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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.22:サイプレス上野とロベルト吉野

将来への不安やリスクなどは一切考えずに
ただ目の前のことを夢中にやるうちに広がった未来

KORG

「サイプレス上野とロベルト吉野」というユニットは、結成のための「誓い」を交わしたわけでも、誰かに結成を「表明」したわけでもありませんでした。「たまたま近くにいた、暇な者同士が組んでみただけ。それが今日までずっと続いている」と二人は話します。

吉野:高校生の頃、どうにかレギュラーを持ちたくて、「クラブサーカス」(横浜の老舗クラブ。現在は閉店)に通い詰めていたら、週1でDJをやらせてもらえるようになって。高校を卒業してからも、朝起きて練習して、家帰って練習して、ラーメン食いに行って練習して、それから風呂入って……その繰り返しでした。

上野:「仕事」って言葉が一切出てこないな(笑)。

吉野:当時から、金よりも趣味を優先させたいって気持ちが強かったから。

上野:それは間違いないね。BOSEさん(スチャダラパー)にも、「暇なヤツが仲間にいるのは大事」って言われました。俺も吉野も暇で、毎日吉野の実家に入り浸っていて。「たまたまそこにいたヤツとグループを組む」というくらいのテンションの方が長続きするんですよね。将来への不安とかは一切なかったです。このまま今日と同じ日常がずっと続くんじゃないかって思ってましたから。

「夢に向かってひた走ろう」とか、そんな大義名分もなく、ただ何となくグループを結成し、直前に迫ったDJバトルやクラブイベントのために練習をしてステージに立つ日々。目の前のことをただ夢中でやっているうちに、気づけば世界はどんどん広がっていきました。

上野:横浜のクラブシーンでも、「なんか戸塚にヤバイヤツがいるらしい」みたいな噂が広がって、雑誌なんかにも載るようになって。レギュラー仕事も次々と決まっていったんですよ。そうすると、さすがに「やるしかねぇな!」と思って、段々盛り上がっていきました。

評論家や音楽通を唸らせるより
地元の人たちを楽しませたい

サイプレス上野とロベルト吉野のスタジオのレコード

サ上とロ吉として、2004年に1stEP『ヨコハマジョーカーEP』、2007年に1stアルバム『ドリーム』をリリース。その後、このドリームハイツの一部屋を購入しプライベートスタジオを設立します。東京から離れた郊外の、駅からの交通も決して便利とは言えないこの場所にこだわっているのは、やはり二人の強烈な地元愛なのでしょうか。

上野:単純に都心へ出る理由がないから、ここに住んでるだけですけどね(笑)。でも、この場所から何かを生み出したいという気持ちはあります。それと、ここに住むおじいちゃんおばあちゃんも聴いてくれるような、そんな存在にならなきゃなって思う。表に出す以上、音楽評論家に採点されるのは仕方ないけど、音楽通を唸らせるより、地元のスーパーで買い物してるおばちゃんとかに「あんたたち、しっかりしてきたわね~」って言われたい。もちろん、最低限のヒップホップマナーとか、俺たちなりのこだわりはあるけど、「ヒップホップはこうじゃなきゃいけない」みたいなものに縛られるのはもういいかなって。去年ドリームハイツのクリスマス会でライブをやって、今年も夏祭りに呼ばれてるんですけど、そこでライブをやるのは、他のどのステージに立つときよりも頭使いますよ。観に来る人がホントに不特定多数だし、俺らみたいなの毛嫌いする人もいるだろうから、どうすれば楽しんでもらえるかをめちゃくちゃ考える。

そんな二人の姿勢こそが、「ヒップホップ ミーツallグッド何か」を座右の銘に掲げ、「決してヒップホップを薄めないエンターテイメント」と称されるライブパフォーマンスの秘密なのかもしれません。今年4月にリリースされたアルバム『コンドル』は、吉野さんの活動休止期間を経て制作された、サ上とロ吉にとって「復活の1枚」でもあります。

吉野:とにかく不摂生な生活を送ってて。毎晩泥酔して、酔いが残ったまま次の日も飲んで、ってことを繰り返していて……。いろいろと思い詰めていたことやプレッシャーも重なって、遂に体が破裂してしまい、しばらく活動を止めさせてもらうことにしました。その間、他の仕事に就いて、半年くらいタンテも触らずにいたんですよ。でも今思えば、その空白期間があったおかげでそれまでの変なクセが取れたし、肩の力を抜いてプレイできるようになったのかなと思います。

上野:あのときはデビュー10周年という節目で、スケジュールも過密だったしね。活動休止する前の頃は、二人で顔を合わせるたびにギスギスしてた。くだらないことをやってるときはキャッキャしてるのに、ライブになると「お前、ミスんなよ」「そっちこそミスってんじゃん」って言い合ってたんですよ。ずっと一緒にいるとそうなっちゃうときがあるんですよね。まあいろいろあったけど、1度立ち止まったことで見えたこともあるし、とりあえずここからが再スタートってことで。

年齢差17歳、東京女子流とのコラボ企画も実現
親しい関係性の秘訣は?

サイプレス上野とロベルト吉野のスタジオからの眺め

吉野さんが療養中、ソロ活動を行っていた上野さん。その一環で、東京女子流の中江友梨さんと「サ上と中江」を組み、ミニアルバム『ビールとジュース』をリリースしました。MTV JAPANの番組『サイプレス上野と中江友梨の青春日記』から発展したこの作品は、中江さんの驚くほど成長していくラップスキルと、上野さんの歌モノへの飽くなき愛情が交差した、企画ものとは思えぬクオリティーです。

上野:今回、「ちゃんとメロディーを聴かせる曲」ということを改めて意識しましたね。これまでも歌モノを作ってきたつもりではいたけど、どうしても自分たちの快感原則を優先させたトラックに走りがちだった。「サ上と中江」では、歌の強度をすごく大切にしています。友梨ちゃん(中江)の適応能力にも驚かされましたよ。リリックは全部彼女が書いてるし、俺は韻の踏み方を多少サジェスチョンしただけ。それも借りものじゃなくて、全部自分のものにしてたからすごいな、と。友梨ちゃんは17歳だから、彼女にとって俺は倍の年齢(上野は34歳)なんですよ(笑)。最初はぎこちなかったですけど、番組を一緒にやってるうちに徐々に親しくなってきて。LINEでやり取りするようになってからは、お互いタメ口ですね。人生相談までしてきてくれます(笑)。こっちも子ども扱いせず本気でダメ出しするから、向こうもぶつかってきてくれるんだと思いますよ。

突発的な出来事や、成り行きに身を任せ、「行き当たりばったり」でここまできた二人。一体、どのくらい先の未来まで見据えているのでしょうか。

吉野:俺は、そんな先のことまで考えてないですね。「今日は、これやるか」くらいかな(笑)。

上野:そうだね。でも、あそこ(横浜薬大スタジアムを指差す)ではいつか仲間を集めてライブをやりたい。東京から友達とかを呼ぶと、観光気分で横浜に来るじゃない? ライブをしに来てるのに、中華街とか行きたがるし(笑)。俺らが東京に行っても、別に観光したり土産物買ったりしないですからね。やっぱり横浜や神奈川は、東京に一番近い田舎で観光地なんですよ。その差を感じることが多いので、「東京に負けてられるか、こんな田舎からやってやる!」って気持ちは常にある。この場所で踏ん張っていきますよ。

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