特集 PR

竹藤佳世監督インタビュー

竹藤佳世監督インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
2008/06/27

演出家・山岸達児との出会い

―映画『半身反義』の主役である、山岸達児さんとの出会いはなんだったのですか?

「半身反義」より

竹藤:私は「東京ビジュアルアーツ」という映像の専門学校で教員をやっていたんですが、山岸さんがそこの顧問として講演にいらっしゃったんです。お話を伺っていて「この人面白いな~」と思いまして、自分の作品を見てもらい、そこからお付き合いが始まりました。2003年に山岸さんが脳梗塞で倒れてしまったんですが、その姿を見て、私自身、今は元気ですが、明日はわが身なんじゃないかと思ってとても怖くなったのを覚えてます。

―強い存在だった山岸さんの変貌にショックを受けたんですね。

竹藤:ええ。そうなんです。で、そんな折、若松孝二監督の『17歳の風景』という作品にシナリオとメイキングで参加しまして。若松監督は当時67歳で、ガン手術後の復帰作でした。それまで私は個人で映画を作っていて、劇場公開されるような映画は違う世界のものだと思っていました。でも頑張っている若松監督を見て、そんなことも言っていられないな、と思って。

―メイキングの撮影では、若松監督から、撮り方についていろいろと指導を受けたそうですね。

竹藤:はい。メイキングなのに、本番中に本篇のカメラそっちのけで走ってきて、私を怒ってました(笑)。若松組に参加した後、映画を作りたいという思いが高まるとともに、山岸さんのことを思い出しました。私はまだちゃんと、山岸さんと、そして自分の恐怖と向き合っていないのではないかと。そこで、断られるのを覚悟で、山岸さんについての映画を撮りたい旨をお伝えすると、意外にあっさり「いいよ」と応えてくれたんです。いくつかアイデアはありましたが、結末をこちらで決めて撮れるものでもないし、この映画は山岸さん(撮影される側)が私(撮影する側)を見守っているような、普通の映画とは逆の状況でしたから、演出、山岸達児なのかもしれません。

―前半に、さまざまなエピソードを盛り込みながら山岸達児さんに迫るドキュメンタリーパートが来ますね。そして、後半一気にフィクションへと加速していくアッと驚く構成なわけですが、後半部分は、前半を撮り終えたあとに構想されたのですか?

竹藤:いえ、具体的なシナリオは山岸さんの話を盛り込みながらつくりましたが、はじめからドキュメントパートとイメージパートを作ろうと決めてました。

―その発想はどのようにして生まれてきたのでしょうか?

「半身反義」より

竹藤:自分の今までやってきたことを、ひとつの作品に注ぎ込みたいという思いがあったんです。ドキュメントではなく、山岸さんを役者さんに演じてもらう考えもありましたが、それは違うかなと思ったんです。話が聞き取りにくくても、山岸さんが何かを伝えようとして一生懸命しゃべっている姿を伝えたいなと。私は見た人にとって、生きていく上で何かしらの力になる作品が作りたいんです。でもドキュメントだけでは、ひたすら追い詰めていくというか、救いがなくなる。そこで、フィクションパートを作ろうと思いました。

―なるほど、それはとてもユニークなアプローチですね。では、フィクションパートの内容については、どう発想されたんでしょうか。

竹藤:山岸さんはその頃、日常会話も反応が遅くなっていたのですが、映像に関することだけは物凄くレスポンスが早いんです。例えば、私の娘を撮影した映像を見せたら、すぐに「これは1秒何フレームで撮っているんだ」と返事をなさったりとか。山岸さんがシナリオや闘病記を書きたい、とおっしゃるので、さまざまな夢を、山岸さんのセルフイメージとして若い男性に演じてもらって叶えよう、と発想しました。その若い男性は、実際の山岸さんの若い頃よりも、大分スマートですけど。彼はいわば私と山岸さんの妄想から生まれた子どものようなものですね。

