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あの人の音楽が生まれる部屋 vol.25:真部脩一

誰にでもできる方法で
誰もやったのないことを

KORG

そうして真部さんが生まれて初めて書いた曲が、相対性理論の“おはようオーパーツ”(作詞・作曲:相対性理論)でした。シンプルで透明感のあるペンタトニックの響き、連符を多用したリズミカルな旋律は、それまで誰も聴いたことのない音楽としてシーンに強烈なインパクトを残します。

真部:今思うと、いろんなことを考えながら作った曲ですね。『ベストヒットUSA』で流れるようなアメリカンポップスやロックが好きだったので、そういうリズムセクションの上で、UK的な上モノが乗ったらどうなるだろうとか。当時の自分が思いつくコード進行は、しょーもないものばっかりだったので、それをいかにモーダルに、かっこよく聴かせられるかを試行錯誤した結果、我ながら「面白いものができた」と思いましたね。あそこまでメロディーをシンプルにできれば、あとはどれだけデコラティブ(装飾的)にしても破綻しない。それに、汎用性があって、誰にでも再現できるんですよ。誰にもできない技法や手法を追及するのは、すごく疲弊することなので、誰にでもできる方法で、誰もやったことないことをやるのが一番いいなと思っていましたね。今もそう思っています。

相対性理論を脱退した後にぶつかった現実
それでも忘れられなかった「奇跡の体験」

真部脩一の機材

2012年、相対性理論を脱退した真部さんは、フリーランスのミュージシャンとして、新人ミュージシャンのデモ制作のお手伝いや、CM音楽を手掛けるようになります。

真部:相対性理論のブランドは自分にあると思っていたので、脱退後の活動も楽観視していたのですが、手のひらを返したように周囲の人が引いていく現実を目の当たりにしました(笑)。ほんと、ドラマの世界みたいでしたよ。「ああ、これは面白いことだけやろうなんて言っていられないな」と。面白いことをやるために、自分自身を作り直さなきゃいけないと思いましたね。でも、音楽を辞めて他の道へ進もうとは思わなかったです。音楽、特に商業音楽に特別なものを感じるようになっていましたし、やりたかったことは全てやりきりたい。あと、相対性理論の“テレ東”という曲を書いたとき、人生で一度だけ「曲が降ってくる」という体験をしたんですよね。何の気なしに鍵盤を弾いていたら、イントロから最後まで一気に書き上げてしまった。その体験が、自分の中ではとても大きくて、モチベーションの拠り所になっているんです。

素人集団にもかかわらず
楽しくて仕方なかったVampillia

真部脩一

現在はVampilliaのメンバーとしても精力的に活動する真部さん。初めて彼らと出会ったのは、相対性理論で対バンをしたときでした

真部:ライブを観たときに、図らずも感動してしまいました。圧倒的なキャッチーさがあって、小手先じゃない。そこで行われていること以上のことが起こっているというか……僕が相対性理論でやりたかったことのひとつが、「映画のトレーラーを作るように、すごくキャッチーなものを集めて純化して、透明度を高くしてからゴテゴテの飾り付けをする」ということだったんですけど、Vampilliaはそこをさらに発展させていると思ったんですよね。最初から最後までサビのような曲を展開して、さらに大サビを乗っける、というパフォーマンスに圧倒されてしまった。当時、自分は相対性理論で天狗になってたところがあったんですけど、完全にやられました。

そこからVampilliaとの交流が始まりました。「同世代のバンドの中で、純粋に感動したのは神聖かまってちゃんとVampilliaだけだった」という真部さんにとっては、「その『感動』の秘密を知りたい」一心でした。相対性理論を続けながら、Vampilliaのアレンジを手伝ったり、レコーディングスタジオに遊びに行ってディレクションをやったり。そうして交流を温めていくうちに、ステージでギターを弾くようにもなっていきました。

真部:当時は諸事情があって、僕は頭から紙袋をかぶって「とんがりコーン」という名前でVampilliaのステージに立っていました(笑)。そうやって少しずつ、Vampilliaのメンバーと絆が深まって。彼らの音楽を共有できるのが、楽しくて仕方なかったですね。当時は、メンバーになりたいって野心があったわけでもなく、ただ関わっているのが面白くてそこにいたんですけど、気づいたらメンバーになってました。やっぱりフリーランスになって一人で仕事を始めたときに、「心の支え」と言うと美しすぎますけど、バンドじゃなきゃできないこともあるって気がついたんですよね。Vampilliaのよさのひとつは、予想不可能なことを楽しんでいること。入ってみて分かったのは、Vampilliaってものすごい素人集団なんですよ。

半ば成り行きでバンドに加入しギターを弾き始め、相対性理論を結成してから曲作りを始めた真部さんにとって、「素人であること」こそ自分の強みと思っていたのに、Vampilliaに入るとその立ち位置をグラグラと揺さぶられたのだとか。

真部:みんな楽器は弾けないし、コードは知らない、楽譜も読めないっていう状況なんですよ。「それなのになんでこんないい曲が書けるの?」って思うんです。もちろん、初期メンバーだった吉川豊人さん(元BOREDOMS)、現メンバーの吉田達也さん、竜巻太郎さんのような人たちがいてこそ、というのはありますけど、それ以外のド素人メンバーがいいものを作っていることに衝撃を受けました。そんなVampilliaの中では、僕は「楽器が弾ける側」なんですよ。ちょっとしたアイデンティティークライシスに陥りますよね(笑)。でも、Vampilliaをやることで、以前よりナチュラルに音楽と関われるようになってきたかなと思っています。なのでこれからも、刺激的な出会いを求めつつ、その中で自分主導のプロジェクトを新しく始めたいと考えていますね。

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