石崎ひゅーい×森山未來対談 本当の戦いは勝ち負けの物差しの先で

監督・武正晴×脚本・足立紳――映画『百円の恋』(2014年)で高い評価を獲得した監督・脚本コンビが、再びボクシングを題材に生み出した映画『アンダードッグ』。崖っぷちの日々を生きるボクサーたちの「生」をリアルに描き出した本作で、主人公・末永晃を演じた森山未來と、この映画のために主題歌“Flowers”を書き下ろした石崎ひゅーいの対談が実現した。

同い歳であるという彼らは、本作で描き出される男たち――どんなに落ちぶれようと、拳を交えて戦うことを止めようとしない男たちのなかに、それぞれ何を見出したのか。ボクシング、芝居、ダンス、音楽……やり方は異なれど、人前に立って自らを表現するという意味では共通している2人に、その醍醐味と苦悩について語ってもらった。

石崎ひゅーい(いしざき ひゅーい)
1984年3月7日生まれ、茨城県出身。2012年にミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビュー。2015年、ロックオペラ『彼女の起源』で舞台出演し、演技に初挑戦。『アズミ・ハルコは行方不明』(2016年)で映画デビュー。ドラマ『トドメの接吻』(2018年)の主題歌楽曲「さよならエレジー」を菅田将暉に提供し話題に。『そらのレストラン』(2019年)に出演するなど役者としても活躍する。2020年11月、映画『アンダードッグ』の書き下ろし主題歌“Flowers”を発表。

森山未來と石崎ひゅーい、映画『アンダードッグ』主演&主題歌にかけるそれぞれの想い

―2人がこういう形で対談するのはーー

森山:初めてですね。ただ、映画の撮影現場で、一度ご挨拶をさせていただいたことがあって。今年の1月とか2月になるのかな?

石崎:そうですね。ホントに一瞬というか、撮影現場だったので、ご挨拶だけさせていただいて。

森山:なので、こういう形でじっくりお話しをするのは、今日が初めてです。

―そんな2人を繋いだのが映画『アンダードッグ』になるわけですが、そもそも森山さんが本作に出演することを決めた理由は?

森山:やっぱり、武(正晴)さんと足立(紳)さんという映画『百円の恋』のコンビの作品ってことが大きかったですよね。このコンビは、やっぱりすごく輝かしいものだと思うし、もちろん僕も映画を見ていて、とても素晴らしいと思っていたので、その2人がまたボクシングの映画をやるのであれば、ぜひ参加してみたいなと。

森山未來(もりやま みらい)
1984年8月20日生まれ、兵庫県出身。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。ドラマ『WATER BOYS』(2003年)の出演で注目され、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)ではさまざまな映画賞を受賞。以降、演劇、ダンス、映像などのカテゴライズに縛られない表現者として活躍している。

―そして、その映画の主題歌のオファーが、石崎さんのところにきたと。

石崎:そうですね。僕も武監督の作品は見ていたし……あと、森山さんは、僕、同世代なんですよ。僕は3月なんですけど、同じ1984年生まれで。

森山:じゃあ、もう歳は一緒ですね(笑)。

石崎:そうなんです(笑)。森山さんの出演作は学生の頃からずっと見ていたので、森山さんの主演映画の主題歌が書けるのはすごく光栄なことだなって思って。だから実は、最初からすごく興奮していたんですよね(笑)。

森山:そうだったんですね、それは嬉しいなあ。

本作では、かつて日本チャンピオンにまで手をかけたボクサー・晃(森山未來)が、「かませ犬(=アンダードッグ)」になり果ててなおボクシングにしがみついて生きていく様が描かれる

ボクシングのみならず格闘技初挑戦の森山、ダンスなどとの身体性の違いに石崎が切り込む

―森山さんは、約1年前から身体を作り込んで今回の役に臨んだとのことですが、実際ボクシングをやってみて、どんな感想を持ちましたか?

森山:ボクシングはすごく楽しかったです(笑)。僕は格闘技をやったことがなかったので、重心の考え方が変わったというか、またひとつ学んだところがあって。ボクシングって、すごく低いところから力がくるというか、上半身だけでパンチを打つことがないんですよね。むしろ、上半身だけでパンチを打っちゃいけないって教えていただいて。下からくる力が、最終的に拳に乗っかってくるだけっていう。

石崎:僕は、森山さんの『メタルマクベス』(2007年上演、劇団☆新感線が手がけたシェイクスピア劇 / 作・宮藤官九郎、演出・いのうえひでのり)って舞台も観ているんですけど。

