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早く人間になりたい Neat’s(26歳女子)

第1話:「わたし、つまらない人間ですか?」
「隣の家の芝生なんぞ、青すぎて見れない」

「隣の家の芝生なんぞ、青すぎて見れない」
これは、個人的に進路や交友関係にもっとも悩んでいた20歳前後の頃、よく頭をよぎった言葉である。人は誰しも理想の自分、理想の未来を思い描くけれど、その思惑通りに人生が運んでいる人なんて、ほとんどいないだろう。そもそも、たまらなく眩しく見える「隣の家の芝生」でさえ、心の中には様々な悩み、葛藤を抱えていたりする。理想とかけ離れた現実を受け入れて生きていく……なんて、改めて言葉にするのもためらわれるくらい、誰もが呼吸するように無意識に行っていることだ。

そんなことを考える私と同い年ながら、10代の頃には早くも「RYTHEM」というユニットでソニーからメジャーデビューをした新津由衣という女性アーティストがいる。その華々しい経歴(分かりやすく書けば、「ミュージックステーション」や「HEY!HEY!HEY!」に出演し、両手で足りないほどのタイアップを曲をリリースしている)、誰の目にも眩しく映るチャーミングなルックス、自分自身で作詞作曲を手がける才覚…。「隣の家の芝生」なんて思うのも気が引けるような別世界の住人が、今年2月のRYTHEM解散後すぐ、これまでの一切を投げ打って、何の後ろ盾もなく、たったひとりで新しい活動をスタートさせた。その話を聞いた時、私の心のなかに湧いた興味と感情は、決して褒められるような類いのものではなかった。

現実っていうのはそんなに甘くないはずで、理想通りに事が運ぶなんてあり得ない。

新津のように若くして成功を収めた人が、そうした現実の厳しさを知った時、果たして何を思うのだろうか。はたまた、そんなことおかまい無しにまた成功の階段を駆け上がってしまうのであれば、新津の何が私たちと違うのか。それを確かめるために私は、彼女がスタートさせたソロプロジェクト「Neat's」を追いかける連載をスタートさせることにした。

どこか不自然なのは、なんでだろう。

取材当日、私の目の前に現れた新津は、「普通の女の子」と呼ぶにはどうしたって華やかで、目をひく女性だった。それどころか、こちらの質問に対しても驚くほど的確な答えを返してくる。10代の頃から音楽業界で仕事をし、数えきれないほどの取材を受けてきたのだから当たり前かもしれないが、それにしても的確、というか、意外と理屈っぽい。心から発露する想いというよりも、新津のなかに確固たる理由付けが存在し、「解答」が用意されているような印象なのだ。その不自然さに違和感を覚え、その正体を突き止めようと取材を進めていくに従って、少しずつ浮き彫りになっていったその正体は、私にとってとても意外なものだった。

新津:この2〜3年で友達ができたという感じで、それまではあんまり本当の意味での友達はいなかったんですよね。だから学生の頃って、友達と一緒にいても静かになる瞬間がとにかく怖くて、必死に空気を読もうとしてました。でも、「もう無理!」って思ったらその場から一目散に退散したりして…。話をしても「何もわかってないな」って感じると、すごく距離を感じてしまうようなところもあったし。人のことを信じられないっていう気持ちがあったんだと思う。

端から見ている新津由衣はとっても明るい女の子なのに、この話に象徴されるように、新津の過去は意外にも暗い。

新津:子供の頃って、大人たちの会話の中に、理解できない内容が沢山あるじゃないですか。それが何だか気持ち悪くて、わからないこと全部に対して「なんで?」って質問をしていたんです。自分にとってはゲームみたいなものだったんですけど。でも、その「なんで? ゲーム」を続けていったら、次第にみんなが何も答えてくれなくなって、その時に「なんだ、誰も答えなんか知らないんだ」って思って。大人すら「正解」がわからないことを知って、自分が何を信じていいのかわからなくなっていったんです。

第1話:「わたし、つまらない人間ですか?」

既に、ここで言われる大人の域に突入している私たちにはよくわかるだろうが、そうやって屈託のない「なんで?」を連発されると、周囲は沈黙せざるを得なくなる。どうして新津は、そんな風に不信に陥るまで「正解」を求めようとしたのか、その理由や心境はわからない。ただ、不信に苛まれた新津が、拠りどころのない自分にとっての「救い」を探し求めたのは、自然な流れだったのだろうと思う。

幼い新津は、父がデザイナーだったことも手伝って、「モノ作り」に没頭していったらしい。自分の外に信じられるもの得られなかったが故に、「自分が作ったものしか信じられない」という心境に達した彼女は、小学5年生の時に、ストーリーからイラスト、製本までを1人で手掛けた絵本を作り上げている。「全部嘘だ」から「全部自分で作ればいい」へ。それが彼女にとって一番腑に落ちる考え方だったのかもしれない。

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