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リリー・フランキーが『シェル・コレクター』に単独主演した理由

リリー・フランキーが『シェル・コレクター』に単独主演した理由

『シェルコレクター』
テキスト
麦倉正樹

リリー・フランキーが15年ぶりの単独主演作に『シェル・コレクター』を選んだ理由

「15年ぶりの単独主演作は、またしてもカルト映画になりました」。そんな言葉とともに届けられたリリー・フランキー主演の映画『シェル・コレクター』が、間もなく公開される。独特の雰囲気をもった「俳優」として、もはや日本映画には欠くことのできない存在となったリリー・フランキー。しかし、冒頭の言葉通り、「単独」主演作となると、故・石井輝男監督の遺作『盲獣 vs 一寸法師』以来、約15年ぶりであるという。リリーはなぜ、本作で久方ぶりの「単独主演」を引き受けたのだろうか?

リリー・フランキー ©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
リリー・フランキー ©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

リリー:こういう映画は必要ですよね。そもそも、制作者側の意図として、お話でもって感動してもらうというものではなく、見る人が自分のなかに1回入れて、その断片を感じていくような映画ですから。かつて『ガロ』という漫画雑誌に載っていたようなテイストというか……『ガロ』の漫画も、何の話があるわけじゃないけど、何か残っていくようなものがあるじゃないですか。そもそも今作の坪田監督は、『ガロ』の漫画家になりたかったような人ですから(笑)。

1970年代の『ガロ』に掲載されていた安部慎一の漫画を映画化した『美代子阿佐ヶ谷気分』(2009年)で商業映画デビューを果たした本作の監督・坪田義史。虚構と現実を織り交ぜた映像を特徴とする彼の「作家性」は、今回の『シェル・コレクター』でもいかんなく発揮されている。

二極化する日本映画界において、「わかりやすさ」を第一としない映画を肯定する意味とは?

「聖と俗のあいだにあるマージナルな部分を行き交うような作品にしたかった」。監督がそう語る本作に、いち早く反応し、「捨てたはずの俗世が襲いかかってくるこの感じ……。シンプルにしようとしてもできない人間の生活。都会で暮らす人たちこそ見てほしい映画です」とコメントを寄せたのは、『南くんの恋人』など、『ガロ』にも執筆経験のある漫画家・内田春菊だった。

公開前に内田とトークショーを行った坪田監督は、虚実が入り混じった自らの詩的な映像表現のルーツとして、冒頭でリリーが述べていたように、漫画雑誌『ガロ』の存在を挙げていた。さらに、つげ義春の漫画『ねじ式』(1968年)が掲載された号を持参しながら、自身の『ガロ』愛について熱く語り、フェイバリットの1つとして、監督は、かつて内田も女優として出演した、三池崇史監督のカルト映画『ビジターQ』(2001年)を挙げていた。

『シェル・コレクター』坪田義史×内田春菊トークショー風景
『シェル・コレクター』坪田義史×内田春菊トークショー風景

90年代、何度も映画化されたつげ義春の漫画をはじめ、女優として内田が出演した一連の作品など、「わかりやすさ」を第一としない野心的なインディペンデント映画が数多く存在していた日本映画界。しかし、超低予算の小さな映画と、マーケティングを意識した大規模な映画に二極化しつつある現在、それらの映画は非常に数が少なくなっているという。本作に寄せて「まるで、ヌーベルバーグの映画のような感触」とコメントしたのは、ミュージシャン・岡村靖幸だ。岡村のみならず、多くの著名人が『シェル・コレクター』に「初めて見る映画への驚きの声」を寄せている。つげをはじめとする『ガロ』の世界観と、ヌーヴェルヴァーグ(1950年末に始まったフランスにおける映画運動)やネオリアリズモ(第2次世界大戦直後に興ったイタリアの映画運動)の世界観を融合させた新しい映像世界の幕開け。「こういう映画は必要ですよね」というリリーの言葉からは、今の日本映画が失いつつある「新しい驚きのある映画」への期待が感じられる。

©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

映画とアートを心から愛するキャストスタッフが集結し、織り成した貴重な作品

そんな現在の日本映画界において「特殊な映画」を完成させたのは日米の才能たちだ。『ロッテルダム国際映画祭』で『タイガーアワード賞』の受賞経験もある牧野貴が何層にも重なる抽象映像で登場人物たちの心象風景を描き出し、劇中の絵画を松任谷由実や小沢健二のジャケットイラストで知られる画家・下條ユリが担当している。

製作には『スモーク』プロデューサーの黒岩久美と西島秀俊主演『CUT』のエリック・ニアリ。また、撮影には『岸辺のふたり』など日本映画のファーストカメラウーマンとしても知られる芦澤明子が参加。昼間のシーンは16ミリフィルム、夜のシーンはHDカメラ、海中シーンは高解像度の4Kカメラで撮り上げたというこだわりようだ。劇中音楽はMedeski Martin & Wood(アメリカのジャズファンクバンド)のドラマー、ビリー・マーティンが担当し、本作が持つ不穏さ、妖艶さ、不可解さ、人間自身が持つアンビバレントを表現している。

©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会
©2016 Shell Collector LLC(USA)、『シェル・コレクター』製作委員会

「わかろうとする、見るのではなく、感じて欲しい」(寺島しのぶ)、「こんな映画を待っていた。誰かの忘れられない映像体験になる」(池松壮亮)、「監督のこだわりや撮影地の持つ力が結実してエンターテイメント作品になる、とても幸福な体験」(橋本愛)など、実際に映画を数多く観ることで知られ、インディペンデントから大作までこなす俳優たちも本作への熱いコメントを寄せている。制作スタッフはもちろん、出演者たちを含めた、さまざま映画人が期待を寄せる本作。詩的に美しい映像表現を、そして何よりも衝撃のクライマックスを、是非その身体で感じてもらいたい。

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作品情報

『シェル・コレクター』

2016年2月27日(土)からテアトル新宿、桜坂劇場ほか全国で公開
監督:坪田義史
原作:アンソニー・ドーア『シェル・コレクター / 貝を集める人』(新潮クレスト・ブックス)
音楽:ビリー・マーティン
出演:
リリー・フランキー
寺島しのぶ
池松壮亮
橋本愛
配給:ビターズ・エンド

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