森山:おお、生で舞台を。

石崎:はい。で、そのときも、身体的な表現がすごいなと思って見ていて。森山さんは、コンテンポラリーダンスとかもやっているじゃないですか。

森山:そうですね。

石崎:あと、フジファブリックの“夜明けのBEAT”のミュージックビデオで森山さんが踊っていたイメージもすごい強く残っているんですけど、それらのものって動きがしなやかというか、もっと柔らかいじゃないですか。ボクシングの動きって、それとは真逆なところがあるのかなって思って。これ、ちょっと聞いてみたいと思っていたんです。

森山:ええとね……ダンスの場合でも、下からくる力を上にもってくるような、直線的な力が必要なときはあるんですけど、どっちかっていうと「エコー」というか、下から上がってくるものの余韻とか、大きな流れの「うねり」みたいなものをイメージして身体を動かすことが、ダンスのほうでは僕の場合は多いんですね。でも、そういうことをボクシングで意識していたら、パンチを出すのが遅れるっていう(笑)。

石崎:うんうん。

森山:だから、下から上がってきた力をどこまで速く拳まで届けられるかが、ボクシングの場合は大事であって。その違いはすごく面白かったですね。

何よりもまず大切なのは「戦うこと」。人生も、キャリアも、表現活動も、「勝ち負け」という物差しが先行しがちな現代社会において

―あと、ボクサーのスタイルもあるんでしょうね。北村匠海さんが演じた大村龍太は天才肌のしなやかなタイプのボクサーだけど、森山さんが演じた末永晃は、どっしり構えたタイプのボクサーだから。

森山:そうですね。龍太は足を使ってヒットアンドアウェイみたいなタイプだったけど、僕がやっていたのは、どっちかって言うとインサイドで戦うボクサーだったから。『はじめの一歩』で言うなら、僕が「一歩」で、匠海くんが「宮田」みたいな(笑)。

左から:大村龍太(北村匠海)、末永晃(森山未來)、宮木瞬(勝地涼)。前編では宮木との、後編では大村との試合とそこに至るまでの人間模様が描かれる

石崎:なるほど(笑)。ボクシング映画って、見終わったあとに真似したくなりますよね。僕も家で、シャドーボクシングとかをやりはじめました(笑)。

森山:それはYouTubeで動画とかを見たりしながら?

石崎:そうです。動画を見て真似をしたり、あと菅田(将暉)くんがちょっと前に『あゝ、荒野』(2017年、監督は岸善幸)っていうボクシング映画をやったじゃないですか。

森山:はい。

石崎:曲作りで会う機会があったので、そのときにボクシングの型を教えてもらって、家でずっとやっていたんですよね(笑)。

―ボクシング映画って、これまでもたくさんありましたけど、『アンダードッグ』は、勝ち負けよりも「戦うこと」それ自体に焦点が当たっているところが、すごくいいなって思いました。

森山:ああ、たしかにそうですよね。勝地(涼)くんが演じた「宮木(瞬)」との試合もエキシビジョンっていう設定だから、そもそも勝敗をつける試合ではないわけで。

―「勝敗」ではなく、そういう「戦う姿勢」みたいなものは、ボクシングが好きな人だけではなく、いろんな人の心にも響くのかなって思って。「勝ち組 / 負け組」じゃないですけど、戦う前からレッテルを貼るような風潮があるというか。そもそも戦わなければ負けることもできないわけで、負け続けているということは戦い続けていることでもありますよね。

石崎:僕がこの映画から受け取ったメッセージは、「戦うことの目的は、必ずしも勝つことではない」ってことなんですよね。それが目的ではなく、何度も立ち上がって戦うことが大事なんだってこと。僕はそういうメッセージをこの映画から感じ取りました。

森山:それこそ音楽とかにしても、CDがどれぐらい売れたかで勝ち負けが判断されてしまうとしたらーーそれもひとつの勝ち負けなのかもしれないですけど、そこで戦っているわけじゃないってところも本音ではあったりするじゃないですか。

石崎:本当にそうですよね。

森山:僕にとっても、たくさんの人が映画やドラマを観てくれるとか、舞台にお客さんが入ってくれることはすごく大事なんだけど、そこだけではないというか。それを大きくするための方法論と、自分自身が表現したいものに向かうモチベーションは、また全然違うことだったりするんですよね。そうなってくると、その勝ち負けの判断は、誰が決めるのかっていう。

石崎:うんうん。

森山:もちろん評価を受けたら、それだけで俺は立っていられる。それはもうホント素直なところではあるんですけど、じゃあそれが1億人だったら嬉しいのか、ひとりだったら嬉しくないのかはちょっと曖昧なところがあるんですよね……。

