箕輪厚介×國光宏尚 10年後は暇だらけな「一億総老後社会」になる

スタートアップを支援する既存のシステムを「個」に応用し、夢を叶えたいと思っている個人がその資金やノウハウを受けることのできる画期的なサービス「FiNANCiE(フィナンシェ)」。その創業者である國光宏尚と、堀江貴文や前田裕二などのベストセラーを次々と量産し、オンラインサロン「箕輪編集室」を運営するなど、精力的な活動を続けている幻冬舎の箕輪厚介による対談の後編をお届けする。

前編では、昨今のSNSが抱える問題点や、「次は『自己実現』のSNS時代が来る」と言う國光の背景であり、二人の共通項でもあるバックパッカー時代のエピソードについて語ってもらった。後編の二人の対話のなかでは、「近い将来、週休4日になる」「10年後は『一億総老後時代』」「YouTuberはアルゴリズムの奴隷」など、刺激的なワードがいくつも飛び交った。

これからは「個の時代」だと言われているから、「会社への投資」から「人への投資」となっていくのは自然な流れですね。(箕輪)

—國光さんが、新しいサービス「FiNANCiE」を立ち上げた経緯を教えてもらえますか?

國光:現在、私が会長を務めている「gumi」を2007年に立ち上げたとき、実は「ケータイ版Twitter」を作りたいという思いがあったんです。というのも、同年『SXSW』(テキサス州オースティンで毎年3月に開催される音楽、映画、インタラクティブの祭典)でTwitterが初登場して、それを見た瞬間に、「これはヤバイものが登場した」と。

箕輪:すぐに分かったんですね。

左から:箕輪厚介、國光宏尚

國光:当時はまだiPhoneもなかったから、アメリカ人はPCでTwitterをやっていて。日本にはすでにガラケーがあったから、「このサービスはモバイルでやったら最強やん!」と閃きました。モバイル版Twitterを作ったら俺の一人勝ちやなと思って始めたのがgumiだったんです。

名称も、お菓子の「グミ」ではなく、クラスの「1組、2組」から、みんなが集まるクラスのような場を提供したいと思ってつけた社名だったんですよね。それから紆余曲折あって、モバイルゲームに力を入れていくことになるんですけど、僕のなかではずっと、「新しいSNS」を作りたいというのがあって。

でも、最初にも話したように今のSNSを見ていると、「承認欲求」がベースになっていて、それって疲れるし、長続きしないと思う。この次に来るSNSは、「承認欲求」ではなく「自己実現」をベースしたものじゃないのかな、と。要するに、「頑張っている人を応援するためのツール」を目指して開発したのがFiNANCiEというわけです。

—具体的にはどのようなサービスなのですか?

國光:スタートアップを支援する既存のシステムというのは、夢を持つ若い起業家がいて、そこにお金を投資するベンチャーキャピタリストが現れ、大きなイノベーションが起こすというものですよね。それはあくまでも「会社」がフォーマットでした。

しかし、これからは「個の時代」だと思っていて。たとえばYouTuberになりたい子もいれば、アーティストやスポーツ選手、料理人になりたい子もいる。そういう子たちが、夢に向かって挑戦していきたいと思っても、そのための資金やノウハウがなくて二の足を踏むケースって多いと思うんですよ。

そういう人たちのハードルを低くするのが「FiNANCiE」というサービスです。夢を持つ人をFiNANCiEでは「ヒーロー」と呼んでいるのですが、「ファン」がヒーローを応援することによって、「いいね」を増やしていく。この「いいね」がヒーローにとってのトークンになるんです。最初は10人程度だった応援者が、どんどん増えることでトークンの価値も上がっていくわけです。

箕輪:なるほど。確かに、これからのビジネスモデルは「個の時代」だと言われているから、「会社への投資」から「人への投資」となっていくのは自然の流れかもしれないですね。

ただ、僕も様々なネットワークサービスを見てきましたが、なかなかワークしていかない問題ってあるんですよね。インフルエンサーと呼ばれる人たちが、ちょっと利用してみてバズっても、その後は過疎化する、みたいな。「タイムバンク」とかを見ていても、価値が上がらないまま淀んでいく人もたくさんいる。そういった部分をFiNANCiEが上手く回せれば強いなと思います。

國光:たとえばオンラインサロンなどの大きな問題点は、有名人がファンから摂取するという構造になりがちだと思っていて。

箕輪:要するに、フォロワーという「大きな池」があるからこそ成り立つ仕組みで。そもそも池を持っていない人には意味がないというのが現状ですよね。

國光:FiNANCiEでは、現段階ですでに佐渡島康平さん、けんすう(古川健介)さん、GOの三浦崇宏さんなど多くの著名な方たちが、ヒューマンキャピタリストとして参加してくれていて、ヒーローを応援する基盤を整えています。我々がやりたいのはファンと一緒に池を大きくしていくという仕組みなんです。そうすることで、そこにいるみんながハッピーになっていく。

