「たくらむ」ための映画術 入江悠×川村元気プロデューサー対談

時代の空気を読むのではなく、時代の空気を作り出す。東宝の新鋭映画プロデューサーとして、それまで「感動」一辺倒だった日本映画界に『告白』『悪人』などアンチモラルでヘビーな作品をぶつけ、大ヒット。その勢いが終わらないうちに、今度は対極的なJ-POPエンタテインメント『モテキ』やアニメ作品『おおかみこどもの雨と雪』をまたもヒットに導くなど、いまや日本映画界、正真正銘のヒットメーカーとなったプロデューサー川村元気。川村と同世代でありながら、インディペンデント映画を軸に『SRサイタマノラッパー』シリーズで日本映画の新鋭監督として注目されている入江悠にとっても、川村は常に意識する存在である。この秋、TOKYO-FMで始まった入江悠がホストを務めるラジオ番組『入江悠の追い越し車線で失礼します』の第2回目のゲストとして登場した川村に、映画監督の立場から入江が本音で迫った。「企画をたくらんでいるときが一番楽しい」と言う川村の発想の秘訣とは何か。その映画作りの原点にまで遡って話を聞いた。

監督の名前で映画を観るのはありますけど、川村さんの場合、プロデューサーの名前で観られるっていうこともあると思うんですよね。(入江)

入江:同世代で名前を意識した映画プロデューサーって川村さんが初めてなんです。そういえばこのあいだ台湾に行ったとき、たまたま『モテキ』を上映していたんですね。そしたら、看板に「川村元気監製」(中国語で「プロデューサー」の意味)ってデカデカ書いてあったんですけど、監督の大根仁さんの名前は入ってなかった(笑)。

川村:「入江くんがTwitterでつぶやいてた」って大根さんに言われました(笑)。『電車男』や『デトロイト・メタル・シティ』や『告白』がかなりヒットして、『宇宙兄弟』も『プチョン国際映画祭』でグランプリを穫ったり、アジアではまあまあ評価されているのではと。

入江:監督の名前で映画を観るっていうのは、これまでもありましたけど、川村さんの場合、そうやってプロデューサーの名前で観られるっていうこともありうると思うんですよね。

左から:入江悠、川村元気
左から:入江悠、川村元気

川村:僕は逆に、監督やプロデューサーの名前で映画を観る人って実は少ないと思っていて、むしろそういった名前が前に出ないような作品を作りたいと常日頃考えていますね。例えば『告白』って、映像を見ただけだと、まさか中島哲也監督が撮ってるとは気づかないと思うんです。それまでの中島さんのカラフルなイメージとはちょっと違うので。「この映画、誰がやってるんだろう」ってまず思ってもらって、ちょっと調べると「実は……」っていう。そういう順番のほうが良いなと。

入江:逆説的にですけど、そういう驚きが川村さんの手掛けた映画の特徴にもなってますよね。「実はこの作品も川村さんだったのか!?」っていう。

川村:僕が手掛けているのはメジャー配給映画の中でも尖った作品なので、それをどう多くのお客さんに広げていくかっていう部分では、悪目立ちするしかないんですよ(笑)。とにかく興味を持ってもらう。でないと『告白』みたいな暗い映画は、まず観てもらえないので。

入江:僕、『告白』を北海道のシネコンで見たんですけど、劇場が若い子でいっぱいだったんでビックリしました。

川村:やっぱり20歳ぐらいまでの若い人にまず映画を観てもらいたいんですよね。自分の中でも、心に残っている映画って10代から20代前半ぐらいまでに観た映画が多いので。それ以降だと、どうしても「あの作品に似ている」とか「ああいう感じだ」っていう感想になってしまいがちじゃないですか。

僕の場合、プロデューサーの仕事は、映画作りのための「憲法」を制定する係だと思っているんです。(川村)

入江:僕たちが10代の頃はまだハリウッド映画が面白かった時期で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか『ターミネーター』とかもありましたよね。僕は今でも思い返すと、結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に戻りたくなるんです。

川村:それは二重の意味で?(笑)。

入江:そう、映画の原点っていう意味と、あと過去へ戻りたいっていう(笑)。川村さんの仕事の原点ってどんなものだったりしますか。

川村元気

川村:やっぱりイチ映画ファンとして「自分が観たい映画を作る」っていうことしかないですね。あとは、この監督とこの物語を結びつけたらどういう化学変化が起こるんだろう? っていう。企画って、「企」の字は「たくらむ」っていう意味で、「画」は「みんなで集まる」っていう意味ですよね。つまりは、「みんなで集まって、何かを企む」。僕はその作業が大好きなんです。それでいて、現場は苦手っていう(笑)。

入江:ちなみにその「たくらむ」作業っていうのはどういうときにするんですか?