戦い続け、負け続け、恥を晒してなおリングに立つ男が放った、あるセリフについて

―石崎さんは、この映画の最後に流れる主題歌“Flowers”を書き下ろしたわけですが、どんなところから曲を作っていったのですか? 「戦うことの目的は、必ずしも勝つことではない」というメッセージを受け取ったとおっしゃっていましたが。

石崎:今回の映画で森山さんが演じている「末永晃」ってあまり感情表現もない寡黙な男ですけど、脚本を読んだときに個人的に気になったシーンがひとつあって。最後の試合のところで末永がセコンドに「やっぱこれだよな」ってボソッと言うんですよね。

森山:はいはい、ありましたね。

石崎:森山さんのその言い方がすごくグッときて。感情をバーッと出すわけでもなく、ただ内なる闘志みたいなものをすごく感じる言い方なんですよね。こういう歌を作ればいいんだって思って……何かすごく言葉では表現しづらいんですけど。

森山:言いたくても言えないし、言う方法も自分の中では見つけられない状態で、ずーっとジリジリ生きている人間の心を、この歌が代弁してくれているような感じは、すごくありますよね。言葉もホントに寄り添ってくれている感じがして。

―森山さんは気になった歌詞とかありますか?

森山:僕は、ここが好きですね。<天井を見つめる目から / なにげなく落ちるなみだがやまない>ってところ。この歌詞を聴くと、映画の中で末永が、父親役の柄本明さんと一緒に生活しているあの家で、中空を見つめている情景が見えたというか。

石崎:まさにそのシーンを思い浮かべながら書きました。

森山:そうなんですね。しかも、その「なみだがやまない」っていうのが、映画の雰囲気にもすごく合っていて。この映画ってずっと曇天のような重さがある映画で、ずっと何かが降り注いでいるような感じがいいなあと思うんですよね。

石崎ひゅーいの歌が生まれてくるところ。名前もわからない路傍の花に目を向けて生まれた“Flowers”

―武監督は、「ボクサーという非情の世界の住人を花に例えた詩情に感銘を受けた」とコメントしていますが、この「花」というモチーフは、どうやって生まれたのでしょう?

石崎:この曲の制作期間は自粛期間中で……毎日の生活が、家とスーパーマーケットの往来でしかなかったんですよね。で、もちろん、映画とか森山さんからインスピレーションはもらうんだけど、それだけで書くと、それだけの歌になってしまう。そこに自分の何かを足さないと、自分の曲にはならないんですよね。

だから、それをずっと探していたんですけど……僕はいつも、自分の歌に必要な何かを他の人からもらうことが多いんです。誰かと話していて、その人が考えていることとか、素敵だなと思うことを吸収して曲にするっていう。だから今回はどうしようかなって思っていたところもあって。

―自粛期間中は、人にもなかなか会えなかったですからね。

石崎:そうなんですよ。そんなときに、スーパーマーケットに行く途中の道端の、コンクリートの割れ目みたいなところに、名前もわからない花が咲いていて。いつもだったらきっと見落としていると思うんですけど、それが『アンダードッグ』のイメージと重なったんですよね。それを見た瞬間に、バーンと重なったところがあって。そこからもう、そういう歌にしようと思って、一気に書き上げました。

ボクシングで生計を立てられるボクサーは、ほんの一握り。なぜ、彼らは身体と精神を過酷なまでに追い込むのか?

―普段だったら目に止まらないところで、ものすごくドラマチックなことが起こっている。その感じは、この映画と共通するものがありますよね。

森山:そうですね。ボクサーの世界っていうのは……僕が聞いた話だと、日本ランカーでもボクシングだけでは飯が食えないらしくて。世界ランカーになって初めてスポンサーがついたりして、ボクシングだけに集中して生活ができるみたいなんです。世界ランカーって各階級に10人しかいないわけで……その下の人たちって、どれだけの数がいるんですかって話じゃないですか。

―そうですよね。

森山:今回の映画のなかには、僕が演じた晃だったり、匠海くんが演じた「龍太」だったりが出てきますけど、そういう有象無象の人たちがいっぱいる……それがボクシングの世界なんだと思いますし、そのなかでやっていくのは、身体的にも精神的にも、あまりにも厳しいわけで。にもかかわらず、それを続けるというのは、どういうメンタルなのか……この映画のなかでも、龍太は引っ越しのバイトを掛け持ちしながらやっているし、僕が演じた晃はデリヘルの送迎をやりながらボクシングを続けているわけで。

―彼らは、ボクシングだけでは食えてないわけですよね。

森山:そう、食えてないんですよ。なのに彼らは、毎日走ったりトレーニングを続けていて、試合前には1か月で10キロとか15キロとか減量するわけじゃないですか。もちろん、プロのリングに上がったら、そこはきらびやかな場所だけど、そこでボコボコに殴られる。彼らは一体、何にとりつかれてボクシングをやっているのかは最初すごく気になったところでしたね。

映画『アンダードッグ』より、森山未來演じる末永晃

―実際、この役を演じながら、森山さんはその理由みたいなものを、どんなふうに捉えたのでしょう?