Page 1
次へ

作品情報

『半身反義』

2008年7月5日(土)より、池袋シネマ・ロサにてレイトショー
プロデューサー・監督・脚本・編集:竹藤佳世
キャスト:
山岸達児
西島英男
西宮ゆき
加島凱ほか

料金:特別鑑賞券1,200円(シネマロサ・UPLINK X 窓口にて発売中)
当日 一般1,500円 学生1,300円 小・中・シニア1,000円
『竹藤佳世 映像個展』の半券にて割引
現代美術家・大浦信行氏によるポスター他特典あり
監督とゲストによるトーク連日開催
2007年/日本/カラー/90分/
配給:パウダールーム

イベント情報

竹藤佳世 映像個展『Flower of Life』

会場:渋谷UPLINK Xにてイブニングショー公開
2008年6月28日(土)~7月11日(金)
上映作品:『骨肉思考』『彼方此方』
2008年7月12日(土)~7月25日(金)
上映作品:『殻家 KARAYA』『カラコワシ』連日16:30~
料金:特別鑑賞券1,000円発売中
当日 一般1,300円 学生1,100円 シニア1,000円
6月28日(土)に映像作家の奥山順市を迎えたトークショーを開催
ゲスト:奥山順市、竹藤佳世
※トーク&奥山順市作品の上映あり

プロフィール

竹藤佳世(たけふじ かよ)

東京都出身、東京都立大学人文学部卒。映像作家集団「パウダールーム」代表として、上映会、ワークショップ等を企画・開催。『骨肉思考』でイメージフォーラムフェスティバル98大賞受賞。広告代理店勤務・専門学校教員を経て、若松孝二監督作品(『17歳の風景』『実録・連合赤軍』)、河瀬直美監督作品(『垂乳女Tarachime』『殯の森』)などに参加。フィクション・ドキュメンタリーの境界を越えた独特のスタイルで常に意欲的な作品づくりに挑んでいる。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

PUNPEE“タイムマシーンにのって”

あのPUNPEEがまたやった!!! 昨年発売のアルバム『MODERN TIMES』から初のMVとなる“タイムマシーンにのって”が公開。1度見ただけでも存分に楽しめる作品だけれど、この情報量の多さ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思わせる時計台のロゴがSEIKOならぬSAYHOになっていたり、車体に『AKIRA』の成田山ステッカーが貼られていたり……ピザなど頼んで細部まで何時間も見ていたい。(井戸沼)

  1. 小出祐介が問題提起、日本語ポップスにおける「歌詞の曖昧さ」 1

    小出祐介が問題提起、日本語ポップスにおける「歌詞の曖昧さ」

  2. 『紅白歌合戦』会見にあいみょん、DAOKO、YOSHIKI、キンプリ、刀剣男子ら 2

    『紅白歌合戦』会見にあいみょん、DAOKO、YOSHIKI、キンプリ、刀剣男子ら

  3. BiSHが6人全員で振り返る、この夏出演した17本もの音楽フェス 3

    BiSHが6人全員で振り返る、この夏出演した17本もの音楽フェス

  4. Hi-STANDARD元スタッフによる『SOUNDS LIKE SHIT』レビュー 4

    Hi-STANDARD元スタッフによる『SOUNDS LIKE SHIT』レビュー

  5. FINAL SPANK HAPPYが示す「新男女関係」 結成半年を振り返る 5

    FINAL SPANK HAPPYが示す「新男女関係」 結成半年を振り返る

  6. 星野源『POP VIRUS』特典映像は全11曲スタジオライブ&ニセ明の創作密着 6

    星野源『POP VIRUS』特典映像は全11曲スタジオライブ&ニセ明の創作密着

  7. 遠藤ミチロウが膵臓がんを公表、現在は自宅療養中 7

    遠藤ミチロウが膵臓がんを公表、現在は自宅療養中

  8. RADWIMPS新ALにTaka、あいみょんら 小松菜奈&神尾楓珠出演の新曲PV公開 8

    RADWIMPS新ALにTaka、あいみょんら 小松菜奈&神尾楓珠出演の新曲PV公開

  9. 『情熱大陸』で諫山創に密着 『進撃の巨人』ラストネームに挑む様子を映す 9

    『情熱大陸』で諫山創に密着 『進撃の巨人』ラストネームに挑む様子を映す

  10. 土屋太鳳×北村匠海の「TAOTAK」が『春待つ僕ら』主題歌担当、PV公開 10

    土屋太鳳×北村匠海の「TAOTAK」が『春待つ僕ら』主題歌担当、PV公開