川村:日常生活の中ですね。無理に「たくらもう」って考えても何も出てこないですから。あと僕はバックパッカーでして、ちょうどこれからモロッコに行くんですけど、年に1回ぐらいそういう一人旅をするんです。そこでバーッとすべてを出して、カラッポになって、帰りの飛行機でいろいろ思いつくっていう。そのストックで1年間頑張る、みたいな感じですね。

入江:一人旅でリセットするっていうことですか?

川村:そうです。映画業界って魑魅魍魎が集まる場所なので、人間関係の中でポジティブな影響も、ネガティブな影響もいろいろ受けるじゃないですか。それはモノを作る現場なら当たり前のことなんですけど。一人旅で1週間ぐらい誰とも喋らないっていう環境に身を置くと、そういう人間関係がどうでもよくなるんです。それがないとちょっとやってられないところもありますね。

入江:映画って究極の集団作業ですし、プロデューサーはその人間関係を束ねる仕事ですからね。

川村:あまり束ねてないですけどね(笑)。僕の場合、プロデューサーの仕事は、映画作りのための「憲法」を制定する係だと思っているんです。

入江:「憲法」……ですか?

川村:この映画はこういうカタチでこの時代に存在したい。っていう「憲法」ですね。それさえできれば、あとは読み解いたスタッフがそれぞれ「民法」や「刑事法」を個別に作ってくれる。そうしてできたアウトプットを、再度、編集の段階で「憲法」に照らし合わせてみるっていう感じです。

「こういう映画が作りたい」と企んでるときが一番楽しかった。そのプロセスに一番関われるポジションは何かって考えたら、プロデューサーだったんです。(川村)

入江:川村さんって、ご自分でも学生時代に自主製作映画を撮られてたんですよね。

川村:撮ってました。実は賞も貰ったことがあるんです。でもやっぱり撮影現場が苦手だった(笑)。とくに自主製作映画の規模だと、自分が想像した通りの映像は撮れないじゃないですか。俳優も素人みたいなもので、狙い通りの演技が望めない。

入江:たしかに思い通りにいかないことだらけですね。

川村:思い通りにならないことを面白がれる性格だったらいいんですけどね。もしくはそれも込みで、少しでも良くするための根気があるとか。残念ながら僕には両方ともなかった(笑)。結局「こういう映画が作りたい」と企んでるときが一番楽しかったんです。あと編集も好きだった。じゃ、そのプロセスに一番関われるポジションは何かな、って考えたら、プロデューサーだったんです。

入江:じゃ、今でもあまり撮影現場には行かない感じですか?

川村:いや、もちろん行くこともありますけど、現場に行く前にどれだけ監督と「憲法」を共有できているかっていうことのほうが重要なんです。なので、あまり現場で口を出したりはしないですね。あまりにミスディレクションだと思ったら言いますけど。

入江:それはどんなときですか?

川村:例えばですけど、ある俳優の芝居がちょっと大袈裟だなと思ったとしますよね。それでもオッケーが出ている、と。みんなの前で言うのはアレなので、お菓子を食べながら監督に「演劇みたいですね」ってボソッと言うんです(笑)。で、帰る。するとアシスタントから電話が掛かってきて、「リテイクになりました」「ああ良かった」って。修正を決めるのは監督自身じゃないとダメですから。

撮影の現場ってワーッと盛り上がるだけに、間違った方向にも行きやすいじゃないですか。それを軌道修正するのもプロデューサーの仕事かなって。(入江)

入江:そうやってプロデューサーって現場を客観的に見られる立場でもありますよね。映画撮影の現場って戦場みたいにワーッと盛り上がるだけに、間違った方向にも行きやすいじゃないですか。それを軌道修正するのもプロデューサーの仕事かなって。

