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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.21

SAKANAMON

疾走するロックンロールのサウンドに、J-ROCKでは滅多に使わないような言葉をあえて選び、人間の弱さや脆さ、情けなさを歌う3ピースバンド、SAKANAMON。「何の役にも立たないもの」「がらくた」という意味を持つタイトルを冠した3枚目のアルバム『あくたもくた』は、これまでの方向性をさらに突き詰め、SAKANAMONワールド全開の内容。宮崎から上京する直前、バンド崩壊の憂き目に遭い、一時は酒浸りの日々を送っていたというボーカル&ギターの藤森元生さん。そんな彼が再び音楽の楽しさを見出し、夢を追いかけようと思ったきっかけとは? 普段リハーサルやレコーディングに使用しているという所属事務所スタジオを訪ね、赤裸々な歌詞を生み出す原動力などについて語ってもらいました。

テキスト:黒田隆憲 撮影:豊島望

SAKANAMON

SAKANAMON(さかなもん)

「聴く人の生活の『肴』になるような音楽を作りたい」という願いを込めて「SAKANAMON」と命名。2009年より現在の編成で都内を中心に活動開始した、藤森元生(Vo,Gt)、森野光晴(B)、木村浩大(Dr)の3ピースギターロックバンド。2011年にリリースした1stミニアルバム『浮遊ギミック』が話題を呼びスマッシュヒット、翌年リリースした2ndミニアルバム『泡沫ノンフィクション』と共にロングセラーとなっている。日本語の解体と再構築を自由自在に繰り返し紡ぎ出す独特のシュールな歌詞世界に、中毒性の高いポップなメロディーはまさに「肴者世界」。2012年12月5日初のフルアルバム『na』でメジャーデビュー。ドラマ(テレビ東京ドラマ『たべるダケ』)のオープニングテーマとして"花色の美少女"を書き下ろしたり、藤森がスペースシャワーTVドラマに出演するなど、多才に活躍中。

http://sakanamon.com

勉強も運動も苦手だったから選んだ
「オンリーワン」になれる道

SAKANAMONの機材

宮崎県清武町出身の藤森さん。幼少の頃は、元気でやんちゃな、いわゆる「わんぱく坊主」。勉強や運動は少々苦手で、図画工作が大好きでした。自作のスーパーカー消しゴムを友達にあげたり、コースを作って走らせたり、学校の休み時間には手先の器用さを活かしてもの作りに励んでいました。

藤森:音楽に目覚めたのは、兄の影響です。僕が小学5年生の頃、3つ上の兄がバンドをやり始めて、GLAYやL'Arc-en-Cielなどを家で流してたんですよ。それを一緒に聴いたり、テレビの音楽番組を見たりするうちに、僕も音楽が大好きになっていきました。親父がアコギを持ってて、それを譲ってもらって弾くようになったのが、楽器をやるようになった始まりですね。小学生の頃って、勉強か運動ができるやつがモテるじゃないですか。両方ともダメな俺が、「他で勝てるものは?」って考えたとき、「自分には絵と音楽があるじゃん」と思ったんです。「モテたい」というよりは、自分の存在意義を求めてたのかもしれないですね。オンリーワンになりたかったんですよ。みんなから「あいつはいなくてもいい人間」というふうに思われたくなかった。

兄からエレキギターを譲り受け、バンドをやり始めたのは中学生の頃。文化祭ではGLAYやL'Arc-en-Ciel、BUMP OF CHICKENなどをコピーしていました。オリジナル曲を人前で演奏するようになるのは高校の頃からですが、曲作りは小学生の頃からやっていたそう。

藤森:小学生のときに作ってたのは、アホみたいな曲ですけどね(笑)。30曲ぐらいはあったんですけど、恥ずかしくて人前では聴かせられなかったです。当時はまだ歌いたいことなんて特にないし、全くリアリティーのない曲ばかり。たしか、生まれて初めて書いたのは“これからの歌”っていう曲で、「なぜ今があるのか、わからないでいいのか」みたいな歌詞で……「絶対そんなこと考えてないだろ」っていう(笑)。でも、作ることは楽しかったんですよね。自己満ですけど、「俺は曲も歌詞も書けるんだぞ」と思って。

高校時代の最後に喪失感を味わい
夢なんて見れない人間に

藤森元生(SAKANAMON)

高校で組んだバンドも今と同じ3ピース。その頃になると、NUMBER GIRLやASIAN KUNG-FU GENERATION、くるりといったバンドに傾倒し、「プロになりたい!」と本気で思うように。曲作りも少しずつ満足のいくクオリティーになっていき、ひたすら音楽へのめりこんでいきます。

藤森:「おしゃれなコードって、どうやって弾くんだろう」とか、いろいろ勉強するようになって。その頃はバンドがすべてでしたね。学校が終わったらすぐに練習に行き、常に合宿をしているような状態。他のメンバーもよくついてきてくれたなと思います。高校卒業後は、三人で上京して、プロを目指すつもりでいました。ところが、同じ東京の音楽専門学校に願書を出して、行く学校も決まり、最後に「九州ツアーしよう」ってなった矢先に、解散してしまったんです。理由は……これ以上この三人で続けるのは苦痛だなって。それで、そのバンドでプロを目指すという目的はなくなってしまったんですけど、とりあえず三人で上京して、しばらくはルームシェアもしてました。

上京前に挫折を味わい、しばらくはバンドをやる気も失せてしまったという藤森さん。最初のうちは通っていた専門学校も、途中からはほとんど行かなくなってしまいます。

藤森:バンドをやることに対してトラウマに近い気持ちがあったのかも。「人と関わるのが嫌だ」って思ってました。だから、夢を見ない人間になりましたね。「音楽で食っていこう」なんてさらさら考えないようになったし、「趣味でやっていければいいや」と。2年間専門学校で音楽を学んだら、実家に帰って好きな音楽を一人で作って、Myspaceとかで配信して、フリーターでもやろうかなって思ってました。途中からは専門学校も行かず、曲も作らず、家でずっと『北斗の拳』を読みながら酒浸りの日々でした(笑)。

音楽の楽しさを思い出したきっかけとは?

SAKANAMONの機材

転機は突然訪れます。同じ専門学校に通う友達が、「ゲストボーカルとして参加してくれないか?」と藤森さんを誘いました。

藤森:お遊びのバンドだったので、僕も軽い気持ちで歌いに行ったら、すごく楽しくて。そのときのドラムが今のキムさん(木村浩大)なんですが。それでまた「バンドいいな、もう1回やってみようかな」って思うようになったんです。そうすると、自然とまた曲も書けるようになったんですよね。きっと肩の力が抜けて、人の曲を気楽に歌ってみたことで、「音楽の楽しさ」を再び取り戻したのかもしれない。だから、あのときバンドに誘ってくれた友達にはめちゃくちゃ感謝してます。実は、1stアルバムに入ってる“便乗鴎の世界”は、僕を救ってくれたその人のことを歌った曲なんですよ。

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