森山:もうホントに中毒ですよね。リングという舞台に立つってことそのものに対する中毒性というか。普段の日々がどれぐらい落ちぶれたような生活であっても、リングに上がってしまえば、そこでライトを浴びるわけだし、多い少ないはあるにせよ、人に見つめられたなかで、人を殴る。

その人を殴るってこと、殴られることの快楽もあると思うんですよね。それもある種の中毒であるというか。アルコールでもドラッグでもセックスでもギャンブルでも、一度中毒になってしまったらそう簡単には治せないって感覚にすごく近いものは感じましたね。

なぜ2人は表現活動を続けるのか? 表現欲求は必要なのか?――石崎がこぼした言葉に森山も呼応する

―他の中毒と違って、その行為に熱狂してくれる観客の存在というのもあるわけで。

森山:無観客でボクシングをやっても、多分つらいと思うんですよね。まあそれは、舞台とかステージでも同じかもしれないですけど。

―その中毒性って、音楽にも通じるものがあるんじゃないですか。

石崎:そうですね。どうしてやってんだろうみたいなことは、たまに考えるんですけど……やっぱり意味わかんないですよね。というか、「なぜ音楽やってるのか?」って他人に聞かれても、ちょっと答えられないところはあるかもしれないです。バンドだったらメンバーと切磋琢磨みたいなこともあるかもしれないけど、僕は基本的にひとりでやっているので。

森山:だから、ひゅーいさんもさっき言っていたように、日常のなかでの人の関わりとかが大事になってくるというか。人の関わりを通じて何かを拾ってくるのがすごく大事なんでしょうね。

石崎:特に僕の場合は、それがめちゃめちゃ大事だと思いますね。僕、お芝居をやらせてもらったことが何回かあるんですけど、お芝居をやったあとって、曲がぶわーって生まれるんですよ。

森山:人と散々関わったあと、ひとりになったときにわーって曲が生まれるみたいな。

石崎:そうそう。ひとりでいると、もう何も出てこない(笑)。そもそも表現欲求みたいなものが、自分のなかにどれだけあるのかもわからないので。だから、自分ひとりでは絶対生み出せないんですよね。外の世界と触れ合うことによって曲が生まれるというか。

森山:すごくわかります。前野健太ってシンガーソングライターがいるじゃないですか。まあ、僕の友人でもあるんですけど(笑)。彼が「俺は町の掃除屋だから」みたいなことを言っていたんですよね。彼はバンドでやることもあるけど、彼も基本ひとりじゃないですか。

なので、喫茶店に行ったり、飲み屋さんに行ったりとかして、そこに転がっている言葉を拾ってきて、それが歌になっていくみたいなところがあるらしくて。だから、ひゅーいさんが言っていた、自分自身の表現欲求ではないところから表現が生まれるっていう話はすごく繋がりを感じたし、自分もそれに近いものがあるというか。

―というと?

森山:もちろん、自分で何かパフォーマンスを作ったりすることもあるんですけど、ソロで舞台に立ったとしても、自分ひとりで作品を作っている感覚はないんですよね。そこには照明があったり音響があったり、いろんなものがあるわけで。だから、自分自身はずっと、「依り代」みたいなイメージがある。

最終的にステージに立って届ける人間が僕だとしても、自分が表現することを欲求したから舞台に立っているんだって感じではなく、周りのエネルギーとか想いを自分の身体を媒介にして出すっていう「依り代」のイメージが、僕はすごくあるんですよね。

―今の話を踏まえてあえて聞きますが、森山さん自身が芝居やダンスを続ける理由は何でしょう?