川村:そうですね。でもそういう混乱が起こるのは、結局「憲法」が徹底されていないからなんですよ。映画人ってみんな芝居とかカット割りへの細かいこだわりがあるじゃないですか。もちろん僕もそこが好きなんですけど、ただそういった個別の「民法」や「刑事法」については、それが依拠する「憲法」にこう書いてあるからこうなるっていう順序で発想するべきなんです。けっして「民法」や「刑事法」が先にあるわけじゃないっていう。

入江:僕の関わっている映画の多くはインディペンデントな規模の作品なので、まだそれを徹底しやすいというか、全体を見渡せるんですけど、川村さんの手掛けられている映画作品って日本でも有数の予算規模ですよね。トラブルも多いんじゃないですか。

川村:それはもう……そういう仕事ですよ(笑)。ハリウッドには「トラブル・イズ・マイ・ビジネス」って有名な言葉があるくらいで。「トラブルを楽しむ」ぐらいでちょうどいいですよね。

入江:ちなみに、これまでで一番しんどかったトラブルは?

川村:そうですね……『宇宙兄弟』のときのNASAとの交渉はホント疲弊しました。

『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会
『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会

入江:それは想像するのもイヤですね(笑)。

川村:いや、大変でした(笑)。あと、『デトロイト・メタル・シティ』にKISSのジーン・シモンズに出演してもらったんですけど、撮影日直前までホントに来てくれるのか全くわからないっていう……(笑)。

入江:ハハハハ!

川村:Zepp Tokyoを押さえて、エキストラも何千人も入れて、これで来てくれなかったらすべて終わりだぞっていう。あれは、かなり神経をすり減らしました。

入江:川村さんの映画って、実はどの作品でもそういう「えっ!」っていう無茶をしてますよね。

川村:そうなんです(笑)。興行収入には直接結びつかないかもしれないですけど、そういう無茶なエネルギーってお客さんにもどこか伝わるんじゃないかなっていうのを信じているんです。

監督は現場の思いを背負っているんですね。一方で僕は、最終的にお客さんに届く映画のカタチにしか興味がない。(川村)

入江:様々な監督と仕事されていますけど、監督選びのポイントってあるんですか。

川村:どちらかというインディペンデント映画のほうが好きなんですよ。で、単純にイチ映画ファンとしてそうした映画を観ているときに、「面白いけど、でもこの監督のホントの特技はこっちなんじゃないかな」って思うことがあるんです。それで、自分のストックしている企画の中からこれをやってもらったらいいんじゃないかなって発想をします。要は組み合わせですね。

入江:なるほど。『宇宙兄弟』の森義隆監督って、僕と同じ歳(1979年生まれ)なんです。かなりの大抜擢でしたよね。

川村:原作者の小山宙哉さんが「あまり色のついていない監督のほうがいい」と言っていて、「じゃ、若い監督でやりましょうか」というやりとりがあったんです。僕も有名な原作だから有名監督に、っていう流れよりも、どうなるかわからない監督のほうが良いなと思っていて。もちろんそれは危険もあるんですけど(笑)。でもやる前からできあがりが見えてしまうほうがもっと危険だし、多少粗くても熱のあるほうが良いと思ったんです。で、何人か監督候補を小山さんに提案した中で、小山さんが森監督の『ひゃくはち』っていうインディペンデント映画を観て、「この人の映画がすごく良い」と。じゃ、森さんでいきましょうってことになったんです。そこから会社を説得する大変さはありましたけど。

『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会
『宇宙兄弟』 ©2012「宇宙兄弟」製作委員会

入江:なるほど。実は僕も『宇宙兄弟』の原作漫画が大好きで、またJAXAに通うぐらい宇宙も好きなんです。それでちょうどJAXAで開催された小山さんのトークショーに行ったときに、『宇宙兄弟』が映画化されることを知って。しかもプロデューサーは川村さんで、監督は僕と同じ歳っていう。それを聞いてすごく嫉妬しました。チクショウ! って(笑)。

川村:ハハハハ! 連絡くださいよ!

