コラム

CINRA MAIL MAGAZINE連載コラム『全裸』2009年3月配信分(vol.216~220)

CINRA MAIL MAGAZINE連載コラム『全裸』2009年3月配信分(vol.216~220)

武田砂鉄
2009/05/13

vol.217 反・逆チョコ(2009/03/09)

全裸

段ボールを折り畳んでいる時に、ところで、と口を開き、唐突に「ひな祭りってのは、そもそも誰が誰を祝うんだっけ」と問うた。こういうことが最近よくあるのだ。「そもそも」が分からなくなる。大人が子供を祝うのか、男性が女性を祝うのか、そもそも祝う類いの行事ではなかったような気もしてくる。盛大に、今日はひな祭りだから、という号令で始まるパーティーの類いが呼び起こせないのである。しかし、こどもの日は男の子女の子両方なのにひな祭りはなんで女の子だけなんだ、と悔しく思った記憶が蘇る。ひな祭りってのは損をしていたイベントだったのか。損をしていたのかもしれないのであれば、あの頃の、ひな祭りとの距離感を正確に呼び起こしたい。

バレンタインデーとやらに、逆チョコという強引な仕掛けがあった。女子からチョコレートをもらうんじゃなく、今度は男子が女子にチョコを渡すらしい。バレンタインデー自体が企業戦略から発したことを考えれば、今回も同じくなのだが、「逆チョコ」という言い方がいかにもで、上手くできている。裏技いかがですかと、あちらこちらで布教する。チョコの行き交い方にルールなんていらないようである。いわゆる義理チョコが、OLの「これ、女子社員みんなからです」という併せ技によって縮小傾向にある中、逆チョコとやらが、勝手に作った風習に根付いたルールを勝手に破っていく。もう、男が渡せよと。「私、逆チョコってゆうか、もらったよ」、別の女子が横槍を入れてくる。「ってゆうか、っていうと?」。「女子から女子へのお世話チョコ」。

お世話チョコ。もはや戦後ではない、と同じような強度で、もはやバレンタインデーではない、こうなると。チョコがそこにあって、そのチョコをどう扱っても許されるとなれば、その無法に何とかデーの称号はあげられん。パパ、チョコレートいくつもらったー、の設問に、父さん、たっくさんもらったよー、と答えたいがためにコソコソ買った4割引の自腹チョコレートこそプライスレスなのでありまして、逆だ世話だと範囲を広げることで失われるパパの葛藤など、チリも積もれば日本経済の豊穣に繋がるかもしれず、そういうことをうやむやに無かった事にしちゃいけない。

何かとかこつけて行事にしてしまう。そこに要素を叩き込む。イベント化する。毎日がスペシャルと歌ったのは竹内まりやだったか。まりやはね、そんなつもりで歌ったんじゃないと思うのだ。具体的にスペシャルにしろということではなくて、いつだってスペシャルかもね、というくらいのものだ。イベントを大事にしない男はどうのこうのと、女子が酒場でがなる。まあ、待て。そもそも何がイベントなのか、そしてそのイベントはどういうことを、すなわち誰が誰に向かって何をすべきイベントなのか、そこをはっきりしてからにしようじゃないか。あれこれイベント化してルンルンされちゃ困る。そこんとこの話、しっかり詰めませんか。

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