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独特の気だるさと言語観が特徴的な劇団・チェルフィッチュ。その演出・劇作家であり、小説家としても活躍する岡田利規さんは生まれも育ちも横浜。「昔から東京に行くのは面倒だった。そうしたら横浜がどんどん充実してきた」と語るように、今も拠点をこの街に置いています。岡田さんが演劇人として出発した頃から縁の深い稽古場や劇場、そしてずっと気になっていたお店や開館を控えた劇場など、バラエティ豊かなスポットを巡ります。アートや舞台芸術が盛んな横浜の空気が、岡田さんの創作活動にどのような刺激を与えた続けてきたのでしょうか。ドラマが詰まった横浜の街を特集します!

(取材:松本香織 テキスト:田島太陽 撮影:小林宏彰)
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1973年生まれ。演劇作家、小説家、チェルフィッチュ主宰。97年に「チェルフィッチュ」を結成し、横浜を拠点に活動。05年『三月の5日間』で第49回岸田戯曲賞を受賞。07年デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』を発表、翌年第二回大江健三郎賞受賞。演劇のみならず、美術、文学など多方面から注目を集める。10年9月あいちトリエンナーレにて『わたしたちは無傷な別人である』を発表。11年初春には最新作『ゾウガメのソニックライフ』のツアーを控えている。

神奈川芸術劇場(KAAT)

最初に訪れたのは来年1月のオープンを予定している神奈川芸術劇場。演劇やミュージカルなどの企画・上演をする文化施設で、ホールのほか、稽古場としても使用できるスタジオを併設。「モノ・人・まち」の3つをテーマに「創造型劇場」を目指しており、舞台芸術の新しい発信地として期待されています。今回はまだオープン前で、準備中の施設内を見学させて頂きました。

30メートルの吹き抜けになった開放的なエントランスからエスカレーターを上がり、まずは大スタジオへ。ここはチェルフィッチュが来年2月、オープニングラインナップとして新作公演をする場所でもあります。既に何度か下見などで来られているという岡田さん。この場所の印象は? 「来る度に『黒とオレンジしかないなぁ』って思うんですよ(笑)。まぁそれは冗談で、純粋な「ブラックボックス」って感じがしますね。ここまで純粋に抽象的な空間ってあまりないので、上演できるのが楽しみですね」。ここで演じられる新作の脚本はまだ未完成。来年、どんな作品が観られるのか、今から楽しみです。

神奈川芸術劇場(KAAT)

最大約1300席のホール、チェルフィッチュも使用予定のアトリエ(稽古場)を見学し、エントランスに戻ると眞野純館長が待っていて下さいました。眞野さんは初めてチェルフィッチュの公演を見た時に「今までの演劇にはなかった違和感」を覚えたと言います。「彼らは従来の演劇ジャンルのどこからも、少しはみ出している感じがしたんです。過去のやり方とはコードが全く違う。演劇には集団感覚がつきまとうけれど、彼らはそれをいとも簡単に超えた先から、もう一度演劇に迫っているんです。フワフワした軟体動物みたいなイメージなんですよね」。興味深く眞野さんの話に耳を傾ける岡田さん。オープニング公演の話を聞いたときはどう思いましたか? 「最初は驚きましたよ。こんなに充実したところでやれるのは嬉しいけど、ここに慣れたらどんどん贅沢になっちゃいそうで怖いです(笑)」

最後に眞野さんに、神奈川芸術劇場の意義と、開場に際しての意気込みを伺いました。「横浜には多様な施設があって、それぞれに面白い取り組みをしています。その中で我々になにができるか。これは大きな挑戦なんです」。

住所:横浜市中区山下町281
電話:045-633-6500
HP:http://www.kaat.jp

神奈川芸術劇場(KAAT) 神奈川芸術劇場(KAAT)
神奈川芸術劇場(KAAT)

急な坂スタジオ

続いては日ノ出町駅から徒歩五分、野毛坂の急勾配にある急な坂スタジオにやって来ました。オープンした2006年からレジデント・アーティストとしてこのスタジオを拠点としている岡田さん。チェルフィッチュの作品はここで日々生まれているのです。他にも矢内原美邦さんが主宰するNibrollのほか、中野成樹+フランケンズ、珍しいキノコ舞踏団や山海塾など、演劇界のイマを代表する顔ぶれが稽古場に使用しており、横浜を拠点とする舞台関係者にとっては重要なスポットとして有名です。

もとは横浜市所有の結婚式場だったこともあり、随所にその名残がある不思議な雰囲気。海外公演に出ている時以外はだいたいここにいますね、と岡田さん。「こういう場所を横浜に持てたことはとても良かった。東京に行くのは多少時間もかかるけど、ここだったらすぐに来れるから」。07年頃から公演回数が増え、常に稽古をしていないといけない状況となったチェルフィッチュにとって、いつでも使える場所があったことは大きな要素となったよう。「それと、不思議と他人からはよく『横浜っぽいよね』って言われるんです。僕が『三月の5日間』という作品で描いた渋谷の街が、横浜に住んでいる人の距離感だそうなんです。自分では気づきませんでしたが、面白いですね」 。

急な坂スタジオ

他に思い出に残っているエピソードはありますか? 「実はね、『急な坂スタジオ』って名前をつけたのは僕なんですよ。思いついた瞬間に、自分で気に入って、英語で言うとsteep slope studioだっていうのも語呂もいいし、すごく自信作だったのに、提案してみたら反応が悪かった(笑)。でも採用してもらえて、今はすごく馴染んでいるからよかったですけど」。

館内を案内して頂いたディレクター・加藤弓奈さんはチェルフィッチュとは昔からのつきあい。岡田さんの印象を伺うと「すごく規則正しく稽古をされるんですよ。いつも11時に来て夕方には帰られます。珍しい劇団だと思いますよ」と教えて下さいました。

住所:横浜市西区老松町26-1
電話:045-250-5388
HP: http://kyunasaka.jp

急な坂スタジオ 急な坂スタジオ

野毛山動物園

次は急な坂スタジオから歩いてすぐの野毛山動物園へ。岡田さんがお子さんと一緒によく訪れる場所であり、急な坂スタジオとの共同企画で演劇上演がされることでも知られています。

取材時間の関係上、入口を覗いてすぐに引き返す予定でしたが「レッサーパンダはすぐそこだから中に入りましょう!」と岡田さんに導かれるままに園内へ。鳥や猿などの鳴き声が響く中、「可愛いなぁ」とつぶやきながら夢中で写真を撮っていました。「動物がエサを食べる『お食事タイム』というイベントが楽しいですよ」。岡田さんの素顔はけっこう無邪気!?

住所:横浜市西区老松町63-10
電話:045-231-1696
HP: http://www.nogeyama-zoo.org/

『ヨコハマ カルチャーガイド』-街から生まれるクリエイティブ- vol.2:チェルフィッチュ主宰 岡田利規と行く横浜
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