入江:でももう決まってたんで。で、映画を観たら、やっぱりNASAのシーンとか無茶をしてて良いなあって。

川村:アポロ11号で人類初めて月面着陸を経験した、バズ・オルドリン本人が出てますからね。もうただ僕が会いたいだけっていう(笑)。でも映画ってそうやって自分の夢を叶えてくれる場所でもありますよね。

入江:とくに僕らの世代は『アポロ13』(1995)とか、宇宙に行く映画が次々と生まれていた時代だったので、バズ・オルドリンはテンション上がりましたね! また、森さんのような若い監督との仕事もある一方で、『告白』の中島監督だったり、『モテキ』の大根監督っていうのは、すでにキャリアのある方たちですよね。

川村:『告白』のときは、まだ売れる前に原作を読んで映画化したいと思ってすぐに出版社に問い合わせをしたら、中島監督からも映画化したいと言われていると。で、中島さんとはそれ以前にある映画の企画を進めていたんですけど、頓挫してしまったことがあって、「いつか必ず一緒にやりたい」と思っていたので、それがこのタイミングで結実することになったんです。

入江:中島監督の現場って、細部までこだわることでも有名ですよね。

川村:ええ、細かいですね。

入江:しかも年齢もかなり上じゃないですか。そういう監督と渡り合うっていうのはどういう作業なんですか。

川村:渡り合わないっていうことじゃないですかね(笑)。それよりもイメージをどれくらい共有できるかっていうことが重要なので。「憲法」がしっかりできていれば、撮影現場で生まれるこだわりとか熱とか予想外のこととかはぜんぜんオッケーなんです。あとは編集の場でそれを冷静に見極める。そのためにも僕はあまり現場に行かないんです。現場の感動を編集の場に持ち込まないように。

川村元気

入江:「これ違いますよね」ってことも言うんですか。

川村:もちろん。良いものを作るためですから。ただ、すごく遠慮しながら言ってるつもりなんですけど、「お前はズケズケものを言う」ってよく怒られます(笑)。「編集のときに性格が悪くなる」って。

入江:お話を聞いてると、「たぶんそうだろうな」って思います(笑)。

川村:監督のほうは「現場で何テイクも重ねた」「俳優にも頑張ってもらった」みたいな現場の思いを背負っているんですね。一方で僕は、最終的にお客さんに届く映画のカタチにしか興味がない。なので結果として、そんなつもりではなくても、現場の思いとは違うことを言わざるをえないこともあるわけです。

入江:でも、集団作業だとそのクールな視線が重要ですよね。

川村:クールなつもりが、だんだんムキになってしまうことも多いんですけどね(笑)。

観客心理を考えると、リスクを回避するために知っている俳優が出ていて、笑える映画、泣ける映画、みたいな傾向が好まれるという状況は確かにあるわけです。(川村)

川村:入江さんの話もしたいんですけど、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』、かなり面白かったですよ。とくに征夷大将軍! 主役を食っちゃってましたね(笑)。

入江:彼らは本職のラッパーなんです。

川村:素晴らしいですね。入江さんってメジャーな俳優じゃないときの演出のほうが生き生きしていますよね(笑)。

入江:そこを川村さんに聞きたかったんですよ。メジャーな俳優の方ってキャリアもあるし、自分なりの表現の方法論もありますよね。でも『SR』シリーズの場合、そういう方法論がまったく必要のない現場だったんですね。

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 ©2012『SR3』製作委員会 発売元:アミューズソフト/メモリーテック
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 ©2012『SR3』製作委員会 発売元:アミューズソフト/メモリーテック

川村:つまり『SR』シリーズは、俳優本人の素材をなるべく活かすという演出だったわけですよね。ちょうど先日、井筒和幸監督ともそんな話をしていて。井筒さんも『パッチギ!』の沢尻エリカさんしかり、『ヒーローショー』のジャルジャルしかり、いわゆる「新人」を使ったときの切れ味がとても鋭い。でもメジャー映画で撮るとなると、キャスティングの力も借りなきゃいけない。そこのジレンマは絶えずありますよね。

入江:やっぱりお客さんは出演者で映画を選ぶものなんですかね?

