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早く人間になりたい Neat's(26歳女子)

第3話:大いなる「ごっこ」の勧め

あえて選んだ「賢くない」選択

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しかし現実的な話をすれば、Neat'sのやっていることはやはり無茶である。「自分でできることは自分でやる」、と言えば聞こえはいいかもしれないが、アーティストとしてリスナーからお金をいただく立場なのだから、当然「プロフェッショナル」でなければならない。音楽を作って歌うところまではプロでも、それをプロモーションしたり、ウェブサイトで商品を販売したりするようなことはその道のプロに遠く及ばないのが現実であって、それを無理に自分でやるのは、決して賢い選択とは言えないように思う。実際、今のNeat'sの状況を俯瞰して眺めてみれば、「元RYTHEMの新津由衣がDIYで頑張ってる」という面白がられ方の域を出ないものかもしれない。

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Neat's: ソロでやろう! と決めた時にメジャーのレコード会社を色々探したわけではなく、活動のコンセプト自体に、「まずはひとりでやってみよう!」というのは最初からあったんだけど、この状況が不安だったり怖いっていうのは、もちろん常にあります。例えばファンだったり、今までお世話になったスタッフの方だったりからどう見られてるかはすごく気になるし、やっぱり渋谷公会堂やZEPPでワンマン・ライブをやっていた頃を知ってる人からすると、今は「規模が縮小した」って印象だと思うんです。

――でも、メジャーではやれなかったようなことは、自由にできるようになったわけですよね?

Neat's: そうなんだけど、メジャーにいる知り合いから「自由に好きなことをやれてていいね」って言われるのは、すごく悔しい。だって、本当にそう思うならこっち側に来て同じようにやればいいのに、やっぱりこっちには来ないんです。きっと「(Neat'sは)楽しくやってていいね!」って思っているだけで、その先に成功があるとは思われていないんだと思う。でも私は、このやり方が今は可能性があると思うからこういう活動をしてるんです。そして、私がやってることを本当に羨ましがってもらうためにはまずなによりも、ちゃんとした結果を出さなくちゃいけない。

この話からも分かる通り、Neat'sは自分自身の状況を正確に分析できるくらい冷静で、自分の力量や方法論を妄信しているわけでもない。それでも彼女は、現状に対する悔しさと葛藤を抱えながら、あくまで自分のやり方を貫こうとしている。普通にリリースすれば、レコード・ショップや音楽メディアからの応援も期待できる中で、彼女はNeat'sとしての処女作を、オフィシャルサイトからのWeb通販という誰の手も借りない形で、リスナーの元に届けることにしたのだ。

Neat's
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Neat's: これが正解なのかはわからないけど、「大変だから誰もやらないこと」っていうのを、今は丁寧にやってみたいんです。そういうことってやってみないとわからないし、取りあえず、この大変さを乗り越えるパワーが、1回目だけはあるような気もするから(笑)。結構ワクワクしてるんですよ。

「ごっこ遊び、みたいなことなのかもしれない」

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こうしてNeat'sは、1月28日に1stアルバム『Wonders』をリリースした。同作は、Neat's自身が作詞・作曲・アレンジを手掛けた全11曲入りのCDと、7本のPVやドキュメンタリー映像などを収めたDVDの2枚組となっており、一聴してまず、その鮮やかとも言える振り幅の広さに驚かされる。それはおそらく、Neat'sプロジェクトをスタートしてからの約半年間、彼女が貫いてきた「毎月新曲を発表する」という公約の賜物でもあるだろう。自分の音楽を待っていてくれる人たちに向けて毎月新たな驚きや感動を届けるために、音楽制作に全力を注ぎ、さらにはそんな日々を更新していく――まさに猪突猛進と言える活動を集約した内容となっている。

Neat's

Neat's: メジャーでやってる時って、お客さんにお金を出してもらっているのに、実際にCDやチケットがどうやってみんなの元に届くのか、その仕組みを全く知らなかったんです。それである時、路上ライブをさせてもらったことがあったんですけど、路上でやってるアーティストのお客さんって、「そのアーティストが好きだから会いに来ました!」っていうダイレクトな形で、それが衝撃的だったんです。そういうね、お客さんにとって「私じゃなきゃダメなんだ!」っていうのを、私もまず実感したい。そのために、色んな仕組みがどうなっているのか、全部自分でやってみたかったんです。

確かにNeat'sは、音楽以外ほとんど全てが素人だ。前述したように、プロには遠く及ばないレベルのまま色んなことを自分自身でやり切ってしまう。ある時彼女はそれを「ごっこ遊び、みたいなことなのかもしれない」と言ったのだが、言葉尻を捉えれば、プロとして物議を醸す発言だ。果たしてそんな「真似事」を誰が喜ぶのか、そういう風に思う人もいるかもしれない。しかし、例えば人気のアイドルとか、ロックバンドのボーカルが、活動のすべてを自分たちでやっていたらどうだろう。そのファンは狂気して喜ぶだろうし、きっとそのアイドルやボーカルのことを、もっともっと好きになるんじゃないだろうか。

でも、恐らくメジャー・フィールドにおいて、そんな労力のかかることしているアーティストは1人もいないだろう。もしいたとしても、それはきっと周りの仕掛け屋たちによる演出であり、そういう風に自分を偽り、演出に身を任せることに疑問を感じたから、Neat'sは今全てを1人でやっているのだ。メジャーという大きな枠組みの中で、プロフェッショナルな集団が描いた道を、自分の本質を鎧で隠しながら歩き続けるのではなく、1人の26歳の女性として、自分の思うことを、思うようにやってみたい。自分の非力さをただ嘆いて諦めるより、「ごっこ」でもいいから、失敗を繰り返しながらでも、自分自身でやってみる。そうやって、不器用だけど、一生懸命一歩ずつ前に進もうとしているNeat'sから、いつの間にか目が離せなくなっている自分がいた。

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