箕輪厚介×國光宏尚対談 終わりが見える「SNS社会」の次を語る

個人が夢を叶えるための新しいネットワークサービス「FiNANCiE(フィナンシェ)」が3月7日よりスタートした。

FiNANCiEは、スタートアップ起業が出資者から資金提供や業務提携を受けながら事業を拡大していくのと同じように、達成したい夢を持つユーザー(ヒーロー)と、資金やノウハウを提供してくれる人(ファンやヒューマンキャピタリスト)との、ファンエコノミー時代のまったく新しいコミュニティサービスである。たとえばミュージシャンになりたい人、YouTuberに憧れている人、アスリートを目指す人が、株式会社の「株」にあたる「個人トークン」を発行し、それを購入した人はヒーローの人気が上がりトークンが価値上昇すると経済インセンティブを得られる可能性が生まれる、という仕組みだ。

「承認欲求の次は『自己実現』」と語るのは、モバイルゲームとVR / ARの会社gumiの会長であり、FiNANCiEの創業者・國光宏尚。SNSによって承認欲求が加速し、昨今は「バイトテロ」や「炎上」など様々な問題が次々と起こるなか、新しいSNSは我々にどんな世界を見せてくれるのだろうか。

CINRA.NETでは、編集業界の風雲児として様々なヒット作を生み出す幻冬舎の箕輪厚介と、國光の対談を、前編 / 後編に分けてお届けする。

「いいね」が欲しいために偽りの写真を上げる「フェイクライフ」は、そろそろしんどいと思うんですよね。(國光)

—お二人の交流は結構長いんですか?

箕輪:実はつい最近、共通の知人に紹介していただいたばかりなんですよ。もちろん存じ上げてはいましたけど、近い位置にいながら住んでいるところが違うというか。僕は普段ガチの起業家というより、「芸能界寄りの起業家」みたいな人たちとの絡みが多いので、なかなか接点がなかったんですよね。

國光:前田裕二くんや落合陽一くんは芸能人みたいだしね。明石ガクトくんに至っては、別に事業も成功してないし(笑)。彼の著書『動画2.0』(箕輪が編集担当)に書いてあることなんて、僕が2005年に書いたブログの記事を膨らませたようなものだから(笑)。

箕輪:あははは! 明石さん、顔真っ赤にして怒りそう(笑)。

左から:箕輪厚介、國光宏尚

—國光さんは今回、新会社フィナンシェのファウンダーとして、プロジェクト「FiNANCiE」を全面支援する立場になるそうですが、現在はどのような仕事がメインになるのでしょうか?

國光:現在会長を務めているgumiは、もともとアットムービー・パイレーツという商号で立ち上げたソーシャルネットワークサービスの会社だったんです。2014年に上場して、現在はそこの会長をやっています。モバイルゲーム周辺を担当しているのは社長の川本(寛之)で、僕の領域はモバイル動画、VR / AR、それからブロックチェーンの3つです。

箕輪:僕はそのFiNANCiEという、ファンコミュニティとブロックチェーンを組み合わせたようなサービスで、なにか協力できることがないか? ということで紹介してもらった形です。

—國光さんは常々、今後SNSは「承認欲求」から「自己実現」の空間になるとおっしゃっていますが、これはどんな意味なのでしょう。

國光:TwitterにしてもInstagramにしてもYouTubeにしても、既存のSNSは全て「承認欲求」を満たすことがベースになっているじゃないですか。これは極めて不健全だと僕は思っていて。

「いいね」が欲しいために偽りの写真を上げる「フェイクライフ」は、そろそろしんどいと思うんですよね。遠くない未来に「なんてバカバカしいことをやっていたんだろう」と、みんな気づくと思うんです。

箕輪:「承認欲求」の前のフェーズってなんだったんだろう? mixiとかも承認欲求に入りますか?

國光:mixiが承認欲求の「ハシリ」じゃないですかね。日記をアップして、そこにコメントがつくと、トップ画面に赤い文字で通知が来るじゃないですか。

箕輪:あれはヤバかった! あのときに免疫がついたから、自分はTwitterの海に溺れずにいられるのかもしれないな。

國光:最初はEメールがあって、それは単なる連絡ツールだったと思うんですけど、BBSで「居場所」のようなものが生まれましたよね。そこにいくと誰かいるから、寂しい気持ちを満たす、みたいな。

箕輪:暇つぶしの居場所みたいなことですよね。確かにそこから10年が経過して、今みんな疲弊している感じはありますね。

Twitterで「いいね」をもらうのとか超AIしている感じがするんですよ。バズることに最適化していくインフルエンサーと、それを条件反射的に「いいね」やRTをするフォロワーみたいな、数式で動いているような感じがします。

マトモな人はSNS疲れを起こしている。(箕輪)