最近、ビットコインやイーサリアムがすごく盛り上がってきていますよね。イーサリアムは、当時19歳だったヴィタリック・ブテリンの夢やビジョンに共感する人が集まって、プログラムコードが書ける人、マイニングができる人、出資できる人や宣伝のノウハウがある人……みたいな感じで、みんなでヴィタリックの夢に乗っかって叶えていったわけです。最初に応援していたのは10人程度で、そこから100人、1000人……というふうに爆発的に増えていき、イーサリアムの価値自体は数年で数兆円に達した。

こういう仕組みを「個人」に応用したいんです。ベンチャーに投資するベンチャーキャピタリストに対して、人に投資するヒューマンキャピタリストがどんどん増えてくると、若い子たちの夢がもっと叶えやすくなるんじゃないかと。

箕輪:オンラインサロン「箕輪編集室」をやっていて最近思うのは、インセンティブ設計の大切さなんですよね。

これからは「楽しさ」、つまり「心の満足」を求める時代に入ってくる。(箕輪)

—インセンティブ設計、というのは?

箕輪:多くの参加者が自発的なやり甲斐で動いてくれているのですが、じゃあそこに対価を支払ったほうがいいのかというと、必ずしもそうではないんです。お金を払ってしまうと、逆に淀んでしまう。たとえばあるイベントの仕切りを夜通し頑張ってくれた人に対し、普通の企業なら10万円くらい払うからといって一度それをしてしまうと、次からお金が発生しないと動きたくなくなるだろうし、要求はどんどんエスカレートしていくんですよね。

だからお金って払わないほうがいいのかなと思うけど、でもなにかしらインセンティブはあげたい。そこをたとえば「オンラインサロン内トークン」みたいに、お金を払っている意識もなく「いいね」みたいなインプレッションで、勝手に貯まっていく仕組みがあるとすごくいいなと思うんです。

國光:そうなんですよね。それも承認欲求的な「いいね」ではなく、ヒーローの夢に共感してサポートしているという、応援されるほうもするほうも、そのことで「自己実現」できるような仕組みがいい。そうするとWIN-WINの関係になるじゃないですか。ヒーローは、ファンが自分の夢を応援してくれて嬉しいし、活動資金も入ってきて嬉しい。ファンは、ヒーローの夢に協力できて嬉しいし、さらにファンが増えていけば自分の持っているトークンの価値が増えて嬉しいという。

箕輪:やっぱりそこは、「お金」というより「コミットしている気持ち」が大切なんですよね。同じ船に乗っているという。

國光:そう。産業革命によってもたらされたのは、「物質的な豊かさ」の追求だった。それは大成功して、「物質的な豊かさ」と「人生の豊かさ」が、しばらくは完全にイコールだったと思うんです。

ただ、今みんなが気づき始めているのは、そこが必ずしもイコールじゃないということ。だとしたら、本当の意味での「人生の豊かさ」を手に入れるためにどうしていったらいいのかを考えるフェーズにきている。

箕輪:とある取材で堺屋太一さんが、「日本はこれまで明治時代から、そのときどきの目標を、戦前は強さに、戦後は経済的な豊かさに、その後は安全、安心を求めてきた」とおっしゃっていて。「そのために規制が始まり、楽しさが薄れてきた」と。だとすれば、これからは「楽しさ」、つまり「心の満足」を求める時代に入ってくるということだと思うんですね。

國光:そうです。で、この先10年間に起こることは、AIの発展によって人間が「物を作る」という仕事をやらなくてすむ社会になるということなんです。じゃあ、我々はどうなるかというと、「めっちゃ暇」になる。近い将来、週休4日になって、1日の労働時間も3〜4時間くらいになると思うんです。

箕輪:やることがなくなって「一億総老後時代」に突入しますよね。鬱になる人が多そう。

國光:だから、その暇になった時間を「どうハッピーに過ごすか?」が、この10年間で最も重要な課題になってくるはずです。

そこでキーワードとなるのが「多様性」。たとえば音楽にしても、「流行っているから」ではなく各々が好きなものを追求していく。しかも、そこにコミットして応援していくことが楽しい、みたいな。より精神的な充実を求めるようになっていくと思うんですよね。

箕輪:文化が発展していくときに、「暇であること」って大事なんですよね。実際、平安時代やヨーロッパの貴族の時代に文化や哲学、宗教などが花開いていますからね。やることがないから「人間とはなにか?」について考え始める。

國光:そうなんですよ。「古池や蛙飛び込む水の音」みたいな松尾芭蕉の俳句を、「風流だ」なんて言っていられたのは、みんなやることがなくて暇だからじゃないですか(笑)。

これから大切なのは、「合理」より「共感」を集める人。(國光)

箕輪:しかも、これからは「無意味」が強くなるような気がしています。今また「スライム」とか、コーラにメントス入れて飲むのとかが流行っているけど、それって、なんの意味もないと思うじゃないですか。僕もくだらないと思うんだけど、もはや「なんの意味もなくていい」時代なのかもしれないですよね。

