特集 PR

早く人間になりたい Neat’s(26歳女子)

「誰かと繋がりたい!」

こうして、自分以外のものを信じられないまま成長した新津由衣。ところが、「人が嫌いか?」という質問には、淀みのない瞳で「全然、むしろ大好き」と即答する。信じられないのに、人のことが大好きという矛盾を抱えているのが、新津の特殊なところかもしれない。「誰かと繋がりたい!」という気持ちは人一倍強いし、それがうまくいかなかった時にやってくる負の波も、彼女にとっては「まぁいっか」と受け流すことのできないほど、巨大であり、恐怖だった。

さて、そんな新津の転機になったのが、高校生になって同級生たちと結成したコピーバンド。そのメンバーだったYUKAの誘いを受け、ソニーミュージックが主催するボーカルオーディションを受けることになったのだ。

当然メジャーレーベルのオーディションともなれば、野望を抱えてやってきたライバルたちがズラリと並んでいたのだろうが、歌手になりたい! という強い意志があるわけでも、特別なレッスンを受けたわけでもなく、ただ「モノを作りたい/シーンを作りたい」という思いだけでその場に立った新津。本人曰く「かなり浮いた存在だったと思う(笑)」という肩の力の抜けた存在感が目にとまったのか、新津はなんと、そのオーディションに合格してしまう。図らずも、業界最大手のレーベルから、ボーカルグループ「RYTHEM」としてデビューすることになったのだ。

早く人間になりたい Neat's(26歳女子)

※RYTHEMのラストアルバムとなった4thアルバム『リズム』

結果的にRYTHEMは、デビューシングルでいきなり7万枚を超えるヒットを生み、最終的には4枚のオリジナルアルバムを発表し(シングルは最高でオリコン12位、アルバムでは6位を記録)、2500人近くを収容できるZEPP TOKYOでのワンマンライブをソールドアウトさせるまでになった。本当にごく限られたアーティストしか辿り着けないポジションまで、一気に駆け上がったのだ。

心をすり減らしながら、前進を続けていく

では、デビューして間もなく輝かしい世界へと足を踏み入れたRYTHEMが何故解散をしたのか。その理由について、私は詳しく知らないし、尋ねもしなかった。当たっているかはわからないけれど、少なくとも解散に関する新津にとってのひとつの真実は、もうすでに語られていたように思ったのだ。

もともと「モノ作り」しか信じるものを持たなかった人間が、ひとまずそれを横にのけて、人と繋がりたいという願望のもと、「人に喜んでもらうこと」を目指した音楽活動を続けていく。そしてまた、「自分の中から出てきた音楽に対してNO! っていう意見が出てきたときに、死んでしまおうかってくらい、自分の存在意義がなくなっちゃう」と語る新津にとって、RYTHEMでの活動は、人と繋がっていく喜びと、自分の存在意義とのせめぎ合いだったのではないだろうか。

実際のところ、新津の音楽的な好みを聞いてみると、国内外のクリエイティブなアーティスト名が数多く出てくる。フジロックに行って、夢中でライブを見続けるくらいの音楽好きだ。と同時に、メジャーシーンで求められる「流行歌」を生み出す使命に対して「革命をおこしたい」という気持ちを抱いていたというのだから、RYTHEMとしての音楽活動に、多くの葛藤はあっただろう。

早く人間になりたい Neat's(26歳女子)

新津:私、音楽に関しては「デザイン」が必要だと思っているんです。芸術家は、自分が生み出した作品があって、以上。それが評価されようがされまいが構わない。ただ、誰かがいて、私がいて、その間に作品があって……そういう繋がりを作ろうっていうのは、デザイナーの思考回路だと思うんですよね。だから、自分にとってすごく忌々しい方程式だったとしても、それが誰かと繋がるツールとして有効ならば、どんな意見も取り入れてみたいと思ってるんです。

メジャーシーンのなかで音楽を作り続けてきた新津の発言としては、的を得ているのかもしれない。ただ、新津の本心は、本当にこの言葉通りなのか。相変わらず、空気を読んでしまっているだけではないのか。繋がるためだからといって、モノ作りが好きな自分の気持ちを押し殺しているのではないか。この時点ではまだ、新津の発言に対する違和感は、拭い切れていなかった。

 
PAGE 1 > 2 > 3 > 4

「早く人間になりたい  Neat’s(26歳女子)」連載もくじへ

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別 1

    映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別

  2. 横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇 2

    横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇

  3. ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの 3

    ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの

  4. 木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら 4

    木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら

  5. King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開 5

    King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開

  6. 高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送 6

    高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送

  7. カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用 7

    カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用

  8. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース 8

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース

  9. YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用 9

    YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用

  10. スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催 10

    スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催