箕輪:僕は今、「箕輪編集室」というオンラインサロンをやっているんですけど、そこには「バズる」とかそういう概念がないんです。月に5,940円払ったら、そこで虚勢を張る必要なく、本音で話せる。「いいね」を競い合うような場所ではないんですよ。

Twitterがオープンカフェでしゃべっているようなものだとしたら、オンラインサロンは個室でご飯食べているような感じというか。外野でバカが反応して騒ぎ立てているのとかを気にせず、濃密な会話ができるのは、言うまでもなく後者なんですよね。

國光:「炎上」なんて、なんの実害もないから、無視するに限るんですよね。炎上って、広がっていくうちになにが原因で燃えているのか分からなくなって、仕舞いには単なる人格攻撃になっていく。

箕輪:そうそう。はたから見ていると「ああ、またやってるな」くらいの感じですよね。

僕はニュース番組のコメンテーターもやっているから分かるんですけど、もう毎週「炎上ネタ」みたいなものが入ってくるんです。毎週ターゲットが変わっているけど、その炎上ネタに対して本気で怒っている人なんて大していなかったりする。超くだらないですよね。

マトモな人はSNS疲れを起こしているのが分かるからこそ、國光さんが模索している「承認欲求」の次の「自己実現」に、すごく興味があるんです。

「mixi日記」を書きたいがために海外へ行っていたところはありました(笑)。(箕輪)

—お二人の共通点として、今のようなご活躍をされる前は海外でバックパック生活を送っていたそうですね。

箕輪:僕は、高校生のときにイタリアやスペインへ行って、大学の春休みには毎年1か月くらいインドやカンボジア、ベトナムなどアジア辺りを回っていたんですけど、「mixi日記」を書きたいがために行っていたところはありました(笑)。旅行先でネットカフェに入って、その日に起きた出来事を書いてアップしていたんですよ。当時はデジカメで撮って、SDカードのデータをパソコンに入れてアップしていたのかな……今考えると、恐ろしく面倒臭いことやっていましたね(笑)。

当時は、承認欲求の塊になっていたんだと思う。あの「コメントがあります」という赤い文字を見ると、すぐ確認したくなる衝動に駆られるし。海外へ行って「こんなトラブルに巻き込まれた」「こんなお店があった」みたいなことを書くと、すぐにコメントがつく。それが嬉しくて、わざわざ海外まで行っていたようなところはあるかもしれないです。

インドで宝石店に半ば監禁されて、睡眠薬入りのコーラとかを飲まされそうになったこともあるんですけど(笑)。なんとか逃げ切っても、ホテルへ戻るんじゃなくてその足でネットカフェへ行って、mixi日記を書いてましたからね。

國光:あははは。コメントいっぱいついた?

箕輪:めっちゃつきました(笑)。それって、今やっていることと変わらないんですよ。本を作って話題にすることもですが、それがいい反響であれ悪い反響であれ「騒ぎを起こしたい」という気持ちの原点は、mixiかも知れない。

國光:僕がバックパックをしていた頃は、ネットカフェもない時代でした。僕は今年で45歳だから「団塊ジュニア世代」なんですけど、僕らが子どもの頃って「いい大学に出て、いい会社に入ったらいい人生」みたいな価値観だったんです。バブルが崩壊したのは、僕らの就活のすぐ前だったと思うんですけど、僕自身も中高と寮制の学校という「敷かれたレール」を走っていたから、悶々としていて。とはいえなにをやったらいいのかも分からなかったんですよね。

そのときに思っていたのは、「大学へ行ったら負けだ」ということ。「このままレールの上に居続けたらダメだ」と。だったら、とにかくビッグになろうと思うようになって。でも当時はビッグになる方法って、ミュージシャンかスポーツ選手かお笑い芸人、もしくは飲食しかなかったんですよ。それで飲食とか水商売でバイトしたりしていて。

箕輪:すごい行動力ですね。

國光:そうこうしていたときに、当時住んでいた神戸で地震があって。東日本大震災のときも、その影響で若い起業家がものすごく増えましたけど……。

箕輪:それは本当によく聞きますね。

國光:僕も同じ心境だったと思います。「もしかしたら自分も死んでいたかも知れない」と。自分が今生きているのって、本当にちょっとした運なんだなって。それを思ったときに、「ビッグになる」なんて言いながら、俺はなにをやっていたんだ? と思えてきて。「このままだったら絶対ビッグになれないし、これで死んだら後悔しか残らない」と、とにかく環境を変えようと思って10年間海外を旅したんです。

箕輪:10年ですか!

