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Vampire Weekendを紐解く6つの視点 オロノ、角舘健悟らが綴る

Vampire Weekendを紐解く6つの視点 オロノ、角舘健悟らが綴る

Vampire Weekend『Father Of The Bride』
編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

2010年代はどのような時代だったのだろうか? 振り返るにはまだ少し早いかもしれないが、この混沌と狂騒の10年のはじまりのことはよく覚えている。

<You understood so you shouldn't have fought it(君はわかっただろう、争うべきじゃなかったんだ)>と歌われる“Horchata”から幕開けるVampire Weekendの2ndアルバム『Contra』がリリースされたのは、2010年1月11日のこと。泥沼化するイラク戦争、リーマンショックに端を発する世界経済の低迷……振り返るとかなり悲惨な時代の真っ只中に、この祝祭的な音楽が鳴っていたわけだ。「カテゴライズや偏見、レッテルや先入観への疑問に突き動かされ、多文化と多ジャンル、多重構造を織り込みつつ、全米1位。それは幸福神話が崩壊した2000年代の、それでも先を示す福音のように2010年を照らした」――『snoozer』誌のインタビュー(2011年2月号掲載)の序文にこう書かれているように、『Contra』は間違いなく新しい時代の音だった。

あれから9年。『第56回グラミー賞』を勝ち取った前作から丸6年ぶりとなる新作『Father Of The Bride』が到着した。混乱の時代の終わり、新たな時代の前夜にVampire Weekendは何を描き出したのだろうか。今回、CINRA.NETでは、6人の書き手による6つの視点で本作を紐解いていく。書き手は、オロノ(Superorganism)、角舘健悟(Yogee New Waves)、辰巳JUNK、福岡晃子(チャットモンチー済)、清水祐也、田中宗一郎。2019年、もっとも優れたポップミュージックが切り取った世界の姿を、その眼と耳で確かめてほしい。

「7年前、Vampire Weekendに抱いた執着心の正体」 テキスト:オロノ(Superorganism)

VWを最初に見つけたのは2012年、冬のこと。きっかけは親父の古いiPod touchで狂ったように遊んでいたギターヒーローのアプリ。「狂ったように」、というのは、近所のゲーセンで週末になると朝から晩まで『太鼓の達人』を極めるクソガキ並に遊んでいた、ということ。遊べる曲が少なかったのにも関わらず、毎日、通学中、同じ曲達を何度も何度も聴きながら、必死に画面を叩きまくっていた。選曲は割とジャンルがはっきりとした「ロック」ものばかりで、The White Stripesの“Seven Nation Army”、The Rolling Stonesの“Paint It, Black”、Rise Againstの“Savior”、Weezerの“Say It Ain't So”など。その中に『Contra』のリードシングル、“Cousins”がぽつりと。VWは唯一名前すら聞いたことのないバンドだった。

第一印象は、「変わったバンド名、変わった歌詞、変わったボーカル、変わった構成、そしてムカつくほどキャッチーなリフ、なにこの意味不明なバンド」のようなものだった。むしろ、意味がわからなさすぎて、実際に彼らのことを検索する意思さえ全くなかった。音楽史のことを全く知らなかったにも関わらず、「1970年代に一瞬流行ったパンクバンドなんだろうな」と勝手に解釈していたのを覚えている。

『Contra』収録曲

いつもの様に遅くまでパソコンをいじっていたとある夜、私はついにVWをYouTubeで検索することにした。最初に見たのは“Cousins”のPVで、興奮を抑えきれなかった私は彼らの他のPV、ライブ映像、インタビューなど、隅から隅まで探った。見たものすべてが予想外で、新しいものを見つける度に(いい意味で)裏切られるのが楽しくて仕方がなかった。1か月後にはやっと『Vampire Weekend』と『Contra』のCDを両方手に入れ、その数か月後になっても必死にVWを聴き続けた。両アルバムとも、毎日少なくとも2回は最初から最後まで聴いていただろう。

一体なぜあそこまで彼らに夢中になったかは今になってもよくわからない。簡単に言えば、エズラのすべてが最高にカッコよく感じた、という理由がある。けどそれだけで野口オロノのVWへの執着心を説明できるはずがない。多分、初めてVWを聴いたときに思ったあの「は? なにこれ、なんでこんなにいいの?」という疑問に対する答えを切実に突き止めたいからなんだと思う。7年後、VWの素晴らしさについて訊かれても、なかなか上手く説明できない。というか、説明したくない。聴くだけで十分だからこそ最高なんだ、と思う。

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リリース情報

Vampire Weekend『Father Of The Bride』
Vampire Weekend
『Father Of The Bride』(CD)

2019年5月15日(水)発売
価格:2,592円(税込)
SICP-6117

1. Hold You Now feat. Danielle Haim
2. Harmony Hall
3. Bambina
4. This Life
5. Big Blue
6. How Long?
7. Unbearably White
8. Rich Man
9. Married In A Gold Rush feat. Danielle Haim
10. My Mistake
11. Sympathy
12. Sunflower feat. Steve Lacy
13. Flower Moon feat. Steve Lacy
14. 2021
15. We Belong Together feat. Danielle Haim
16. Stranger
17. Spring Snow
18. Jerusalem, New York, Berlin
19. Houston Dubai(日本盤ボーナストラック)
20. I Don't Think Much About Her No More(日本盤ボーナストラック)
21. Lord Ullin's Daughter feat. Jude Law(日本盤ボーナストラック)

プロフィール

Vampire Weekend(ゔぁんぱいあ うぃーくえんど)

2006年、米NYコロンビア大学在学中に、エズラ・クーニグ(Vo,Gt)、ロスタム・バトマングリ(Key,Vo)、クリス・バイオ(Ba)、クリストファー・トムソン(Dr)の4名で結成。早期から注目を集め、激しい争奪戦の末インディーレーベル「XL Recordings」と契約。2008年にリリースされたデビューアルバム『Vampire Weekend』はデビュー作にして全米・全英チャートいずれもトップ20入りを果たす。2ndアルバム『Contra』(2010年)は全米チャート1位を獲得し、グラミー賞にもノミネート。3作目『Modern Vampires of the City』(2013年)では2作連続となる全米チャート1位を記録し、インディーロックバンド史上初の2作連続全米1位という快挙を達成。同作は『第56回グラミー賞』最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞を受賞。2016年、メンバーのロスタム・バトマングリが脱退を発表。エズラ・クーニグ(Vo,Gt)がソングライター / プロデューサーとして参加したビヨンセ「Hold Up」(アルバム『Lemonade』収録)で、『第59回グラミー賞』ノミネートを獲得。これまで『Summer Sonic』『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演を含む計7度来日。2019年、レーベルをコロンビアへ移籍し、6年振り新作『Father Of The Bride』を発売。全米チャート1位を獲得。

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