川村:うーん……根本的には関係ないと思うんですけど、お客さんにとってはある品質保証というか、この俳優が出てるならそんなにひどい映画ではないんじゃないか、みたいに担保にはなるんだと思います。お客さんにとって映画を観ることって、それだけでリスクをともなう行為だったりするわけですよ。休みの日にわざわざ1,800円払って2〜3時間拘束されるわけですから。しかもデートだったりして万が一つまらなかったりでもしたら、気まずくなるじゃないですか。

入江:なりますねぇ……(笑)。

川村:そういう観客心理を考えると、なるべくリスクの少ない映画をチョイスするためには、知っている俳優が出ていて、笑える映画、泣ける映画、みたいな傾向になりがちという状況は確かにあるわけです。まずはそのことを踏まえた上で、でもそんな映画ばかりじゃつまらない、映画館を出たときに最悪の気分になるような映画があってもいいんじゃないかってことで作ったのが『告白』だったわけです。

入江:たしかにあの映画は、笑ったり、泣けたりする気がしないですもんね。

川村:むしろイヤな気分になるっていう(笑)。僕自身そういう映画が好きだし、当時はエンタテインメントは笑ったり泣けたりしないとダメなのか、という問題提起の意味もありました。僕もまだ若くて尖っていたので……。今は反動で、エンタテインメントはできるだけ笑えたり泣けたりしたほうが良いって思ってますけど(笑)。いずれにせよ、お客さんには選択する権利があるんです。その上でどうやったら作品を観てもらえるのかっていう発想は必要ですよね。

自分の得意技って何だろう、というのはずっと考えています。(入江)

川村:ちなみに、入江さんがこれまでで一番手応えのあった作品って何ですか?

入江:それが、手応えっていうのはこれまで全くないんですよ。自分の映画を見直すこともほとんどしないですし。

川村:いや、どうしてそんな質問をしたかというと、監督としての特技、これに関しては誰にも負けないっていうポイントをどう自覚しているのかなと思って。

入江:自覚は……ないですね(苦笑)。

入江悠

川村:ダメじゃないですか(笑)。でも、意外と自覚に至るまでは時間がかかったりするんですよね……きっと。例えば大根さんだったら、音楽が好きで、映画も好きで、さらに映像も好きで、女の子も好き。じゃ、それを全部詰め込んだら良いんじゃないかっていうことでやったのが『モテキ』でした。あの映画には、大根監督の得意技が全て詰まってるんです。映画監督って結局そういうことだと思うんですよね。だから入江さんが自分の得意技を意識するのはいつなのか、興味があります。それは自分で見つけるだけじゃなく、人に見つけてもらうこともあると思います。その得意技を活かす企画と監督が巡り会ったときに大ヒット映画が生まれるんじゃないですか。

入江:なるほど。具体的に企画が振られたときに「うーん」とか「面白そう」っていうのはあるんですけど、得意技っていう部分での言語化はできていないんですよね。ただ、それは何だろうっていうのはずっと考えています。

川村:入江さんの場合、ひとつハッキリしているのは、「新人を演出しているときが一番イキイキする」っていうことですよね。『SR』シリーズの1作目はすごく新鮮でしたから。インディペンデント映画で、エンタテインメントをやろうとしている。しかも同世代の監督っていうことで、僕は嬉しかったんです。あの映画の後、食事にお誘いしたじゃないですか。だから、遠慮せずにいつでも企画の1個でも出してよって思ってるんですよ(笑)。

入江:ただ、僕はやりたいことがいっぱいあるっていうタイプではないんですよね。自分が明日死ぬかもしれないとすると、ラスト1本しか撮れない。だったら何を撮るかっていう発想で映画を作っているところがあって……。

入江悠

川村:最後の晩餐方式ですね。

入江:そうなんです。常に、最後の1本っていう。

川村:それはなかなか決めかねるでしょ? 僕も今度出した『世界から猫が消えたなら』という小説が、世界からいろんなものが消えていくっていう内容なんですけど、映画が消えるっていうくだりがあるんです。その最後の1日にどの映画を観るかっていう。すっごく難しいですよね(笑)。観るだけでもそうなんだから、ましてや撮るとなると大変ですよ。そのタガは外したほうが良いんじゃないですか?