俳句だって、なんの意味もないじゃないですか(笑)。だけどつい見てしまう、そういうコンテンツを作れる人が強い気がする。NewsPicksで佐々木紀彦さんが、「YouTubeの動画なんか見てなにになるんですか? 本のほうが価値あるじゃないですか」みたいなことをおっしゃっていて、俺もそう思うんだけど、もうそういう生産性の時代は終わって「楽しければいいんじゃない?」というのがこれからの風潮だと思うんですよね。

國光:そう。だからこれから大切なのは、「合理」より「共感」を集める人。合理の部分はもうAIがやってくれるし。どれだけ共感を集め、みんなを巻き込んでいくかが大きな変換になってくる気がします。「俺はこういうのが面白いと思う」「俺はこれ」っていうふうに多様化していくし。

箕輪:じゃないと人間もAI化しちゃいますもんね。YouTuberも、最近はどうなんだろう? と思っていて。「好きを仕事に」とか言ってるけど、もうアルゴリズムの奴隷になりつつある気がする。「こういうコラボをすれば数字が上がる」とか「こういう編集をするといい」「テロップの作り方はこうだ」とか。それってもう、アルゴリズムに従っている奴隷じゃんって思うんですよね。

國光:(笑)。そこから逸脱しないとキツイし、この先の我々もどうやって「風流な生き方」をしていくか? が課題になってくると思いますね。

箕輪:なるほどなあ。そこで文化を創造する「スター」もいれば、彼らを応援する「ファン」もいて、お互いがそこに楽しみを見出していくようになるわけですね。面白い。

考えてみればオンラインサロンでも、そこにいる誰かが成長して変わっていく様にコミットしていることが楽しいんだと思います。僕がやっている編集の仕事もそう。たとえば前田裕二さんとかが、本をきっかけに本人の意識が変わっていくのを見ているのが楽しいんです。

國光:まだ成功してない明石(ガクト)くんもそうですよね?(笑)

箕輪:そうそう(笑)。だから、明石さんのような「これからの人」を応援しているときが一番楽しい。編集者の一番の楽しみは、そこかもしれない。マイナーな存在がメジャーになっていく瞬間を一緒に走っているっていう。「FiNANCiE」もきっとそうですよね。

國光:そう。大きな夢を持つ人々を、見つけやすくするサービスが「FiNANCiE」なのだと思います。

箕輪:たとえば一緒に飲んでいた人が夢を語り出して、それに共感したらその場で気軽に「トークン」をひとつ買う。そういうのがどんどん貯まって、気づいたら超有名人になってた、なんてことも起こり得るわけですよね。これから始まる「一億総老後時代」に、FiNANCiEが果たす役割は大きいかもしれないですね。

サービス情報
「FiNANCiE」

フィナンシェは、夢がみんなの共有財産になる、ドリームシェアリングサービスです。夢を持つ人(ヒーロー)と夢を支援する人(ファン)が出会い、その実現に向けて、一緒に活動していくコミュニティです。

プロフィール
國光宏尚 (くにみつ ひろなお)

2004年、カリフォルニアのサンタモニカカレッジを卒業後、株式会社アットムービーへ入社し、同年取締役に就任。映画やドラマのプロデュースを手掛ける一方で、様々なインターネット関係の新規事業を立ち上げる。2007年、株式会社gumiを創業し、代表取締役に就任。2015年、VR/AR関連のスタートアップを支援する100%子会社Tokyo XR Startups株式会社を設立し、代表取締役に就任。2016年、主に北米のVR/AR企業への投資を目的としたVR FUND,L.P.のジェネラルパートナーとして運営に参画、また韓国にてSeoul XR Startups Co., Ltd.を設立し取締役に就任。2017年、北欧地域のVR/AR関連スタートアップを支援するNordic XR Startups Oy.を設立し、代表取締役に就任。2018年、gumi Cryptos匿名組合を組成し、ブロックチェーン事業に参入。2019年3月、ブロックチェーン技術を活用したドリーム・シェアリング・サービス「FiNANCiE」を手がける株式会社フィナンシェを創業。

箕輪厚介 (みのわ こうすけ)

幻冬舎・編集者。2010年双葉社に入社、ファッション雑誌の広告営業として4年間、タイアップや商品開発、イベントなどを企画運営、『ネオヒルズジャパン』与沢翼創刊。2014年から編集部に異動し『たった一人の熱狂』見城徹 / 『逆転の仕事論』堀江貴文 / 『空気を読んではいけない』青木真也を担当。2015年7月に幻冬舎に入社。東洋経済オンラインやアドタイで自身のコラムを持ち、オンラインサロンの運営、堀江貴文大学校で特任教授も務める。『多動力』堀江貴文・『ネオヒルズジャパン』与沢翼・『悪意とこだわりの演出術』藤井健太郎の3冊でアマゾン総合ランキング1位を獲得。他に『日本3.0』佐々木紀彦、『空気を読んではいけない』青木真也、『まだ東京で消耗してるの?』イケダハヤト、『新企画』鈴木おさむなど。堀江サロン教授、渋谷のラジオ、ニューズピックスブック創刊。2017年10月合同会社波の上商店を設立。株式会社CAMPFIREと株式会社幻冬舎の共同出資会社、株式会社エクソダス取締役に就任。



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