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天国も地獄も表裏一体? KIKIと行く禅の宇宙『白隠展』

天国も地獄も表裏一体? KIKIと行く禅の宇宙『白隠展』

内田伸一
撮影:西田香織
2013/01/22

「悩みの時代」と「晩年の境地」を反映した達磨像

先ほどのジョン・レノンの逸話も示す通り、白隠ワールドにおいて達磨像は欠かせない存在。6角形の展示空間に足を踏み入れると、それぞれの壁面に掛けられたいずれ劣らぬ個性派の達磨たちに囲まれるような気分です。KIKIさんが吸い寄せられるようにその前に立ったのは、中でもひときわ異彩を放つ1点。漆黒の背景から朱色の衣をまとい屹立する、通称「朱達磨」です。大分県・萬壽寺所蔵のこの『半身達磨』は、白隠の代表作とも言われます。

『半身達磨』萬壽寺蔵(大分県)
『半身達磨』萬壽寺蔵(大分県)

KIKI:筆使いも色彩も、何もかも大胆で……すごい絵ですね。こうした絵が当時しっかり受け入れられたことや、それが守り継がれてきたことにも驚きます。萬壽寺の方々は、どんな思いでこの絵を見つめてきたんでしょう。それにしても、これを最晩年に描ける白隠さんもすごいです。

そう、この絵は何と80歳を超えてから描いたものなのです(ちなみに没年は84歳)。よく見ると頭部の描線は下描きを大きくはみ出すなど、技巧を超越した白隠の筆使いが伝わってきます。添えた賛に書いてあるのは「まっすぐに自分の心を見つめて、仏になろうとするのではなく、すでに仏であることに気付きなさい」という禅の核心的な教えだそうです。答は己の中にある、ということでしょうか。

右:『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)
右:『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)

いっぽう、その右隣にある達磨さんはかなり対照的。精緻なタッチで暗く影のある思い詰めた表情を描いたこちらは、白隠40代の作品です。現代美術家の村上隆さんは、先日テレビ番組でこの達磨像を自ら模写したことを明かしていました。この絵に見られる表現者・求道者としての白隠の姿勢に感じるところがあったのでしょうか。15歳で出家して以来、厳しい修行を各地で積みながら悟りを得ていった白隠。2つの達磨像の対比はそのまま、苦悩の最中にあったころの白隠と、大きな悟りを得た晩年の境地を表しており、そんな変化が見比べられるのも魅力です。KIKIさんはこんな風につぶやきました。

『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)
『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)

KIKI:もともと私たちが想像する達磨のイメージって、悩み多い眼でこちらを睨んでいる感じですよね。いっぽう『朱達磨』は、そこから一歩先の世界に行ってしまったような凄みを感じます。そう考えると、禅の世界を詳しく知らない私たちでも先入観を持ってしまっているんだな、と改めて気付かされもします。

『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)
『半身達磨』永明寺蔵(静岡県)

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イベント情報

白隠展 HAKUIN 禅画に込めたメッセージ

2012年12月22日(土)〜2013年2月24日(日)
※2013年1月22日(火)から、一部作品の展示替えを予定
会場:東京都 渋谷 Bunkamuraザ・ミュージアム
時間:10:00〜19:00(入館は18:30まで)、毎週金、土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
休館日:なし
料金:
当日 一般1,400円 大学・高校生1,000円 中学・小学生700円
団体 一般1,200円 大学・高校生800円 中学・小学生500円

プロフィール

KIKI

1978年東京生まれ。モデル、女優。武蔵野美術大学建築学科在学中からモデル活動を開始。雑誌やTVCM、連載などの執筆、ラジオのパーソナリティやアートイベントの審査員など多方面で活動中。2004年、塚本晋也監督作品『ヴィタール』で女優としての活動をスタート。MBS系連続ドラマ『漂流ネットカフェ』でのヒロイン役として出演。現在は『NHK高校講座芸術-美術』の司会、日テレ系『ゆっくり私時間-my weekend house-』に出演中。近著に『山スタイル手帖』(講談社)、『美しい教会を旅して』(マーブルトロン)、『山・音・色』(山と渓谷社)など。雑誌『OZmagazine』(スターツ出版)の表紙と巻頭モデルを2009年より務めている。

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