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竹藤佳世監督インタビュー

竹藤佳世監督インタビュー

インタビュー・テキスト
小林宏彰
2008/06/27

閉じることを放棄して、暴走しはじめてドラマになる

―なるほど。竹藤さんの作品は、『半身反義』や『カラコワシ』のようにドキュメントだと思っていたものがフィクションになっていったりと、話が脱線していったり、自分の姿勢を反省しながら作るのが魅力のひとつですね。完結した、閉じた物語を提示するのではないんです。

「半身反義」より

竹藤:私の考えることなんてたかが知れていて、現実社会にあることのほうがよっぽど強いんです。自分はまだ分かっていない、知らないということを素直に認めることは忘れてはいけないと思います。映画には終わりがありますが、人生は映画が終わっても続くわけだし。それに、本人が必死に撮ったものが、あとから見ると笑えるものだったりと、自分の考えたもの以上に広がるのが映画の面白いところです。ドラマとは、困難の克服だ、と言った人がいるんですけれど、私の映画は、困難の前で閉じることを放棄して、暴走しはじめるところからドラマになるというか、広がっていく気がします。

―竹藤監督は、初期の『骨肉思考』や『殻家』といった作品もそうですが、「生」と「死」をテーマにした作品が多いですね。

竹藤:私、実は人並み外れて丈夫なんです。でも、妊娠した時にゆっくりとしか歩けなくなったりして、弱い立場になってみると、いままでそういう人に全く気を使えていなかった自分が恥ずかしくなって。そうした、自分というものの危機に向き合っている時に、たまたま映像をやり始めたんです。そこから、到底考えの及ばないものと向き合う時、カメラを通してそれに迫ってみるというのが、私の思考方法の一つになったような気がします。山岸さんをテーマに映画を撮るという時にも、下手に私が考えるより、カメラで迫る方が絶対観客に伝わると考えました。

―また、竹藤さんの作品は女性独特の感覚で撮られているな、と感じるシーンもあります。「女性」と表現すると語弊があるかもしれませんが、例えば『殻家』で、竹藤さんが娘さんを転倒させ、持っていた卵を割ってしまうシーンがありますね。そこで「この出来事をずっと覚えていてね」と語りかける場面には、一種の恐ろしさを覚えました。母の持つ、娘に対する強い思いというか。

竹藤:普段、私自身は女性的だと言われることは少ないんですけど(笑)。自分が客としての立場から考えると、作り手がオリジナルなものを作り上げようと戦っている作品を見たいじゃないですか。上手な監督さんはたくさんいらっしゃるし、お金のかかってる映画もたくさんあるし、大して経験もお金もない私は、ゲリラみたいなものなんです。ゲリラはゲリラなりの戦い方で、どれだけ人の心に残るものが作れるか。

―ゲリラという姿勢を、もう少しご説明いただけますでしょうか。

竹藤:つまり、何億円もかけた映画でもできない、自分にしかできない作品を見せたいんです。そうすると、結果的になかなかメジャーな映画やテレビのテーマにならないものができあがります。老人ホームにいる人を題材にするとして、何人もクルーがいて大掛かりにすると、周りの人も警戒するし、迷惑もかかる。被写体の山岸さんと手をにぎったりする表現には、私のようなアプローチの方が有効なこともあるんです。

本人が必死になるほど喜劇になるんだな、と

―本人が必死になるほど喜劇になるんだな、と

竹藤佳世監督インタビュー

竹藤:学生時代は、自分のイメージと違うものしか撮れないので、カメラが嫌いだったんです。ただ、仕事で必要に迫られて、人に教わって写真を撮ってみたら、誉められたりして、面白くなったんです。その頃、広告代理店の営業をしながら、雑誌『広告批評』が運営している学校に通っていたのですが、当時、電通にいらっしゃった岡康道さん(現・TUGBOAT)にCMのコンテをお見せしたら、「題材が広告向きじゃない」と。憧れの人からダメだしされ、そもそも職業選択を間違えたのか、とガーンときて、広告クリエイターへの夢は消えました。そして、向いてる向いてないじゃなくて、とにかく自分の納得できるものを作りたいなと考えたんです。

―今おっしゃった自分の納得できるもの、というテーマは、はじめての作品『骨肉思考』に盛り込まれているのですか?

