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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.10:三浦康嗣(□□□)

ポップな音楽性を追求した
独自の編集者的な目線

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□□□のインディーズデビュー作『□□□』(2004年)はそんな三浦さんのヒネクレ魂が炸裂した、最高にシティでポップなアルバム。リリース元のHEADZは、ポストロックやエレクトロニカ、音響系などコアな音楽をリリースし、音楽ファンに支持されるレコードレーベルとして有名ですが、なぜそこであえてポップスのアルバムを出そうと思ったのでしょう? その理由からは三浦さんの「編集者的な目線」が浮かび上がってきます。

三浦:HEADZには、大好きな山本精一さん(ROVO、想い出波止場)だけでなく、音響派って言われるようなアーティストも所属しているのですが、僕らが同じことをやってもしょうがないから、とことんポップな歌モノアルバムをマジメに作ったら面白いかも? って思ったんです。たぶん、僕は編集者というかプロデューサー体質で、自分たちのバンドですら俯瞰的に見て、今のシーンにはこういう音楽があったら面白いんじゃないか? っていう考え方なんですね。あまり歌ったことがない人が、いきなり本気で歌ったら面白いものになるように、僕らも得意にしてきたブレイクビーツに歌を乗せましたっていうものじゃなく、コード感もしっかりあって電子音やサンプリングを使わない、アレンジ全体で歌を聴かせるような、「普通のポップス」にしたかったんです。

1作目から高い評価を得た□□□は、『ファンファーレ』(2005年)、『20世紀アブストラクト』(2006年)を経て、メジャーレーベルcommmonsに移籍。現在はメンバーでもある、いとうせいこうさんも参加した傑作メジャーデビューアルバム『GOLDEN LOVE』(2007年)をリリース。ポップスにこだわりつつ、やはり異端でもある独自の世界観は、日本の音楽シーンで大きな話題になりました。しかし、そんな□□□の成功とは裏腹に、三浦さんは音楽制作に行き詰まっていたそうです。

三浦:『GOLDEN LOVE』の制作中から音楽を作るのが辛くなって、もういいやって思ったんです。曲を作ることにあまり面白みやファンタジーを感じなくなったというか……。振り返ってみても「オレこんなすごい曲を作ったんだ」っていう気持ちはまったくないんですよ。いまだに頼まれないと曲を作らないし、作れないんですが、そうは言ってもやっていれば自分なりに発見があったりするから、今でも音楽をやれているわけで。だから、音楽活動って学校みたいだなって思うんですよね。行くまではめんどくさくてサボりたいんだけど、行ってみたらわりと楽しいみたいな(笑)。

ポップとかキャッチーであることって
マナーみたいなものだと思っている

三浦康嗣(□□□)の機材

とは言え□□□は、フィールドレコーディングをコンセプトにしたアルバム『everyday is a symphony』や、声をモチーフにした『マンパワー』など、三浦さんの苦悩を払拭するかのように、より自由奔放かつアバンギャルドなサウンドを生み出し続けています。1つの型に縛られない、常に既成イメージから逸脱しようとする三浦さんの原動力はどこから湧いているのでしょう。

三浦:じつは最初のアルバム『□□□』を作る前に、所有していたCDやレコードをほとんど処分したんです。レコードを買い続けていると自分の中にいろんなものが蓄積されていきますが、それに寄り掛かってしまうのは、僕としては良くないなって思って。芸術は純粋かつマジメに没頭するべきだって言われますが、なんでマジメじゃなきゃいけないのか僕にはよくわからない。「音楽=仕事」とか言うと、夢がないって思う人もいるだろうけど、僕はそんな理想みたいなものはいらないし、それくらいのスタンスで音楽に関わっている人がいたほうが面白いんじゃないかって思うんです。そういう意味でも常にファンタジーを取っ払いたいっていう気持ちはありますね。レコードを手放した理由もそれが大きかったと思います。

ここには、三浦さんのアーティストとしてのスタンス、アツいこだわりが垣間見えます。そして続いてこんなことをおっしゃられていました。

三浦:だから、□□□の音楽が逸脱しているかどうかと言うと、他人の音楽をあまり聴いていないからよくわからないんです。ただ、僕が自由に音楽を作ると、歌も入っていない最初から逸脱したものができてしまうから、できるだけそうならないように心がけてはいます。僕はポップとかキャッチーであることって、マナーみたいなものだと思っているんです。人前に出るのであれば最低限の身だしなみでちゃんと挨拶できる。僕の作る音楽もそうあってほしいんです。

副業の□□□!? と並行して行った
本業の職業音楽家作品集『WORK』

三浦康嗣(□□□)

先日発売された、三浦さんのソロ2枚組アルバム『WORK』は、□□□と並行して行ってきた、さまざまなアーティストのリミックスやCM音楽など、職業音楽家としての作品がたくさん詰まっています。普通なら本筋とは別の作品と思われがちなアルバムかもしれませんが、じつは三浦さんにとっては、とても思い入れのあるアルバムだと言います。

三浦:僕自身、筒美京平さんのような職業作曲家になりたいって思いながら、ずっと音楽を作ってきました。□□□では歌っているから、必然的にフロントマンをやっていますけど、本当は表に立つのは苦手なんですよ。だから、『WORK』に入ってる作品が本業で、□□□は副業と言ってもいいくらいです(笑)。まあ、□□□として活動したおかげで作曲の仕事もいただけるようになったんですけどね。

『WORK』には、いろんなタイプの曲が詰まっていますが、その都度作曲のオファーをもらいながら、課せられたハードルを乗り越えてきた自身の成長記録でもあると言う三浦さん。そのキャリアを振り返るアルバムを出すことができて、感慨深い思いもあるようでした。また昨年末、メジャーデビューからずっと所属してきたcommmonsを離れたことについても伺いました。

三浦:べつにcommmonsに不満があったわけではまったくなくて(笑)、ただ毎年契約が自然に更新されていくのが当たり前だった自分たちの状況を、変えたほうがいいかなって思ったんです。もちろんcommmonsの方は、最初ものすごく驚いていましたが、快く送り出してくれました。

そんなターニングポイントともいえる今年。これからやってみたいことを聞くと、こんな興味深いお話がでてきました。

三浦:大瀧詠一さんのことがずっと気になっていたんですけど、最近になってようやく大瀧さんのことが、なんとなくわかるような気がしてきたんです。僕も近いうちに『A LONG VACATION』みたいに習作じゃなく、かつたくさんの人に楽しんでもらえるようなアルバムを1枚出してみたいなって。それで認めてもらえることができたら、「音楽は仕事だ」とか言っても、冷たいとか、夢がないとか思われなくても済むのかなって(笑)。

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