わたしたちのヘルシー

生理や性教育について学び、考えた。バービーらが医師と語り合う

ライフステージや、そのときどきの状況によって、さまざまに変わり、ゆらぐ身体。それぞれ異なる身体を持つ「わたし」がヘルシーであるために、まずは知ることからはじめたい。

女性の心と身体のヘルスケアについて、医師ら医療ケア分野の専門家とアーティスト、クリエイターたちが話し合うオンラインイベント『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~』が、CINRAと、現代日本における女性の健康推進にまつわるとりくみを行うWomen's Health Actionのプロデュースによって、3月6日、7日の2日間にわたって開催された。

3月1日から8日までの「女性の健康週間」と、3月8日の「国際女性デー」に合わせ、CINRA.NETのYouTubeと、She isのInstagramから配信されたこのイベントのダイジェストを、前後編でお届けする(後編はこちら)。

性教育YouTuberのシオリーヌや、村田倫子らが登場。婦人科の「かかりつけ医」をつくることの大切さを学ぶ

She is編集長・野村由芽の司会で、イベントはスタート。オープニングトークとして、Women's Health Actionの副代表でもある対馬ルリ子医師と、She is野村由芽、竹中万季の2人が、イベント全体を象徴するテーマ「わたしたちのヘルシーはどこにある?」について語り合う。

そもそも、それぞれが異なる心と身体の個性を持つなかで、どのような状態を「健康」と考えていくべきか。この問いに対し対馬医師は、WHOの定義をひいて、健康、すなわちウェルビーイングとは、心身そして社会的に良い状態であるという広義の意味があると話す。女性を助けることをテーマに活動してきたという対馬医師は、視聴者に向け「ウェルビーイングは人それぞれ。自分で自分をウェルビーイングだと思えればオッケーです。このイベントをきっかけに自分の内側を理解し、自分の人生や健康への愛情を持ってくれたら」とメッセージを送った。

左から:対馬ルリ子、竹中万季、野村由芽

最初のセッションとなったのは、『女性のためのかかりつけ医のススメ~セルフチェックでわかる婦人科疾患のこと~Sponsored by ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社』。オープニングに続き、対馬ルリ子医師、助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさん、モデルの村田倫子さんが登場し、婦人科のかかりつけ医をつくることの大切さを学んだ。

普段から性に関する情報発信を行なっているシオリーヌさんの進行により、ロシュ・ダイアグノスティックスが制作した冊子『女性のための「かかりつけ医」のススメ』の内容に沿って、「おりものがにおう」「いつもより生理痛がつらい」といった7つの項目について、登壇者たちもセルフチェックを行う。心当たりのある人も少なくないと思われる項目が並ぶが、疾患の兆候を示している場合もあるため、1つでも当てはまる場合は、婦人科へ足を運んだ方が良いのだそう。婦人科は、特別なことがないと行かない場所との印象を持っていたという村田さんも3つの項目が該当し、「この後すぐに予約したいと思います」と受診への意欲を高めていた。

シオリーヌ
村田倫子

「パレットーク」合田文×TRP共同代表理事・杉山文野。さまざまな状況の人にとっての「生理」を考える

She isのInstagramに配信の場を移し、CINRA山本梨央を聞き手に据えて行われたのは、「性にまつわるモヤモヤ」を漫画で読み解くメディア、「パレットーク」編集長の合田文さんと、NPO法人東京レインボープライド共同代表理事として活動する杉山文野さんを招いたセッション『「女性」だけじゃない。みんなで生理のことを話そう』。

合田さんが、現状の生理用品は自身もしっくりこないし、さまざまな性自認を持つ人はさらに自分のものとして買いづらいのではないか、と投げかけると、杉山さんもトランスジェンダーとしての自身の経験をもとに、生理用品の買いづらさや、男性用下着へのナプキンの装着しにくさ、生理時に男性用トイレで生理用品を捨てられずに持ち帰った体験を話してくれる。そこから話題は生理用品の選択肢や、男の子に向けた生理教育などに展開。「生理の話題が当たり前になることで、さまざまな状況にある人の生理についても想像力が働くようになるのでは」と合田さんが述べた。

Instagramライブの様子はShe isのInstagramで公開中

武居詩織と花盛友里に聞く、身体の変化との向き合い方。下着にまつわるお悩み相談も

再びYouTubeに戻り、モデルの武居詩織さんと写真家の花盛友里さんを迎えた『年齢、生活スタイルで変化する、自分の身体との向き合い方Sponsored by 株式会社ワコール』。身体が折々に変わりゆくことは当然のことと思っていても、その変化をすんなりと受け入れがたいことも。武居さんも20代以降、以前より肉付きが良くなったことを気にしていたが、最近はポジティブにとらえられるようになり、内面の美しさが滲み出た身体こそが美しいと思うようになったのだそう。

一方の花盛さんは、健康的な身体に魅力を感じると言い、写真家としてさまざまな個性の身体を持つ女性と向き合ってきた経験から「自分を肯定している人は美しく見える」と話す。音声で登場したワコールの松尾さんによる下着にまつわるお悩み相談が行われたあと、10代から60代までの女性が自分の身体と心にぴったりの下着に出会えた気持ちを表現したワコールの企業CMが流れ、それぞれに異なる身体を肯定するメッセージに、武居さん、花盛さんも共感を示していた。