竹藤:そうですね。ただ作ってから、人に見せるようなものではないと思ってしばらく封印していたんです。一つだけコンテストに出したら、たまたまグランプリを獲ったんですが、そこでいろんな人に見てもらい、映画を通してたくさんの人とつながっていったんです。その中から、私が生きていく上でぶつかる問題を作品にすることで、他の人の人生にも何かプラスになることがあるんじゃないか、と思い始めました。『骨肉思考』には、「妊婦、体張ってます!」という同級生がつけてくれたサブタイトルが秘かにあるんです。妊婦から産婦のころを追ったものですから、生まれたばかりの子どもの世話もあり、卒業制作課題の締め切りはかなり厳しかったんですよ。それでいっぱいいっぱいになって暴走して、生まれたばかりの娘のおしめを替えながら「あなたの自我はどこにありますか?」と問いかけるシーンを撮ってしまったり。

―あのシーンは忘れられないですね。笑ってしまいました。/p>

竹藤:そうなんですよ。本人が必死になればなるほど喜劇になるんだな、と。そこが映画を撮ってて面白いところです。作品にすると、観客の視線で、一歩ひいて物事をみることができるんです。

映画を作れば作るほどさびしくなる

―『カラコワシ』は、以前撮った『殻家』という作品が気に入らないので、もう一度撮り直しをする、という内容ですね。

竹藤:映画を作る人には、作る過程をお祭り気分で楽しむ人と、お客として見て残るものかどうかを考える人と、2種類いるんじゃないかと思います。私はお客の期間が長かったからか、頑張って作ったけど、面白いと思えないものならば、もう一度作り直すべきだと。自分の限界を知るのはきついことなんですけど、だめだと分かったならばもう一回悪あがきしようとします。

―その『カラコワシ』に、「映画を作れば作るほどさびしくなる」というセリフがありましたが、今でも心境は変わりませんか?

竹藤:そうですね。ある程度自分を追い込まないと映画は作れませんし。若松監督を見ていて、キャリアがあって、慕ってくれる人がたくさんいても、監督ってすごく孤独な仕事なんだなと思います。河瀬さんのような国内外で評価されている人でも、映画の企画のために一人でパリに飛んだり、あちこち企画書持っていったり、汗かいて作っていますし。それでも苦労して映画を作る理由は、作品を通して人とコミュニケートしたいという思いがあるんじゃないでしょうか。

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作品情報

『半身反義』

2008年7月5日(土)より、池袋シネマ・ロサにてレイトショー
プロデューサー・監督・脚本・編集:竹藤佳世
キャスト:
山岸達児
西島英男
西宮ゆき
加島凱ほか

料金:特別鑑賞券1,200円(シネマロサ・UPLINK X 窓口にて発売中)
当日 一般1,500円 学生1,300円 小・中・シニア1,000円
『竹藤佳世 映像個展』の半券にて割引
現代美術家・大浦信行氏によるポスター他特典あり
監督とゲストによるトーク連日開催
2007年/日本/カラー/90分/
配給:パウダールーム

イベント情報

竹藤佳世 映像個展『Flower of Life』

会場:渋谷UPLINK Xにてイブニングショー公開
2008年6月28日(土)~7月11日(金)
上映作品:『骨肉思考』『彼方此方』
2008年7月12日(土)~7月25日(金)
上映作品:『殻家 KARAYA』『カラコワシ』連日16:30~
料金:特別鑑賞券1,000円発売中
当日 一般1,300円 学生1,100円 シニア1,000円
6月28日(土)に映像作家の奥山順市を迎えたトークショーを開催
ゲスト:奥山順市、竹藤佳世
※トーク&奥山順市作品の上映あり

プロフィール

竹藤佳世(たけふじ かよ)

東京都出身、東京都立大学人文学部卒。映像作家集団「パウダールーム」代表として、上映会、ワークショップ等を企画・開催。『骨肉思考』でイメージフォーラムフェスティバル98大賞受賞。広告代理店勤務・専門学校教員を経て、若松孝二監督作品(『17歳の風景』『実録・連合赤軍』)、河瀬直美監督作品(『垂乳女Tarachime』『殯の森』)などに参加。フィクション・ドキュメンタリーの境界を越えた独特のスタイルで常に意欲的な作品づくりに挑んでいる。

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