コラム

「フジワラノリ化」論 −必要以上に見かける気がする、あの人の決定的論考− 第5回 優香 其の四 巨乳を隠すことで露わになるもの

「フジワラノリ化」論 −必要以上に見かける気がする、あの人の決定的論考− 第5回 優香 其の四 巨乳を隠すことで露わになるもの

武田砂鉄
イラスト:樅田裕美(momi)
2009/03/27

其の四 巨乳を隠すことで露わになるもの

あれは中2の頃だっただろうか、巨乳をめぐって議論が白熱する。中2男子なら、誰しもがやる議論である。デカければいいのか、まずはそこから始まる。マガジンやジャンプからヤングジャンプやヤングサンデーへ背伸びすると、冒頭のグラビアの露出度が微増する。今までソファーに座ってハート型のクッションを抱いていたのが、シャワーを胸の谷間に注いで、こちらを威嚇するような眼差しを向けてくるのだ。いよいよ巨乳が「起動」するのである。その巨乳を前に中2の心は揺れる。揺れる、という言い方は、はぐらかしているかもしれない。すみません。そう、興奮するのだ。雛形あきこのポストカードを持っているクラスメイトがいた。前屈みになりながら両腕で大きな胸を寄せて上目使いで見てくる雛形を前に、その男は言った。このポストカードをもっと上から覗き込むように見てみろよ、中が見えるぜ。男子便所から、ひゃっほーいという大きな声が上がる。隣の女子便所には聞こえなかったろうか。上から覗けば中が見える。そんなわけないじゃんかとオトナは冷静に言うだろう。でも違う。見えたか見えなかったかではないのだ。見えるような気がしたのだ。その胸の膨らみは、妄想の、夢想の、スケールを甚大にしたのだ。

第5回 優香

優香がデビューした97年に僕は14歳だった。ヤングの付く雑誌のグラビアだけを立ち読みしていた僕の目に飛び込んできた優香ときたら……いや、特に印象はない。前回・前々回で記したように優香の存在というのが突出してセンセーショナルだった時は無いのである。ホリプロがグラビアに参入した最初のアイドルとなれば事務所の力も強力に働くだろうが、その出方にはリア・ディゾンが「グラビア界の黒船」と言われたような別格の何がしかは見当たらなかった。巨乳とロリコン顔の併せ技は強いとされている。いじわるそうな狐目と巨乳というクラシックな巨乳(代表例:熊田曜子や小池栄子)と、ロリコン顔との掛け算(例:ほしのあきや井上和香)、巨乳の世界はこの対照で何となく二分されている(例として挙げた人物は私見に過ぎない)。優香はどちらかというとロリコン顔に近いが決して二分されたどちらというほどまででもなかった。巨乳と何を掛け算したかとなれば、「普通」だったのかもしれない。デビューして翌年、マツモトキヨシのCMでブレイクする。まずスタートが巨乳ありきではなかった。一度CMでブレイクして、その後で巨乳に正式にスポットが当たったというような感じだった記憶がある。巨乳の使い方(使われ方)としてはなかなか珍しい。そこからは淡々と巨乳を晒した。雛形あきこ・青木裕子・黒田美礼あたりが持っていた「お姉さん」的な披露に比べて優香のそれは、近くにいる女子高生が…、というテイストであった。「近さ」が通底していたのを覚えている。

そんな優香が巨乳を隠し始めたのは、2000年くらいだろうか。バラエティに盛んに出てくるようになった頃、男性誌の優香バブルが途絶えた。しかしそれは消えていくという類いのものではなくて、ここぞという時には登場する、真打ち登場との意味合いがあった。リア・ディゾンにしても、ほしのあきにしても、とにかく出まくってしまう。需要に答えるのが仕事とはいえ、それでは単なる1つの波になりその波に自分が乗っかってその波は消えてしまう。業界の話をしてもしょうがないが、ホリプロの引き方と、そうはいっても引ききらない出し方は巧みだった。例えば前出の青木裕子はミュージシャンになりたいと言って辞めた。佐藤江梨子は何故だか小説を書いた。雛形あきこはめちゃイケという格好の場で食いつなぐ。小池栄子はどうに未だ居場所が定まらない。優香の、巨乳の抜き方は絶妙だったのだ。気付いたら、もう胸を出さなくなっていたのである。小倉優子・安田美沙子・若槻千夏のように、巨乳が先立たない、決して巨乳でもないグラビアアイドルは、気付かせずに出すのを止めるのが容易である。しかし、巨乳から入ると、人はその巨乳が出なくなるのを分かりやすく嫌がる。優香はその嫌悪を貰わずに巨乳から抜け出したのだ。

話が途端に下世話になるかもしれないが、さて、その隠された巨乳をどうしようかという話だ。男性週刊誌を見ていると、2週間に一度は、隠れ巨乳は誰だと、服の上からでもハプニング画像からでもその人の胸の大きさを測る。アイドルはもちろん、女子アナ、女子スポーツ選手、そして政治家と、枚挙にいとまがない。服を着たMEGUMIや小池栄子を見ているとどうしてもグラビア時代の写真なりが蘇る。しかし、優香はそうではない。中2の精神を持ち出せば誰の服でも水着でも脳内的には脱がすことはできるのだが、優香はそれを必要とさせない。言ってみれば、脳内的に温存されているわけだ。例えが貧相すぎて恐縮だが、北朝鮮のミサイルのようなもので、いざとなったら出せる最強の武器を、人に気付かれず温存しているのである。これは強い。2週に一度のその手の特集で必ず上がるのが上戸彩の隠れ巨乳についてである。これはもう長年言われていることで、むしろ巨乳に写るのを(事務所の選択として)拒んでいるような気配すらある。これも温存であり、今後の武器である。優香と同じ事務所の綾瀬はるかもかつてはグラビアイドルだった。優香を見習うかのように、グラビアアイドルとしての巨乳を封印している。優香をバラエティに、綾瀬を女優業に、この2人の転身は巨乳アイドルにおける最良の転職だったと言えるだろう。戻ることはない。そして戻ることはできない職種である。しかし、内包したその武器は残存している。いつ出すか、という戦略の問題もあるけども、重要なのは、出すことも出来るという選択肢を自身で作り上げたことである。晒したものを回収し備蓄にする。この点で優香の強度は相当なものになっているとしていいだろう。

次回・最終回は、この巨乳論をふまえ、「優香の死に方」と題して、優香はこれからどうやって生き残っていくのか、数年後ではなく、数十年後という枠組みで語り、優香論を締めくくりたい。

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