大英博物館でマンガ展が開幕、井上雄彦『リアル』モチーフの描き下ろし作も

大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum

約50名の作家の70タイトルが揃う国外最大規模の漫画展

イギリス・ロンドンの大英博物館で日本の漫画をテーマにした展覧会『The Citi exhibition Manga』展が5月23日に開幕した。

日本国外最大規模の漫画の展覧会となる同展。日本の漫画作家、出版社、プロダクションなど約30社が全面協力し、約50名の作家、約70タイトル分の原画など総計約240点が並ぶ。展示会場は大英博物館内で1100平方メートルの広さを誇る「セインズベリー・エキシビションズ・ギャラリー」。この展示室が「アジア関連」「存命作家」のテーマの展示に使用されるのはいずれも初めてだという。

一般公開に先駆けて5月21日に行なわれたオープニングセレモニーには萩尾望都、田亀源五郎、赤塚不二夫の娘である赤塚りえ子ら出展作家も参加した。

大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum
大英博物館『The Citi exhibition Manga』PR映像

全6パートで漫画の多様な表現を紹介。コミケやコスプレ、二次創作にも光を当てる

展示は全6パートに分かれている。漫画の読み方、描き方、出版などを紹介する「マンガという芸術 The Art of Manga」、漫画の歴史的ルーツや現在の様々な漫画の形態を検証する「過去から学ぶ Drawing on the Past」、スポーツ、冒険、SF、変身もの、ラブストーリー、スピリチュアル、ホラーなど多様な漫画のジャンルを紹介する「すべての人にマンガがある A Manga for Everyone」、漫画のファンや社会とのかかわりをテーマにした「マンガのちから Power of Manga」、直筆原画や数メートルの高さに引き延ばしたアイコニックなキャラクター画像などを展示する「マンガとキャラクター Power of Line」、前衛的な作品、デジタルでの表現、インスタレーションなど漫画を題材にした表現、国際的な影響についての展示を行なう「マンガ-制限のない世界 Manga: no limits」といった構成だ。

大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum
大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum

さらに導入部分では「不思議の国のアリス――イギリスと日本」と題し、ルイス・キャロル本人の手によるアリスの複製イラストなどを展示する。日本で生み出された漫画作品そのものだけでなく、コミケやコスプレ、社会的・教育的な場面での使用といった漫画の発展、ファンカルチャーや二次創作にも光を当てている。

また「マンガとキャラクター Power of Line」の章では、1880年に河鍋暁斎によって描かれた全長17メートの舞台幕「新富座妖怪引幕」の現物が展示される。本作が日本国外に持ち出されのはこれが最後になる予定だという。

河鍋暁斎よる「新富座妖怪引幕」 大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum
大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum

井上雄彦による『リアル』をモチーフにした描き下ろし原画も。大きさは通常の漫画原稿の8倍

そして展覧会の最後を飾るのが、井上雄彦による3点の描き下ろし原画であることも明らかに。

これはパラスポーツをテーマにした井上の作品『リアル』をモチーフにした原画で、大きさは通常の漫画原稿の8倍にもおよぶ。会場では井上の執筆風景を撮影した動画と共に展示される(本作の写真は現時点では非公開)。

くしくも展覧会初日の5月23日には『リアル』の連載が約4年半ぶりに再開した。最新話となる85話は同日発売の『週刊ヤングジャンプ』に掲載。『リアル』は同誌の表紙を飾っている。

井上雄彦『リアル』 ©Takehiko Inoue and I.T.Planning,Inc.

展覧会を象徴するキービジュアルは『ゴールデンカムイ』

本展のキービジュアルに用いられているのは野田サトルの漫画『ゴールデンカムイ』。

『第22回手塚治虫文化賞マンガ大賞』に選出された『ゴールデンカムイ』は、明治後期の北海道を舞台に、日露戦争の帰還兵や脱獄囚が埋蔵金を探して死闘を繰り広げるサバイバルストーリー。『週刊ヤングジャンプ』で連載されている。

大英博物館『The Citi exhibition Manga』キービジュアル 野田サトル『ゴールデンカムイ』 ©Satoru Noda / SHUEISHA

アクション、歴史、ラブ、ギャグ、グルメなどテーマが多様であること、アイヌの少女がキーパーソンになっており、その文化や生活が丁寧に描かれた、ダイバーシティを体現する作品であることなどから展覧会のシンボルに選ばれたという。

手塚治虫、赤塚不二夫、つげ義春、尾田栄一郎、荒木飛呂彦、よしながふみなど多数展示

『The Citi exhibition Manga』展で展示されている作品は、このほかにも手塚治虫『鉄腕アトム』、赤塚不二夫『天才バカボン』、つげ義春『ねじ式』、こうの史代『ギガタウン 漫符図譜』、さいとう・たかを『ゴルゴ13』、東村アキコ『かくかくしかじか』、大友克洋『さよならにっぽん』、萩尾望都『ポーの一族』、鳥山明『DRAGON BALL』、武内直子『美少女戦士セーラームーン』、井上雄彦『SLAM DUNK』、高橋陽一『キャプテン翼』、ちばてつや画、高森朝雄原作『あしたのジョー』、尾田栄一郎『ONE PIECE』、岸本斉史『NARUTO-ナルト-』、よしながふみ『きのう何食べた?』、田亀源五郎『弟の夫』、竹宮惠子『地球へ・・・ 』、松本零士『銀河鉄道999』、石ノ森章太郎『サイボーグ009』、諫山創『進撃の巨人』、中村光『聖☆お兄さん』、荒木飛呂彦『ジョジョの奇妙な冒険』、松本大洋『鉄コン筋クリート』など日本の漫画史を彩る作品が多数。

こうの史代『ギガタウン 漫符図譜』(描き下ろし) ©Fumiyo Kouno/Asahi Shimbun Publications Inc.
高橋陽一『キャプテン翼』 ©Yoichi Takahashi/SHUEISHA
尾田栄一郎『ONE PIECE』 ©Eiichiro Oda/SHUEISHA

『ポケットモンスター』や『妖怪ウォッチ』など、アニメやゲームで親しまれている作品も紹介されている。

展覧会は8月26日まで開催。漫画の作り方や読み方、歴史、様々なジャンルの紹介から、社会との接点、多様化する表現方法とプラットフォームの紹介まで、漫画の過去、現在、未来を俯瞰できる展覧会になっているようだ。

大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum
大英博物館『The Citi exhibition Manga』会場風景 J.Fernandes©The Trustees of the British Museum
イベント情報
『The Citi exhibition Manga』

2019年5月23日(木)~8月26日(月)
会場:イギリス ロンドン 大英博物館 セインズベリー・エキシビジョン・ギャラリー



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