國光:日本でいろんな仕事をしてお金を貯めて、まず中国へ行きました。結局4年くらいいたのかな。そこからチベットやインド、東南アジア、北米から中南米とバックパックで回って。それでロスに4年くらい住んで、29歳のときに帰国しました。

「ここから中国がどんどん盛り上がっていく」という瞬間に立ち会えたのは、僕にとってものすごく大きかった。(國光)

箕輪:國光さん、やっぱりすごいですよね。世の中には「とりあえず海外へ行く」って言うやつが結構いて、旅立つときは盛り上がるけど、大抵は伸び悩んで帰ってくるじゃないですか。「海外へ行く」というだけで満足しているやつが9割なのに(笑)、なんで國光さんはそうならずにちゃんとブレイクしたんだろう?

國光:やっぱり、それまでずっと悶々としていた上に、きっかけが震災だったから、「変わんなきゃ」という思いは人一倍強かったのかも知れないですね。

ただ、基本的にカタチから入る人間なので(笑)、行く前にまず坂本龍馬の自伝を読んだんですよ。龍馬が脱藩して江戸に上がっていくみたいな、そんな気持ちで行く。「男子志を立て郷関を出ず。学もし成らずんば死すとも帰らず」みたいな気分で。

箕輪:(笑)。

國光:飛行機も、カッコ悪いじゃないですか? 男が人生をかけて旅するならやっぱり船路だろと。船で行くと、2日くらいかかる上に料金は飛行機より高いんですけどね。

箕輪:(笑)。でもなんで、いきなり中国へ行こうと思ったんですか? 当時はまだ中国って、そんなに魅力的な国ではなかったですよね?

國光:その頃から、「21世紀は中国の時代」というフレーズが飛び交っていたんです。最も強大な国はアメリカでしたけど、「将来有望な中国か、それとも現在最強のアメリカか」の二択で考えたとき、やっぱり行くなら中国だなと。お金もなかったですしね。当時、中国人の初任給が1万円くらいで。僕が南京へ行ったときは、初めて南京にマクドナルドが上陸するというので、若者たちの一番のオシャレスポットになった時代だったんですよ(笑)。

当時、大学進学率も1割なかったくらいで。上海では復旦大学に行っていたんですけど、やっぱり面白いやつらがいっぱい集まってくるんですよね。あちこちの田舎から「地元の天才」と言われた連中が、期待を一身に背負って来ている感じ。経済発展の黎明期だったから、将来の夢とかをみんなで話していると、「俺はトヨタを超える会社を作る」「俺はソニーを超える会社を作る」みたいなことを真面目に言っているんです。「中国はな、お前の国より10倍もでかいんだぞ。そこで俺たちが会社を立ち上げれば10倍でかくなるだろ」って言ってきて(笑)。

箕輪:(笑)。

國光:結果的に、HUAWEIのような企業が生まれているわけですからね。そういう、「ここから中国がどんどん盛り上がっていく」という瞬間に立ち会えたのは、僕にとってものすごく大きかった。

箕輪:話を聞いていると、やっぱり國光さんは波が起きそうな場所にいるのが好きだし、そこを見つけるのが得意なんだなって思いますね。「なにをやりたい」ということよりも、「どこで大きな波が起きるか?」ということを大事にされているということですよね。

<後編「箕輪厚介×國光宏尚 10年後は暇だらけな『一億総老後社会』になる」へ続く>

サービス情報
「FiNANCiE」

FiNANCiEは、夢がみんなの共有財産になる、ドリームシェアリングサービスです。夢を持つ人(ヒーロー)と夢を支援する人(ファン)が出会い、その実現に向けて、一緒に活動していくコミュニティです。

プロフィール
國光宏尚 (くにみつ ひろなお)

2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups株式会社を設立し、代表取締役に就任。2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。2018年、gumi Cryptos匿名組合を組成し、ブロックチェーン事業に参入。2019年3月、ブロックチェーン技術を活用したドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」を手がける株式会社フィナンシェを創業。

箕輪厚介 (みのわ こうすけ)

幻冬舎・編集者。2010年双葉社に入社、ファッション雑誌の広告営業として4年間、タイアップや商品開発、イベントなどを企画運営、『ネオヒルズジャパン』与沢翼創刊。2014年から編集部に異動し『たった一人の熱狂』見城徹 / 『逆転の仕事論』堀江貴文 / 『空気を読んではいけない』青木真也を担当。2015年7月に幻冬舎に入社。東洋経済オンラインやアドタイで自身のコラムを持ち、オンラインサロンの運営、堀江貴文大学校で特任教授も務める。『多動力』堀江貴文・『ネオヒルズジャパン』与沢翼・『悪意とこだわりの演出術』藤井健太郎の3冊でアマゾン総合ランキング1位を獲得。他に『日本3.0』佐々木紀彦、『空気を読んではいけない』青木真也、『まだ東京で消耗してるの?』イケダハヤト、『新企画』鈴木おさむなど。堀江サロン教授、渋谷のラジオ、ニューズピックスブック創刊。2017年10月合同会社波の上商店を設立。株式会社CAMPFIREと株式会社幻冬舎の共同出資会社、株式会社エクソダス取締役に就任。



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