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「フジワラノリ化」論 第6回 土田晃之 其の二 非・権力者として毒舌を極めた土田晃之

「フジワラノリ化」論 第6回 土田晃之 其の二 非・権力者として毒舌を極めた土田晃之

武田砂鉄
イラスト:樅田裕美(momi)
2009/05/22

其の二 非・権力者として毒舌を極めた土田晃之

土田晃之は至ってクールである。積極的に笑わないし、ましてや立ち上がって手を叩いて前のめりになることはない。先輩がサブいギャグをかまして周りがズドドと転げているのに、彼は、淡々と立ったままである。何やってんだこの人達は、という目をしている。その目を場によって使い分けもしない。上島竜兵とダウンタウンと島田紳助、同じ対応をする。もちろん、その細かい所に配慮を忍ばせたりはするのだが、忠誠心の具象化を未だに強いる古い世界に置いて、土田の態度は新しい。政治で生き延びようとしない。加えて、お祭り的に騒いでもお祭りは長持ちせずに終わることを知っている。土田自身、コンビ・U-turnとして「ボキャ天バブル」を経験している。相方の対馬は、ボキャ天のブームが下降する最中に、一般企業に就職する、という、珍しい形でコンビを解消させている。ボキャ天(タモリのボキャブラ天国)という番組は、今のお笑いブームで量産されているようなネタ番組ではなく、しょせん駄洒落や替え歌に過ぎなかった。もちろんそれはそれで楽しめたのだが、真の意味で当人達のレベルを測る番組ではなかった。にも関わらず存在だけが一人走りしてアイドル化し、言ってみれば「もう後戻りできない状態」であり、故にそのブームは不安定だった。自分が中学生の頃だったろうか、クラスの女子達はボキャ天メンバーの中から誰それがイイとお気に入りを選択し、ネタではなく存在を好んでいた。やんちゃな男子は、ネプチューンやデンジャラスのノッチなど、その誰それを真似ることで女子から喝采を浴びていた。U-turnは確実にこの選択肢からこぼれていた。実力はあるが(というかあの番組形態では実力は見えないのだが)目立ち切れないコンビだった。対馬が一般企業に転職して解散というのも、事後報告のように聞かされたと記憶している。とにかく、別にどうでもいいコンビだったのだ。

現在の土田の冷徹さを、この時の経験などと容易く言ってしまうのには抵抗がある。有吉が再ブレイクしているが、猿岩石として一度売れなくなった経験を持った反動がこのように、との言質を見かける。土田にも同じような言い方は出来てしまう。しかし、それってどうなのか。物語の中に乗せることは簡単である。土田や有吉の場合、一度消えかかっているわけだから、浮上してきた流れを物語に乗せればそれなりのストーリーにはなる。でもそれが現状の強度を築いたのではない。現状の強度はあくまでも「今」作っているものなのだ。土田の冷徹さは、今そこで冷徹を貫く意志が漲っている。そこに僕は感嘆する。

毒舌、と聞いてイメージする芸人はいくらかいるだろうが、まず思い浮かんでくるのはビートたけしや爆笑問題の太田だろうか。そういえば佐高信が政治に蔓延るたけし菌と題して、東国原や橋本知事を、フィーリングで善悪へ急ぐ悪癖があると断じていた。それだけを指して「たけし菌」と称すのは無理があるが、間違ってはいない。ここでひとつ確かなのは、毒舌というのは権力者から非権力者へ注がれるものであって、それこそ勝俣のような、下から上への物言いは、予定調和に留まることが多いということ。現在の土田は、その式を独りで反転させている。有吉が毒を吐く。皆が笑う。その笑いは、こいつこんなとこであんな人に向かって言っちゃっていいのかよという、状況が発する笑いである。しかし、土田の毒舌が起こす現象はそのまた反転である。要するに、権力者の毒舌と変わらないのだ。場の反応、その毒に続いていく様、が等しいのだ。例えばダウンタウンが出川哲朗を罵った時と、土田が出川哲朗を罵った時、これが何故か均質的に差し込まれるのだ。権力者が「うるせぇわい」と口撃する。土田も「黙ってろよ」と続く。でも、それは「立て続けに」言ったに過ぎないのだ。(前回から何度も出して恐縮だが)勝俣ならば「黙ってろよ」ではなく「ほんとだよ、オマエは」みたいなノリで乗っかるだろう。毒にも薬にもならない。土田の毒舌はそうならない。出川哲朗にせよ上島竜兵にせよ、相乗的に突っ込めば突っ込むだけ返してくる人達と仕事をする機会が多いというのも結果的な要因となるだろう。

第6回 土田晃之

その立場・転回が許されるのは、土田の毒舌の精度があまりにも高いからである。彼のコメントは絶対に場を寸断しないタイミングと音量と映り方で放たれる。突っ込みによって流れを遮らないのだ。実は、これって大きい。場の盛り上がりを消すか、場を一旦止めるかでしか、非権力者は毒舌をかますことは出来なかったはずの所、彼は流れの中で毒舌を活用する。最近ではダウンタウンや明石家さんま辺りの信頼も高く、話の流れに起伏を持たせたい時に「なあ、土田」と発言をふるようになってきている。カメラが土田を捉えると、彼はいつもの冷静な顔のまま、毒を吐く。「ね、もう、死んじゃえばいいのにね」「こいつホント役立たずなんですよ」、その手のヒドい発言が、どうゆうわけかその対象を彩るように思わせる力を保有している。ネガティブな連鎖を締めくくる彼の毒舌が、結果的にその対象の「顔を立たせる」ことに繋がっていくのだ。

土田が権力者になることは無いだろう。だが勝俣のように、権力にピッタリと寄せておくだけの人間におさまることも、これまた無いだろう。このまま非権力者として放言を続けていく。土田の評価、この場合の評価とは冠番組を持つとかそういうことではなく、彼の定期的需要は高まる一方に違いない。彼が安定供給されることで、レベルはそもそも違うのに同質感覚があるがゆえに土田的ポジションで出ていられるあれこれは淘汰されていくだろう。土田はそれを知ってかしらずか、今日もあの顔で毒を吐いている。次回は、「土田晃之に内在するヤンキー性と体育会系」と題して、元ヤンキーという土田の出自を辿りながら、ヤンキー・体育会系・芸人、この三項目に通底するアナログな人間関係の制度に迫りつつ、土田晃之の深部を見つけ出す手がかりとしたい。

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