左から:花盛友里、武居詩織

月経カップなど、さまざまな生理ケアの選択肢を知る。スプツニ子!が抱く、生理に関する問題意識

インテグロ株式会社代表取締役の神林美帆さん、アーティストのスプツニ子!さんとともに、生理ケアの選択肢について考えた『生理の不快感は「当たり前」じゃない。インテグロ社とスプツニ子!さんに学ぶ生理ケア Sponsored by インテグロ株式会社』。膣に挿入して経血を溜めるタイプの生理用品である月経カップ。神林さんは、現在の夫から2度目のデートで月経カップを渡されたことがきっかけでその存在を知って快適さに驚き、月経カップの普及拡大に取り組むようになったのだそう。作品を通じてジェンダーや生理に関する問題提起を行うスプツニ子!さんは、自身も月経カップを利用したことがあると言い、「いまは生理を快適にするさまざまなプロダクトやサイエンスがあるので、耐えなければならないという呪縛から放たれてほしい」と話す。

左から:神林美帆、リモートで出演したスプツニ子!

後半では月経カップと、ショーツ自体が経血を吸収してくれる吸水ショーツの実物が具体的な使用方法とともに紹介され、広がりを見せる生理用品の新たな選択肢に触れる機会となった。

グローバルスタンダードを知って現状のおかしさに気づく。長田杏奈と考える、日本における性的同意や避妊にまつわる問題

She isのInstagramに移り行われたのは、『長田杏奈さんと考える、性的同意や避妊のこと』。美容ライターとして、それぞれの人が自尊心を育むことを応援したいという思いを持って活動するなかで、個々の努力では解消できない構造的な不条理や差別の存在に突き当たったと言う長田さん。同意のない性行為に関する刑法が実情に合っていない現状や、日本の性教育に抱いている危機感に触れ「自分のいる場所だけを見ていると、多くを望んではいけないような気がしてしまうけれど、グローバルスタンダードを知ると現状のおかしさに気づけるし、外国でできるなら私たちにもできると想像できるようになる」と話す。

おすすめしたい本として、酒井順子『処女の道程』(新潮社)、小川たまか『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を。』(タバブックス)、また刑法改正に関するキャンペーン「#同意のない性行を性犯罪に」、日本において避妊の選択肢が少ない状況へ問題提起を行う「#なんでないの」など、性的同意や避妊に関する学びを得るための具体的な方法がたくさん紹介された。

Instagramライブの様子はShe isのInstagramで公開中

バービーが自身の通院経験も語る。生理痛とどう付き合っていく?

『生理痛とどう付き合っていく?みんなで考えるお悩み相談会 Sponsored by あすか製薬株式会社』には、バービーさん(フォーリンラブ)、赤羽駅前女性クリニック院長の深沢瞳子医師が登壇した。人それぞれ痛みや症状も異なる生理痛。まずは深沢医師から生理の基本的な仕組みと、生理に関わる疾患について解説。初経年齢が早まったことや、出産回数の減少、初産の平均年齢が高くなったことなどにより、現代の女性は生理の回数が増えており、婦人科系の疾患も増えているのだそう。

左から:深沢瞳子、バービー

視聴者から集まったお悩みにおいても、生理痛に関する不安を抱えている人が珍しくないことがわかり、医療に頼って生理をコントロールすることを考えても良いと言う深沢医師に対し、バービーさんも生理に関する悩みを複数抱えているため、いくつかの病院を掛け持ちで通っていると話す。また、自身のYouTubeに婦人科受診を勧める動画を掲載したところ、動画を見て病院に足を運び、疾患が見つかった人がいたという例をあげ、「ハードルが高く感じるかもしれないけれど、自分の身体のために主体的に行動してほしいと思います」とメッセージを送った。

バービー

「知識は鎧でお守り」。たなかみさきと高校生たちが学ぶ、「人権教育」である性教育

初日最後のセッションとなったのが、『教えて!学校では習えない、からだのお悩み相談室 Presented by 一般財団法人 日本女性財団、Supported by 公益社団法人 ガールスカウト日本連盟』。「サッコ先生」の愛称で知られる埼玉医科大学産婦人科の高橋幸子医師と、イラストレーターのたなかみさきさん、ガールスカウト日本連盟所属の高校生、みうさんとさえさんが出演した。

左から:高橋幸子、たなかみさき

「性について知らずに性の世界へ飛び込むのは、ブラックホールに吸い込まれに行くようなもの。知識は鎧でお守りです」と力強く宣言する高橋医師。ガールスカウト日本連盟が行なった『女性の健康と性に関する女子高生アンケート』の結果や、みうさん、さえさんの性教育に関する悩みや意見に触れながら、世界的に性教育は「人権教育」とも言われており、未来の選択肢を広げるための権利としての性教育を広めたいと高橋医師は話す。ラジオパーソナリティーとして、リスナーからPMSやパートナーとの関係についての悩みを受け取ることも多いというたなかさんは、「情けないけれど知らないことばかりでした。でも知るのは遅くないし、もやもやと考えていたことが社会問題でもあったんだと腑に落ちました」と、感想を話した。

左から:たなかみさき、みうさん、さえさん、高橋幸子

>後編:PMSや妊活、生殖のことを知り、話し合う。犬山紙子、和田彩花も登壇

※アーカイブ動画公開の終了に伴い、YouTube動画の埋め込みを削除しました(2021年4月1日追記)

イベント情報
『わたしたちのヘルシー ~心とからだの話をはじめよう~』

2021年3月6日(土)、3月7日(日)
時間:12:00~19:00
料金:無料



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