入江:でも、もはやマキノ雅弘監督が生涯何百本も撮って、っていう時代ではないですよね。三池崇史監督や堤幸彦監督みたいに数多く撮られている方もいますけど、僕らの世代までくると、さすがにその状況はないんじゃないかなって。

川村:そう考えていくと、まったく違うものをやるよりも、入江さんはやっぱり『SR』シリーズを良いカタチに転換することを考えたほうがいいのかもしれないですね。僕が『モテキ』でトライしたことですけど、いちばん近道なのは『SR』シリーズをメジャーにするっていう。

入江:おおー。当然キャストもメジャーになるわけですね。

川村:そうです。そこに立ち向かってもらわないとダメです。もちろん今までのキャストと混ぜてもいいと思いますけど。

入江:それならイケますかね? シリーズを通して全国をさんざん舞台挨拶で回ってきて、地方でお客さんが入らない状況にわりと絶望してしまっているんですけど……。

川村:やりようですね。キャストのボトムアップ作戦はアリだと思いますよ。エミネムを呼ぶとか(笑)。SHO-GUNGがEminemにラップを教わって、最後はBeastie Boysと対決。

入江:いきなりメジャー感ありますね(笑)。

『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 ©2012『SR3』製作委員会 発売元:アミューズソフト/メモリーテック
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』 ©2012『SR3』製作委員会 発売元:アミューズソフト/メモリーテック

川村:場所も武道館で。それぐらいやったほうが良いですよ。今までの『SR』シリーズも続けてもらって、それとはちょっと違うパラレルワールドの世界観でメジャーキャストでやるのも面白いかもしれない。

入江:確かにちょっと見てみたいですね。

川村:だってHIP HOPって、もともと派手なことやラグジュアリーなことを肯定する音楽でもあったわけじゃないですか。そこがロックとは違うわけで。

入江:確かにそうなんです。あと、『SR』シリーズで実現できなかったのが、映画中音楽の版権の問題ですね。

川村:『モテキ』は25曲使ってますから(笑)。

入江:うらやましい! 『SR』シリーズも既成曲をバンバン使えたらもっと面白くなるはずなんです。

川村:スチャダラパーにも出てもらいましょうよ!

入江:ホント、いいかもなあ(笑)。

CINRA.NETでは、『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』の入江悠監督サイン入りDVDを2名様にプレゼントいたします!
コチラのメールフォームから応募情報を入力の上、ご応募ください。当選は、招待券の発送をもって替えさせていただきます(ご応募いただいたメールアドレス(PCのみ)宛にCINRAのメールマガジンを今後お届けいたします)。(応募締切り:2012年12月3日)

『入江悠の追い越し車線で失礼します Driven by 三井ダイレクト損保』

毎週日曜日20:30〜21:00からTOKYO-FMで放送

リリース情報
『世界から猫が消えたなら』

2012年10月25日発売
著者:川村元気
価格:1,470円(税込)
ページ数:221頁
発行:マガジンハウス

リリース情報
『宇宙兄弟』(Blu-ray&DVD)

2012年12月21日発売
価格:
スペシャル・エディション(Blu-ray):7,035円(税込)
スタンダード・エディション(Blu-ray):3,990円(税込)、(DVD)2,940円(税込)
発売元:東宝

監督:森義隆
脚本:大森美香
出演:小栗旬、岡田将生

リリース情報
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(DVD)

2012年11月21日発売予定
価格:3,990円(税込)
発売元:アミューズソフト/メモリーテック

監督・脚本・編集:入江悠
出演:
奥野瑛太
駒木根隆介
水澤紳吾
斉藤めぐみ
北村昭博
永澤俊矢
ガンビーノ小林
美保純
橘輝
板橋駿谷
中村織央
配島徹也
中村隆太郎
HI-KING
回鍋肉
smallest
倉田大輔

プロフィール
入江悠

1979年、神奈川県生まれ。監督作『SRサイタマノラッパー』(2009)が『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』でグランプリ、『富山国際ファンタスティック映画祭』で最優秀アジア映画賞を受賞。同シリーズ3作目『SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』(2012)では野外フェスシーンに延べ2000人のエキストラを集め、インディペンデント映画として破格の撮影規模が話題となる。

プロフィール
川村元気

1979年生まれ。東宝の映画プロデューサーとして『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『宇宙兄弟』『おおかみこどもの雨と雪』などを製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia 2010」に選出され、11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。今年10月、初の小説『世界から猫が消えたなら』をマガジンハウスより発表、すでに5万部突破のベストセラーとなっている。

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