森山:うーん……もう単純に、自分の性格的に、マグロかサメかみたいな話で、止まると死ぬタイプの人間なんですよね(笑)。

石崎:(笑)。

「何かひとつ感情をスイッチさせるというか、その瞬間を、みんな探しているのかもしれない」(森山)

森山:だから、何かしらやっていないと……落ち着きがないと言えばそれまでなんですけど、何かやっていないと落ち着かないっていう(笑)。僕の場合は、そのエネルギーが表現する何かしらにずっと向いているので。

今回のコロナのことで、いろいろスタックした部分はあったんですけど、結局ずーっと何かやっていたんですよね。そのときやれることを探して、誰かに声をかけたりしながらパフォーマンスを作ってきていて……実は今も、『「見えない/見える」ことについての考察』というリーディングパフォーマンスで、全国を回っている最中だったりするんですけど(笑)。

―そうなんですね。

森山:だから震災のときもそうだったけど、今回、僕らがやっているような表現すること、娯楽みたいなものの在り方が、一度パンと打ち切られるような感覚になったんですけど、そのあとに必ず起こるのは表現というものに対する欲求で。表現したい欲求だったり、それを享受したい欲求は、経済とか社会がどれだけ落ち込んでも、むしろそれと反比例するかのように湧き上がってくるところがあって。

石崎:わかります。

森山:そういうものを僕はこのコロナの時期にすごく感じることができたし、それを信じながら、それを楽しみながら、いろいろなことをやってきた。なので僕個人としては、何もできずに苦しかった感覚はなかったんですよね。何かずーっと自分なりに遊んできたというか。だから、これからも多分、そんな感じでいくんだろうなって思います(笑)。

石崎:何かを表現したいんだけど、自分の意思とは関係ないところで表現活動が止められてしまう……そのなかでも曲を作っていかなきゃいけないというか、ある種それぞれの「戦い」をしていかなきゃいけないわけで。コロナの時期もそれと同じようなものを感じたというか、それがこの『アンダードッグ』という映画とすごく重なったところがあったんですよね。

―コロナ禍によって、表現者に限らず、誰もが感情やエネルギーの向ける場所を探しているような感覚はあるんだろうなと思いますね。

森山:僕がこの映画で演じた末永晃なんてどん底にいる風情で、彼が感じていたものと種類は違うのかもしれないけど、何かしらの生きづらさを感じている人はもしかしたらコロナ以前よりも増えてしまっているのかもしれないし……いや、もともとそうだったものが、より表層化したのかもしれないけど。

―ある種、それが浮き彫りになったというか。

森山:晃の場合は、ボクシングが常に横にあって、それに立ち向かわなきゃいけないのはわかっていたんだけど、立ち向かえないままズルズル生きてきたわけですよね。でも最終的に、勝つとか負けるとかではないところで、それに立ち向かっていくという。そうやって、何かひとつ感情をスイッチさせるというか、その瞬間を、みんな探しているのかもしれないし……そのきっかけみたいなものを、この映画は渡せるのかなって思いますね。

石崎:絶対そうですよ。少なくとも僕は、バッチリ受け取りましたから。

石崎ひゅーい“Flowers”を聴く(Apple Musicはこちら

リリース情報
石崎ひゅーい
『Flowers』

2020年11月24日(火)配信

作品情報
劇場版『アンダードッグ』前編・後編

2020年11月27日(金)からWHITE CINE QUINTOほか全国で順次公開

監督:武正晴
原作・脚本:足立紳
音楽:海田庄吾
主題歌:石崎ひゅーい“Flowers”
出演:
森山未來
北村匠海
勝地涼
瀧内公美
熊谷真実
水川あさみ
冨手麻妙
萩原みのり
風間杜夫
柄本明
ほか
配給:東映ビデオ

プロフィール
石崎ひゅーい (いしざき ひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県出身。石崎ひゅーいは本名。2012年にミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビュー。2013年には、書き下ろし楽曲“夜間飛行”が、ドラマ『みんな!エスパーだよ!』のエンディングテーマに。2015年、ロックオペラ『彼女の起源』で舞台出演し、演技に初挑戦。『アズミ・ハルコは行方不明』(2016年)で映画デビュー。ドラマ『トドメの接吻』(2018年)の主題歌楽曲“さよならエレジー”を菅田将暉に提供し話題に。『そらのレストラン』(2019年)に出演するなど役者としても活躍する。2020年11月、映画『アンダードッグ』の書き下ろし主題歌“Flowers”を発表。

森山未來 (もりやま みらい)

1984年8月20日生まれ、兵庫県出身。5歳から様々なジャンルのダンスを学び、15歳で本格的に舞台デビュー。ドラマ「WATER BOYS」(2003年)の出演で注目され、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004年)ではさまざまな映画賞を受賞。以降、ダンス、演劇、映像などのカテゴライズに縛られない表現者として活躍している。2019年には、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』に出演。主な映画出演作に、『モテキ』(2011年)、『苦役列車』(2012年)、『北のカナリアたち』(2012年)、『人類資金』(2013年)、『怒り』(2016年)、『サムライマラソン』(2019年)、日本・カザフスタン合作映画『オルジャスの白い馬』(2020年)などがある。

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