーティストやクリエイター、文化産業関係者に向けたカンファレンスなど、発信拠点をつくる取り組みを展開していくという。課題ややるべきことは山積みだが、日本のコンテンツ産業を豊かにするため、さらなる取り組みに期待したい。
- イベント情報
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『MUSIC LOVES ART 2025』
大阪での会期および会場
『SUMMER SONIC』大阪会場:8月16日(土)~17日(日)
大阪ステーションシティ(JR大阪駅)2階アトリウム広場:8月15日(金)~31日(日)
中之島公園:8月30日(土)~31日(日)
心斎橋PARCO地下2階:8月15日(金)~31日(日)
堀江公園:8月16日(土)~31日(日)
萬福寺:8月16日(土)~31日(日)
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千葉での会期および会場
『SUMMER SONIC』幕張会場:8月15日(金)~17日(日)
海浜幕張駅南口駅前広場:8月15日(金)~29日(金)
プレナ幕張:8月15日(金)~31日(日)
QVCジャパン本社ビル:8月15日(金)~31日(日)
イオンモール幕張新都心:8月15日(金)~31日(日)
幕張ベイタウン夏祭り:8月30日(土)
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